4.お出掛け気分を味わう

こんにちは。悟り世代のOLウィニーです。

なかなか外出もできないので、数年前私が旅行で屋久島へ行った旅行記を書こうと思います。


ときは大学生の卒業前。

卒業旅行としてゼミメンバー6人で屋久島へ行くことにしました。そのうち1人は登山経験ありでしたが、それ以外の5人は登山経験などしたことがないメンバー。全員なんだかんだ体力に自信があり、高尾山に登るテンションで屋久島に挑みました。

時期は冬でしたので、屋久島の観光シーズンでもなく、夏に開催されるガイド付きツアーのようなものはありませんでした。そのため私達はツアーなしで1日で山に入り、屋久杉を見てもののけの森を通るコースを計画しました。

ふだん推奨されているコースは2日間コースで、1日目で屋久杉コースを回り、2日目でもののけの森コースを行くものでした。しかし、地図を見る限り屋久杉コースから途中外れてもののけの森コースに合流できる通り道があったので、その道を通ることにしたのです。

時はすぎ、それぞれ卒業論文も終わり、屋久島旅行の日になりました。1日で鹿児島まで移動し、夜に屋久島の民宿につきました。

そして次の日。いざ、入山の日になりました。

時刻は朝の3:00。もちろん周りは真っ暗で、登山口には私達以外に誰もいません。入山報告書のようなものを記載し、空っぽな空箱に投函しました。

登山口から最初の方は、トロッコ道が続いているので線路沿いに歩いて行くことができます。もちろん装備も不十分で、ヘッドライトや懐中電灯の数も人数分なかったので、前の人の灯りを頼りに見える線路の枕木を越えていくのがやっとでした。

歩き進めていくと、ゴーッと水の流れる音がしました。近くに川が流れているようでした。次第にトロッコ道は橋に差し掛かりました。流れる水流を感じながら橋の上を渡っていると、前の方の誰か「手すりがないかもしれない。」と言いました。たしかに灯りをかざしてみても橋の手すりがありません。暗すぎて周りが見えないだけだったのか、そもそも手すりすらいらないような低い橋だったのかもわかりません。ただ足下を流れる川の音はゴーッと確かに聞こえます。

私達は一気に怖くなり、お互いのバックの紐を前後で握り締めながら一歩一歩丁寧に歩きました。

後日、調べてみたらやはり屋久島には欄干がない橋がありました。なかなか道幅がせまい橋でした。

そんなヒヤっと体験をしながらも歩き続けていくと夜も明けてきました。時折聞こえる猿の泣き声や鹿の足跡にこの山には自分達と動物達しかいない気持ちになりました。ふだん都会の喧騒のなか暮らす私達にとって、その感覚は非常に新鮮で癒されるものでした。

お昼過ぎになると他の登山者ともすれ違うようになりました。この時期は老夫婦の方がガイドさんと一緒に回っていることが多く、私達のような若い世代には会いませんでした。お昼過ぎにやっと最初の目的地である屋久杉に到着することができました。周りの木々も大きすぎるのに、屋久杉自体もさらに大きすぎて、感覚がわからなくなりました。屋久島自体は杉の木の根で覆われているそうです。それでも納得できるほど、沢山の大きな杉の木々を見ました。

民宿のおばちゃんにもらった昼食を食べ終え、もののけコースへ行くことにしました。屋久島コースからもののけコースへは迷うことなく、すぐに辿り付く事ができました。もののけコースについた時の感動は忘れられません。まさにいまにもジブリのもののけ姫に出てきたこだまが出てきそうでした。もののけコースでテンションが上がりまくった私達は色んな写真を撮りました。一眼を持ってきてた友人はここぞとばかりに様々な風景をカメラに収めていました。

そんなこんなしているうちに下山の時間となりました。下山までの時間は2時間を予定していました。もののけコースから2時間程歩き、休憩も兼ねて休んでいると、少し雲行きが怪しくなり、霧雨が降ってきました。すると友人の1人が「ねえ、これ見て」と木の看板を指差しました。その看板を見ると、現在位置から下山口までの時間があと1時間半かかる事が書かれていました。既に2時間も歩いたのに、ここからさらに1時間半かかるとは大誤算でした。

私達は早めに休憩を切り上げ、歩く事にしました。

雨は次第に強くなり、日も傾いてきました。暖かい日の光は消え、霧がかかるようになりました。今まで穏やかだった自然が、いきなり暴れ始めました。

小川のように流れていた川も下山する時は濁流に変わっていました。そして1時間ほど歩いた頃、ついに私達は道を見失いました。

既に下山口に降りててもおかしくない位置にあるのに、指標となるピンクのビニールテープがどこにも見当たりません。私達の周りにあるのは小川の流れる小道と雨で水流が傘増しし、滝が流れる崖でした。携帯ももちろん繋がらない、日も傾き次第に夜になり足元さえ見えなくなる状況でした。遭難するってこういう事かと思いました。皆冗談のように自分の持っている非常食の話をしていましたが、それが現実となると思うと、まだ信じたくない気持ちと焦りでいっぱいになりました。

その時でした。たまたまコンパスを持っていた友人が「地図とコンパス的には下山道はこっちを指している」と言いました。コンパスが指している道は、水流が増した滝が流れる崖の方でした。

私達は意を決して、崖を降りる事にしました。水流が増した川は非常に恐ろしく、足を踏み間違えると流されるかもしれない勢いでした。

崖を降りきると平坦な道にでました。平坦な道から人間が作った木の屋根が見えました。待合所のようなものでした。バス停の看板まで見えました。あの時の私達の安心感は計り知れないものでした。自分達が辿ってきた道を振り返ると、暗闇の中から、ただゴーッと水が流れる音しか聞こえてきませんでした。よくぞ諦めずにここまで戻ってこれたなと思いました。

帰りは電波も繋がり、タクシーを呼ぶ事ができました。辺りも暗く、霧もかかっていたので、タクシーのライトもなかなか見通せませんでしたが、無事に山道を降りる事ができました。

無事に民宿に到着でき、暖かい夕飯を頂いたときの感動は今でも忘れません。


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