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馬を語り、馬に学ぶ【読書感想文】

最近気になる、矢作芳人調教師。

海外での活躍もですが、個人的には矢作厩舎が逃げ馬でよく穴馬券を演出しているように思い、気になっています。

ということで、矢作調教師の著書を2冊、読みました。

「開成調教師」は開業間もないころに書かれた本で、これまでの生い立ちや調教師としての考え方が書かれていました。

「馬を語り、馬に学ぶ」は最近出版された本で、コントレイルやラヴズオンリーユーやリスグラシューなど、これまで管理された馬のエピソードが中心の内容でした。

この2冊を読んだ感想を書きます。

人間も馬も紆余曲折いろいろ経験してこそ強くなる

「開成調教師」という本のタイトルや、目覚しい活躍を見て、矢作調教師はバリバリのエリートなのだと、本を読む前は思っていました。

でも、本を読んでみて、とても紆余曲折いろいろ経験されている方なんだということを知りました。

調教師としては本流ではない道を歩んでいたこともあり、なかなか調教師試験に合格出来ず、14回目でやっと合格されたそうです。しかし、その紆余曲折が今の矢作厩舎の活躍に繋がっていることをとても感じました。


矢作厩舎では、レースをたくさん使うことを意識されているそうです。

矢作厩舎は、厩舎を中小企業と捉えているそうです。中小企業と考えたときに、会社として、いかに上手く利益を上げるかを追求しています。

レースをたくさん使うのは、利益に繋がるのは勿論のこと、厩務員のモチベーションアップや、馬の価値向上など、様々な副産物があるから、だそうです。

この頃、調教技術の向上や、レースの使い分けから、連戦を繰り返さず大事に馬を使う、というのが多いように思います。しかし、確かに矢作厩舎の馬は海外出走含め、連戦が多い印象があったので、本を読んでとてもスッキリしました。

ここには、開成高校を卒業後に留学していた、オーストラリアの競馬で学んだことが活かされており、疲労さえ取れれば、馬は連戦しても大丈夫、というのが考え方だそうです。

なので、間隔をつめて使うことには躊躇ないが、馬のコンディションやレース選びにはとても注意を払っているそうです。

このあたり、今の主流の考え方とずれているので、矢作厩舎の馬が穴をあける要因の1つのように思いました。


このような使われ方で強くなっていった、矢作厩舎の代表馬と言えばリスグラシュー、というように思います。

まさに色々な競馬を経験しながら強くなっていった、矢作調教師の考えを体現した馬のように感じます。

この馬が矢作調教師の考え方の原点を作った、オーストラリアの大レース、コックスプレートを制したというのも、胸熱です。


人間も馬も苦労を積み重ね、逆境の中で強くなっていくんだなと、本を読んで思いました。

何事も二律背反、バランス調整が大切

矢作調教師の大切にしているものとして、「セオリー」と「バランス」という言葉が、本を読んでいるとたくさん出てきます。

レースをたくさん使う矢作調教師の「セオリー」通りの代表馬がリスグラシューなら、馬のコンディションとの絶妙な「バランス」を感じるのが、コントレイルとラヴズオンリーユーの2頭です。

コントレイルもラヴズオンリーユーも、どちらも順調にレースを使えた馬ではなかったそうです。

でも、良い意味で、馬の成長に裏切られながら、あそこまで一流の馬に成長していったということが、本を読んでわかりました。

技術の進歩で、馬の特徴はある程度予測出来るようになってきているそうですが、やっぱり馬の成長までは、いちばん馬に近しい関係者の方でもわからないそうです。

だから競馬は面白い。


そんな馬のコンディションに注視しながら、慎重なレース選びをした結果が、コントレイルとラヴズオンリーユーのあの成績に繋がっているということが、本を読んで良くわかりました。


また、ラヴズオンリーユーのブリーダーズカップへの挑戦など、完全に夢を追いかけた挑戦のように思っていましたが、そこにちゃんと利益を得るためのしたたかな勝算があったことに驚きました。

「開成調教師」の本の2013年に追記された部分で、ブリーダーズカップについて、触れられていました。

西海岸で行われるブリーダーズカップなら、日本からは近く、ヨーロッパからは遠いので、チャンスが大きいのではないかと。


そんな昔から、狙いを定めて、プランを実行した結果が、あのラヴズオンリーユーとマシュマロレーヌのブリーダーズカップだったということを知り、痺れました。

本の中では、ヨーロッパのレースへの思いも、たくさん書かれていました。

今後も、本の中に書かれていることが、どんどん実現していくのだと思うと、とても楽しみです。

まとめ

「よく稼ぎ、よく遊べ」が矢作厩舎のスローガンだそうです。

矢作調教師本人もよく遊ばれる方で、競輪の大好きなギャンブラーだそうです。なので、著書の内容もギャンブラー的な目線や発想がたくさんあり、勝手に親近感も湧いて、大変面白かったです。

本の中で矢作調教師本人が、穴の矢作厩舎の馬は狙い、と仰っていました。常に何かしらの意図や考えを持って仕事に挑まれている姿勢、その言葉に納得です。


また、もう1つ面白かったのは、以前の記事で取り上げた、妙味度の数字と、矢作調教師が著書の中で書かれている考え方が、ちゃんとリンクしていることでした。

手軽にそれらしい有益な情報を得られるマクロな数字ですが、その裏には沢山の背景となるストーリがあることを本を読んで痛感しました。

競馬予想でみる様々な数字の裏には、いろいろな環境要因や人間模様があるのだなということを改めて感じることができ、とても面白かったです。

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