待ち時間

待って、待って、車両に揺られて、そしてまた待って・・・。この2日間、ドクターに話を聞いていたのは合わせて二時間あまり。あとはただひたすら時間が過ぎるのを待つだけだった。これが私の仕事だ。
池袋のホテルで一日目のインタビューが終了したのは、予定よりも早い19時。そのまま新幹線で山形まで行く。もしや一本前の「つばさ」に乗れるかもと期待して、大宮までとんで行ったのだが・・・、結局一時間待つはめに。
取材ストーリーはどのドクターもみんな同じだから、後はいかに本人の言葉で聞き出せるか、だ。今回の先生は、日本肝臓学会の理事長とか、山形県のお偉い先生だったらしく、製薬メーカーの営業さんは特にピリピリしていた。厳しい先生だからあまり砕けた話し方はするなとか、言葉遣いに気をつけろとか、あらかじめの注意事項がいろいろ出てくる。ハイハイと承ったけれど、はじまったらどうという事はない、「患者目線、読者目線でうかがいます」と言う私の挨拶にニコニコと表情を崩し、次々オフレコ話題も飛び出した。偉い先生ほど、私のようなおばちゃんの言葉には喜んで耳を傾けてくれるのだ。
山形医大でも11時過ぎには、撮影も含めて何もかも無事に終了、充実した時間になった。同行の人たちとは早々に別れて、私は駅近くの城跡公園を散策した。日本中、どこに行っても必ず城や城跡があるし、お堀に桜は欠かせない。ただ、期待していた桜の姿は東京と変わらず、すでに葉ざくら。ときおり風にハラハラはなびらが舞い散り、なんとも言えずに美しかった。なにより観光客がいない。のんびり歩き回って、写真も撮って、たっぷり時間を過ごしたつもりだったけれど、それでも新幹線の時間までだいぶ余裕がある。懐かしい山形のお菓子たち「のし梅」「くるみゆべし」「カルシウムたっぷりミルクケーキ」などを買い込み、駅弁「米沢牛肉ど真ん中」とビールも忘れず、待合室で待ち続けたのである。

この記事が参加している募集

ライターの仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?