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いつかきっと、枯れないようになる日がくると思います

花が咲いた。去年の誕生日、お友達からもらったアンスリウムのアンちゃんが新しい花を咲かせた。くれたのは大学生のときのバイト先の主婦さんで、社会人になってからも細く細く繋がり続けていて、年に1回ほど一緒にご飯を食べに行く仲なのだ。そんな主婦さんと去年の誕生日あたりに食事に行ったときに、「お誕生日だったから」と植木鉢のアンスリウムをくれた。「植木鉢!」、私は思わずそう言った。花束とか一輪挿しのチューリップなどをもらったことはあったけれど、まさか自分で育てていく植木鉢ごともらうのはそれが初めてだった。

実はアンスリウムをもらう直前、私は植物ショップの店員さんから「それほどお世話しなくても枯れることはほとんどないですよ」と言われて買ったガジュマルを枯らしていた。水のやりすぎか、やらなさすぎか。正直私にはよくわからない。気がつけば生えている葉のほとんどが黄色になって、またあるときに見れば、茶色に様変わりしていた。「なんでや……」枯れてしまったガジュマルを前に、私は呆然とした。店員さんの言っていた「それほどお世話しなくても」のそれほどってどの程度だったんだろうか。今でもよくわからない。ごめんなさい、ガジュマル。

そんなだったから、植木鉢ごとアンスリウムをもらうのは少しだけ気が引けた。私にはたぶん、植物を育てる才能がない。きっと枯らしてしまう。そう思って主婦さんに「実は私、ちょっと前に植物を枯らしちゃって」と話した。だから、いらないですというわけではないのだけど、自分の家に植物を迎えることがただただ不安だった。すると、主婦さんは言った。

「いいんです、いいんです、枯らしちゃって。だって、いつか枯れるものですから」

私もたくさん枯らしちゃった経験があります、と彼女は言った。だけど、それでも彼女にご自宅にはたくさんの植物がある。

「いつかきっと、枯れないようになる日がくると思います」

ね、だから。そう言って渡されたアンスリウム。もらってから冬を迎えるころに、もともと咲いていた花は枯れてしまった。だけれど、春よりも少し早いこの時期に新しい蕾をつけて、花が咲いた。

枯れないようになる日、が私にもやってきた瞬間だった。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。