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都市工学科都市計画コース進学にあたって、所信表明。

“The study of geography is about more than just memorizing places on a map. It’s about understanding the complexity of our world, appreciating the diversity of cultures that exists across continents. And in the end, it’s about using all that knowledge to help bridge divides and bring people together.”  — Barack Obama

 この言葉は、僕が参加した第16回国際地理オリンピックの閉会式にて、大会運営委員のある先生が紹介されたものです。

地理学 — 私が後期課程で学ぶ都市工学を含む — は、何よりも人に基づいているべきである。

遠い外国のデータを記憶し、資料から因果関係を導き出すことを求める高校の地理教育の姿勢を所与のものとして疑問を抱いてこなかった自分にとって、そして予想を超える国際大会のレベルの高さを前に何が足りなかったのか自問していたその瞬間において、この言葉はずっしりと、それでいてごく自然に、自分の中に響いていきました。

 帰国後、この言葉に刺激され、近所を何度もフィールドワークしました。今までの自分には見えていなかったもの — ルーバー付きの信号機、交流スペースとしてのポテンシャルを活かせていない運河空間 — に出会いました。ある日の夕方、荒川に架かる橋の中腹で立ち止まると、無数のマンションに無数の光が灯り、川に沿った高速道路を無数の車が走っていました。その光の1つ1つに人の生活と物語があること、そしてそこから見える建物も道路も橋も全て人間が作ったという事実に、言いようのない感動を覚えました。


 僕は、自分の存在は他人の幸福に立脚していると考えています。自分が周りの人より容量が良く勉強ができたことは、それ自体では足が速いことや話が面白いことと大きく変わりません。それにも関わらず勉強が他の資質に比べて高く評価されているのは、学んだことは他人を幸福にするために使えるからです。大学という場所で学ぶからには、学んだことを社会に還元し、できるだけ多くの人の生活にポジティブで大きな影響を与えるべきである、そして与えたいと考えています。


 そして都市工学という学問は、こうした理想を最も実現できるものです。都市はそこに暮らす全ての人々の生活の根本を支えています。政治、法、経済、医学、テクノロジーなどに比べその存在は意識されにくいですが、意識にさえ上らない深いレベルで、それらの分野以上の影響力をもって人々の生活を規定しています。ある授業で、「陸前高田では駅を沿岸部に作ったことで市街地が沿岸に移動し、他の地域に比べ津波被害が甚大になった」という話を聞きましたが、都市を設計することは時には人の生死を左右するほど責任を伴うものです。だからこそ、都市を学び、その知識を正しく活かすことができれば、数え切れないほどの人の人生を豊かにできるはずです。


 都市を設計することのもう1つの特徴は、半世紀以上先の社会を明確に想像する必要があることです。都市計画が実現されるには30-40年という年月が必要で、それらはその後数十年にわたって残り続けます。とても困難な仕事だからこそ自分の全力をぶつけて挑戦したい。そして数世代にわたって引き継がれる都市を作り、数多くの人を幸せにしたい。以上が工学部都市工学科都市計画コースを志望するにあたっての抱負です。

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