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その答えは、聞かなかった。想像すればいいと思ったからだ。

外に出ることで見られる景色があるのは確かだ。

私はかなりの出不精で、天気の良い土日を1日中家の中にいて過ごしたとしても全然苦じゃない。むしろ「やったー!」と思えるぐらいで、家の中で撮り溜めた録画のドラマを見たり、いつか見るだろうと思って録画しておいた金曜ロードショーのハリーポッターを見たりするだけでも全然いい。最初はポテトチップスとコーヒー(インスタント)を用意してバリバリ食べながら、ぼーっと映像をおいかける。そして、飽きてきたら一時停止して横になる。カーテンから差し込む光を下から眺めながらお昼寝をする。

気がつくと3時間後。お腹が空いたからと起き上がりテレビを見ると、ハリーがちょうど瞬きをして、唇を尖らせながら何かを言っているシーンで止まっていた。ハリーポッターを見ていたことも、ハリーポッターを一時停止にしていたことも忘れていた。食べかけのポテトチップスと、飲みかけのコーヒー。それが土日のすべてだったとしても、私はなんの後ろめたさも罪悪感も後悔もない。


ただ、先週の土曜日は、金曜日の夜に思い立って写真展に行くことにした。夜、Instagramを見ていたら、たまたま誰かの写真展の広告が流れてきて「あ、行っちゃおう」と思ったのだ。写真展の場所が近かったことと、広告に載っていた写真の眩しさが痛くて、これは見てみたいと思い立った。

そういえば、私はよくこういうことがある。たまたま流れてきた広告に触発されてイベントや展示会に行ってしまうこと。今のところ、外れはない。毎回、行ってよかったと思うのだ。

そして行ってきた写真展は、ルーマニアにルーツを持つアーティストさんが、ルーマニアで写真撮影をしたものをまとめたフォトブックの発売刊行記念だった。

ギャラリーに入ってすぐ、彼女がどうしてルーマニアに行ったのか、なぜ写真を撮影したのか、そこで何を感じたのか、写真展のステートメントが展示されていた。

小さな写真たちが、壁に整然と並んでいた。大きく3グループの展示のされ方をしていて、意味があるのかな? と思っていたら、ギャラリーの方が声をかけてくれて、教えてもらった。

入ってすぐのグループは冬、そして春、夏、と続く。冬、春、夏、その3つのグループだった。

どうして冬からスタートしているのか、なぜ秋はないのか。その答えは、聞かなかった。想像すればいいと思ったからだ。

静かな、だけど窓から入る光に満ちた空間のなかに広がる、ルーマニアで見た景色の数々。伝統、風習、生きる人、動物、繋がれる手、老婆、ご飯、目、毛並み、水たまり、海、子ども。

うん、やっぱり来てよかった。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。