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18年以上64時代から直接伝えられてきた「スマブラ拳」の素晴らしさ

2000年ごろ、当時小学生だった私は父が仕事で使っていたwin2000を借りてゲームの攻略や裏技を調べていた。それをプリントアウトしてファイルに収めて学校へ持っていき、みんなに広めるのが楽しみだった。

当時はパソコンを一般家庭の利用することも増えたがまだ必須と呼べるものでもなく、ネットの存在は知っているというレベルだった。動画共有サイトどころかプレイ画面があるサイトもほぼないのでデマや間違いがあっても証拠がなかった。

なのでみんなに情報を広める上で信用にならない情報は見切りをつけるか自分で検証するしかなかった。(バレにくくするためか「隠しキャラを出すために何千回とクリアする」みたいな苦行を強いるようなデマが当時よく横行していたと思う)

スマブラについても調べていたが良いものでも技のダメージやコンボがあるといったもので移動能力などは主観的な意見が多く役には立つ情報は他のゲームと比べると少なかった。しかし公式サイトである「スマブラ拳!!」だけは違っていた。

ゲームの公式サイトは販促が目的だから攻略目的に見に来る人はまずいない。しかし64スマブラの公式サイトはほぼ攻略サイトである。特に素晴らしいのは3点。たくさんのデータ、戦術が掲載されいること。公式ゆえに絶対の信頼性があること。そして開発者の立場として楽しむ助言が書かれていることだ。

まずスマブラ拳!!は当時の攻略サイトとしては群を抜いて細かい仕様からあまり目を向けられない戦術まで掲載されていた。多様な復帰阻止とその対応や見た目に地味な空中攻撃の強力さ、アイテム奪い合いの駆け引きなどミクロさ、マクロさも含めた攻略記事を私は初めて見た。

さらに技発生のフレーム数についてや移動速度について数値を含めた移動係数まで載せたサイトはまずなかった。そして公式の情報なので信用できるし、自信をもって周囲に共有できた。(これを学校の友人に見せたときの反応は「なんだこれ…」という反応だったが…)

公式サイトのやることかよ…と今でも正直思う。
このページへのリンクは小さく見つけにくくされているが

そして必ず議論の的になるガン逃げなどの戦法について開発者の立場から触れている。

こういう「黒いヤツ」はスポーツ的なもの、
もっと言えば「あそび場」には必ずある要素。
それは個々のあそび場でバランスを取ろう。
とにかく勝敗などよりも、楽しくあそべるのが一番。
なので、
 それに気がつきみんなでボコボコにするのも、
 非難の声をあびせてみるのも、
 やめろと注意してみるのも、
 ちょっと同じことをしてみるのも、
それもルールといさぎよくするのも、すべて自由。

引用元:スマブラ拳!! 其の六十一~六十五

これには考えさせられた。それ以来、私はこの手の策をとって試合が楽しめない流れになったら非難はせずに逃げをする相手にアイテムや飛び道具を投げつけたり、逃げを取る相手と同じ場所に逃げることでバランスをとってみたりしてた。これで逃げを認めつつ険悪なムードを回避できた。

ほかにもオートハンデの推奨、アドリブを重視したゲームなど単に強くなる攻略情報以外にもスマブラをより楽しめるように書かれたものも多く、食い入るように記事を見ていた。

このスマブラ拳!!がディレクターである桜井政博氏が一人で作られたことをほぼ日刊イトイ新聞でインタビューされた時このように語っている。

結局は、ゲームをプレイするのも、攻略本を読み込むのも、ホームページまで覗いてコアな情報を入手しようとするのも受け手側であるユーザーのやる気次第なんですよね。やる気のある人にはそれなりのものをお返しできると
思います。
遊ぼう、遊び尽くしてやろうという気合いで臨まれることがゲームの作り手にとって何よりの喜びなのかもしれません。

引用元:ほぼ日刊イトイ新聞 樹の上の秘密基地

あれから18年

SNSやストリーミング配信などによって開発者の自身が直接情報発信することも多くなった。E3やGDCなどのイベントに対する関心も国内で高まっている。開発者の声が直接届く機会が増えてゲーム好きにとって大変ありがたい時代になったものだと思う。

そして2018年。E3でスマッシュブラザーズ SPECIALの紹介後自身も加わって実際に対戦する桜井氏は「今ガノンドロフが光ったような気がしましたが?気のせいかな?」とおどけてみせた。
(スマスペでは暫定一位のキャラが光ることがあるのでわざと他の人が狙われるように仕向けている)

そんな場面を見て笑いつつ、開発者とユーザーがともにゲームを楽しめるよう今後とも様々な情報発信があれば嬉しい限りだとふと思っていた。

ちなみにその対戦で桜井氏(リンク)は1位になった。
「それはちょっとズルくないですか?」と言われてしまう。オイオイ。

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