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ひとつきひとふし(九月)

「節」は旋律やら曲をさし、また区切りとの意味もある。
曲の出来不出来はいちいち問わず、旧知の方々への生存確認として、気分に任せて雑多な曲想、思いつきを音にしている。

9月の「ひとふし」

今回の「ひとつきひとふし」は、フルート、クラリネット、バイオリン、トロンボーンという奇妙な楽器編成を想定したというもの。
これには以下のいきさつがある。

大学の同期生で人形劇団のサークル活動をしている者がいた。
この人に頼まれて人形劇用の音楽を作曲した。
1つ目は「マッチ売りの少女」を題材にしたもの。
私の妙な曲を演奏してくれるという、学生オケなどから、フルート、クラリネット、トロンボーン、バイオリン2、チェロ、ピアノをやる人達が集まった。
私の希望で編成を決めるのではなく、来てくれる楽器を使って曲を作るということになる。
家族が出かけていた日に自宅に集まって録音したのだが、録音機材も大したものではなかったし、初演当日はちゃちな再生装置だったため、最大音量にしてもほとんど聞こえないというさんざんなことになってしまった。
2作目は「ファウスト博士」が題材。前回の失敗にこりて、同期生の先輩が勤める小学校の放送室を借りて録音することになった。(休日に部外者が入り込んでもとやかく言われることもない時代だった)
が、しかし、問題はいつでもいいというわけではなく、日曜日のうち、その先輩が空いている日に限られた。(その頃は土曜も学校があった)
決まってしまっている録音日に集まれる人をきくと、フルート、クラリネット、バイオリン、トロンボーンという編成になった。
このちぐはぐな編成のために、私は初めて12音技法を使って曲を書いた。
今回のひとふしはこの編成の再現である。
なお、この「ファウスト博士」はいくつかの人形劇団が集まった公演会で初演されたが、他の劇団が子供向けの人形劇をやる中、題材がゲーテのファウストで、主宰する同期生が白塗りで黒マントの姿で自転車に乗って登場して前口上を述べて始まり、音楽が12音という具合だったので、場違いも甚だしい感じだった。

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