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ガラスの10代 part.1

父を亡くした8歳からの10年は、
まだ、整理できない。

33歳で夫を亡くした女性が、
中学1年生の娘と、
小学2年生の息子を一人で育てる
苦労話に、まだ、できない。

「若いんだから、いい人見つけて再婚したら?
 子供たちにとっても、その方が幸せかもしれないし。」

僕でさえ、
そんな言葉をかけてしまいそうだ。

小学生の僕は、いろんな物を見た。

家に、知らない男がいる。
母の布団で寝ている。
いつもの場所のお金が、なくなる。
母と大喧嘩して、救急車が来る。
いなくなる。

二人目からは、懐かないようにした。
どうせ、長続きしないから。
別れる時、辛くならないように、した。

何人来たか、思い出したくもない。

PTSDとか、パーソナリティー障害とか、DVなんて言葉は、まだなかった。
どんなに叩かれても、叩かれることをした、僕が悪い。
終わるのを、待つしかない。

家出しても、行くところがない。
包丁を出された時は、父の実家へ泊めてもらったけど、結局、帰るしかなかった。

小学生って、あまりにも無力だ。
家を出る方法が、思いつかない。

中学生になって、体力はついた。
本気で戦えば、負けないだろう。
でも、力で勝って、どうなる。

悪いグループに入ってみた。
友達を殴ってみた。
でも、お互い、痛いだけだった。
痣は消えても、心の痛みはずっと消えないことを、知った。

本当は、わかってたんだ。
強い奴は、表通りを歩く。
裏へ逃げるのは、弱い奴だけ。
明るい大通りを、堂々と歩かなきゃ、
意味がないんだ。

家を出て一人で生きる方法を考えた。

1.高校奨学金を借りる。
2.進学高に合格する。
3.家から通える大学にない学部を選ぶ
4.大学奨学金を借りる。
5.入試に合格して、家を出る。

一浪は計算外だったけど、全部実現させた。

20歳の春、
やっと、自由になれた気がした。


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