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おまえはもう真の男のための映画プリキュアドリームスターズをみたか?

よく来たな。おれは人のプーさんだ。おれはふだん140字以上のテキストは書かないことにしているが、今回おまえたちに「映画プリキュアドリームスターズ!」のすばらしさを伝えるため、特別にこの記事を書いた。お前たちはもうプリキュアドリームスターズをみたか? おれはみた。この映画はまだ封切りされて3日だがおれは既に視聴を終えており、これはそうとうな早さであることが証明されている。だが、おまえたちにもまだ遅すぎるということはない。おまえたちもプリキュアドリームスターズをみて真の男になれ。

東映の3Dはすごい

おまえたちの中にはこんどのプリキュアの映画が3DCGだと聞いて「えーっでもCGアニメってなんか動きが硬いし……やっぱり手描きの職人芸がジャパニメーションの良さだし3DCGにはぬくもりがないよね」などとくだらない決めつけをしてまだ見ていないものもいるだろう。ちょっと待て。おまえは東映の技術をみくびっている。

まずはこの動画を見ろ。

これは7年も前の映画のアウトロだ。このじてんで東映には相当すごい技術があったことが一目瞭然でわかるだろう。そして東映は7年間さらに研鑽を重ねてきた……7年といえば、「コナン・ザ・グレート」でタルサドゥームにつかまった細身の美少年が奴隷労働をするうちにだんだん筋肉がついてきて最終的にシュワルツネッガーになってしまうのとほとんど同じくらいの年月だ。では、もともとシュワルツネッガーの筋肉なみにすごい技術を持っていた東映がさらに7年鍛え続けたら……? こういえば、こんかいの映画の3Dがどれだけすごくなっているかそろそろおまえにも飲み込めてきたはずだ。

しかも、今回の映画は通常の作画パートも併用されている。そしてその作画パートにおいてもあえてキャラデザインを普段と少し変え、違和感なく3DCGによるバトルパートとつながるようにくふうされているのだ。実際、おれは見ていてほとんど違和感はなかった(ただ一点、サクラという今回の映画のゲストヒロイン……すなわちマドンナ……であるベイブの目の下の線がなんかゴミみたいに見えてしまうカットはあったがそれは些細なことだ)。そしてドリームスターズの12人のプリキュアがいりみだれ、カメラも回りまくる戦闘シーンは3Dだからこそできる迫力だった。おまえが熱い戦いに血を滾らせる真の男なら、これをみておいて損はないだろう。

敵のニンジャがすごいかっこいい

今回のプリキュアの敵はニンジャだ。まあ山里亮太が声を当てているでかい顔とか聞いたことない名前のお笑い芸人が声を当てているでかい犬とかも出てくるが、それはどうでもいい。おまえはこの映画でニンジャにちゅうもくしろ。

変身ヒーローモノをみていればだれでもいちどくらい「悪者はこの長々とした変身の間に攻撃すればいいのに」と思ったことがあるだろう。もちろんわれわれは大人だからそんなことをいちいち指摘したりはしない。それでもいちいち指摘する厄介オタクに対しては製作者側が「ながながとやってるように見えて実は0.05秒でやってるから攻撃するひまなんてない」とか「変身前のブワッて光る時に衝撃波が出て敵をはじきとばして距離をとっている」とかいろいろな説明を用意してきた歴史がある。だが、変身前、変身アイテムに手を伸ばす瞬間を狙ったらどうだ? この映画に出てくるニンジャは、それをやる。

おれはすさまじい衝撃を受けた。この映画に出てくるキュアフローラはおそらく最終決戦を終えたあとなのだろう、ハルク並みのすさまじいカラテ強者の風格をはなっている。だがそのキュアフローラも変身しなければせいぜいスパイダーマンくらいの身体能力しか持たない、キュートなベイブにすぎない……それをおもいしらされた。フローラが変身しようとした瞬間、敵ニンジャは「遅い」と言い放ってオリガミスリケンを投擲し、プリンセスパフュームを弾き飛ばす。そして次の瞬間にはもうフローラの背後に立ち、その首元にクナイダートを突きつけているのだ。おれは絶望のどん底に叩き落された。あのキュアフローラが、カラテだけで世界を救ったフローラが、こんなところで終わってしまうのかと。

まあいろいろあってもちろんキュアフローラは死なないのだが、とにかくこの時点で敵ニンジャがプリキュアたちが今まで戦ってきた相手とは違うタイプのイクサ巧者であることが鮮烈に視聴者に印象づけられる。そしてそれに対してプリキュアとしてはニュービーに過ぎないキュアホイップがいかに戦うのかというのもちゅうもくのポイントだ。追い詰められたウサギは猟犬をも蹴り殺す……おれにいえるのはそれだけだ。真実は劇場で、おまえ自身が確かめろ。

ちなみにこの不意打ちめいた初戦のあと、全員揃っての第二戦ではフローラは少々マヌケな方法で戦闘から排除される。なぜならカラテ最強のフローラが正面から戦ったらそれだけで勝負がついてしまうからだ。おまえは彼女の姿から、強くなりすぎたものの悲哀を感じずにはいられないだろう。

オールスターズではない新たなプリキュア

おれがこれだけ言っても、「えー、でも今回の映画はオールスターズじゃないんでしょ?やっぱプリキュアは初代だよ初代、初代がでてこない映画なんてクソ確定!」などというやつがいる。この期に及んでこんな決めつけをして見ようとしないやつはこりかたまったオタクでどうしようもない。いいか、まちがえてはこまるが、おれも初代プリキュアは猛烈にリスペクトしている。おれが就職も決まらず、大学を卒業できるか除籍になるかも怪しく、精神的に腐っていたときに救ってくれたのは初代プリキュアの二人だった。最初のオールズターズで、後輩プリキュアたちがピンチに陥ったところに初代が巨大な敵を蹴り飛ばして現れたときにはおれは思わず涙ぐみ、立ち上がってガッツポーズしていた(これは本当の話だ)。

おれが言いたいのは、人数もどんどん増えてきて変身バンクをぜんいん分フルで流したらそれだけで映画が終わってしまうような状況になってきた中で、誰それにほんのひとことセリフがあったのなかったの、そんなことで一喜一憂するのがほんとうにおまえの見たかったオールズターズ映画なのか?ということだ。そうじゃないだろう。プリキュアオールスターズでおれたちの血を熱く滾らせたのは、最終決戦を終えて世界を救ったプリキュアたちが平和に楽しく暮らしていることの尊さ……それでも一朝ことあれば即座に人々を救うために行動をおこす正義の心の不滅さ……そしてたとえ初対面でも、戦闘スタイルとかが全然違っても、その正義の心という一点を通じてプリキュア同士わかりあいチームとして結束するその姿……そういったものだったはずだ。そういうものを全員分丁寧に描くにはプリキュアは大所帯になりすぎていた。

おれは今回、春の映画に出すのを直近3チームにしぼることにした東映は英断だったとおもう。3チームにしぼることで全員にきちんと見せ場がつくられ、また「新人プリキュアに対する先輩からのインストラクション」という、オールスターズDXへの原点回帰的なぶぶんもあった。個人的には春は毎年3チームずつの映画をやるのが定番になり、たまにお祭り的な感じで初代とかが出てくるやつがつくられればいいとおもっている(仮面ライダーでやってるようなかんじだ)。

全員なんとなくいい感じになった世界

さいきんのプリキュアはラストで「仲間との別れ」がえがかれるのがとくちょうだ。プリンセスプリキュアではディスダークとの戦いを終えたあとドレスアップキーは眠りにつき、ホープキングダムとの行き来もできなくなって、4人はそれぞれの道を歩み始める……魔法つかいプリキュアの最終回は、まだおまえの記憶にも新しいだろう。うれしくない、これからずっと、リコえもんといっしょにくらさない! おれは泣いた。

そしておまえはこの映画を見てある疑問をいだくことだろう。「これはいったいいつの時点の話なのか?」と。この映画に出てくるプリンセスプリキュア、魔法つかいプリキュアの面々はおそらく最終決戦を終えたあとだ。先輩プリキュアの面々、特にフローラとミラクルにはあきらかに世界を救ったものの風格ともいうべきものがただよっている。だがそれはおかしい。最終決戦を終えたあとなら、プリンセスプリキュアも魔法つかいプリキュアも、変身できなくなっているはずだからだ。

その疑問に対するアンサーとして、おれは日本の作家・著述家であるキノコ・ナスのこの言葉を引用しよう。「全ルートのいいとこどりで全員なんとなくいい感じになった世界だと思ってください」。これはどのルートでもヒロインの誰かが死んだりひどい目にあったりするノベルゲーム「月姫」のぞくへんである「MELTY BLOOD」発表時の彼の発言だ。まあ引用ソースが手元にないので細部は違うかもしれないがだいたいこのようなことを言っていた。

全員なんとなくいい感じになった世界……なんとすばらしい言葉だろうか。プリキュアはどんな男よりも男らしい真の男だが、同時にいたいけな女子中学生でもある。そんな彼女らに、世界を救ったあとつらい別れしか待っていないというのはたとえ物語としては美しくともなんと残酷なことか! おれはそのことに常々こころを痛めていた。次に世界が危機に陥ったときにはプリキュアの手をわずらわせず、おれの手で解決できるようにとおもって毎日筋トレをするようにもなった。だがこの映画では別れはなかった。自ら救った世界で、平和で、楽しく、みんなでなかよく暮らしているのだ。それをみておまえは胸の中にあたたかな気持ちがわきあがってくるのを抑えられないだろう。おれもそうだった。そして明日からもまた筋トレがんばろう、そういう気持ちになった。

明日へ……

おれは明日も会社だ。おまえたちもきっと会社や学校へいくことだろう。学校はだいぶぶんは楽しくないにせよ友達や気になるあの子と会えたりもするが、会社はそういったことさえない、楽しいことやおもしろいことなど一切存在しない虚無の暗黒の世界だ。どんなタフな男でも、くじけてもおかしくない。

だがおれは明日も虚無の暗黒に立ち向かっていける。なぜか? プリキュアドリームズターズを見たからだ。楽しく平和に、しかし熱い正義の心を失わず生きているプリキュアたちの姿に勇気をもらったからだ。おれは真実にたどりついた。プリキュアこそが虚無の暗黒に輝く光だったのだ。おれはプリキュアドリームスターズを見て得たエネルギーで明日もタフな真の男として生きていく。おまえはどうだ? まだドリームスターズをみていないおまえははやく劇場に行け。そして真の男になれ。

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