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いろんな想像が巡る。可愛いペンギン

駅のホームから改札階へ階段を下りながら、ふと前を見るとペンギンがいた。ペンギンが、つぶらな瞳でこちらを見ていた。目が階段を降り終わるまで、目が合い続けていた。きっと水族館でもこんなに見てもらえないだろうに。まるっこい黒い頭と、ぺったんこの灰色の身体の毛。お腹はきれいなまんまるで白い毛。愛らしいくちばしは黄色。目はビーズ。

そう、ストラップだ。前の人のリュックについたストラップが、ペンギンだったのだ。

印象に残っていたのは、リュックサックの後ろポケットにペンギンがちゃんと納まっていたから。手のひらサイズのペンギンのぬいぐるみストラップが、まるでそこが彼の住処だと言わんばかりのフィット感で、すっぽりとそこに納まっていた。めっちゃ可愛かった。

そしてもう1つ理由がある。そのペンギンとリュックサックの持ち主は、けっこうガタイがよくて、スキンヘッドの強面系お兄さんだった。階段を下りたあと、ちょっとだけ早歩きして追い越したあと、ちらりと後ろを振り返って確認した。正直、「えーー!? まじで!?」と言いそうになっていた。公共の面前、堪えただけでも偉すぎる。


想像してしまったのだ。どうしてそんなお兄さんのリュックサックにペンギンがいるのか。

もしかしたら、彼女か、奥さんか、はたまた娘さんからもらった? プレゼント? あるいは一緒に水族館へ行った思い出として買ったとか? あ、最近ならガチャガチャで引き当てたとか? いや、もらう・プレゼントされる説は思い込みかもしれない。

この人が、自分の意思でペンギンを買った説だって否めない。だって、ポケットにちょこんと入れるくらいだもの。恐らく、ポケットに納めているのは彼だと思う。なぜなら、チャックについたペンギンのキーチェーンは、開けるとポケットから出てしまうからだ。チャックを開けないなんてことはないからきっと、開けるたびに彼がポケットの定位置に入れてあげているんだと思う。いろんな想像が巡る。可愛いペンギン。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。