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素朴な疑問は朴素で愚問で

 まずもって、これは妬みでも僻みでも煽りでもなんでもない、素朴な疑問だ。
 どのくらい素朴かっていったら、出席をとらず且つ履修抽選に当たれば間違いなく単位が来るという講義に初日のオリエンから最後のコマまで休まず出席するくらい大学生くらい素朴。母親がしまむらとかで買ってきた、クリスマスケーキのチョコプレートに書かれてるみたいな英字フォント満載の服をなんの疑いもなく着る男子高校生くらい素朴。都会に出てきてビクビクしながらも人生で初めて男と付き合い始めて、初めて一緒の夜を過ごすときに「これは命を育む決意をしたとき以外にシちゃだめなことです!!!」とか説教しちゃう彼女くらい素朴。もうやめよう書いてて訳わかんなくなってきた。


 なんのために、他人のことを好きになるんだろうか。

 親子関係みたいに、切ろうと思ってもそう簡単に切れない関係とかならわかるんだけど、出会うまでは自分のなんの関わりもなかった人間とどうして一緒にいたいとか思うようになるんだろう。ついでに言えばたいして好きでもない相手と付き合ったりとか、どれだけ長く積み重ねた年月があったとしてもそれをいとも簡単に捨てられたりとかする感覚だって、私にはよくわからない。

 わかんないっつったってお前も誰かと付き合ったことくらいあんだろ、って田舎のおっさんみたいな嗄声のツッコミが聞こえてきた。あるよ、そりゃ。あったらわかるだろ、って言いたいんだろ。わかんねえから訊いてんだよ。「どうしたらいいでしょうか」って質問に「どうしたらいいと思いますか?」って返してくる奴なんて、なんの役にも立たないよっ。バラン以下だっ、お前なんか!!!!


 ふざけて書いてるけど、実際問題、最近本当にわからない。

 なんのため……とかなくて、単に相手と一緒にいたいと思うからってだけでよくない? 
 って思ってた時代が私にもあった。現実にそうだったし。他の人がどうだかは知らないけど、私は本当に相手にめろめろになってるときはいちいち相手のどこが好きだとか考えないから。
 相手に「理由をレポートにまとめなきゃ納得できないってことは、それってあなたはそこまで私のこと好きじゃないってことですか?」みたいに言ったこともあるし、現にそれが火種となって街を焼き尽くしたこともある。

 でも、今となってはかつて自分が宣ったその理屈もよくわからなくなってしまった。だいたい、恋人がそんなことを週刊文春の記者みたく四六時中私にインタビューしてくるというのは、私が相手の恋人として満足してもらえる振る舞いができていなかったというだけであって、それなのに「お前ってほんとに私のこと全然好きじゃねーな」みたいなこと言われりゃガンジーだってビール瓶で殴ってくるよね。あの頃は内心(眠たいことばっか言いやがって……)と思ってた元恋人たちに、ちょっと同情する。
 ごめん、って少しは思うけども、大半の元恋人たちはもうほかの誰かの伴侶になってるからなあ。ってかなんかそれも嫌だな。仮に他の誰かとどれだけ粘膜擦り合わせてたって、これから全部私で塗り替えられるならそれでいいけど、私にあれだけ甘ったるい砂糖菓子みたいなセリフを囁いていたその口で、今頃は違う誰かに同じことしてるんだなーって思ったら垂直に吐きそう。


 最近ようやく気づいたのが、私は実際のところ自己顕示欲がとても強くて、かつ独占欲もあるし、だからって自分が縛られるのは大嫌いな超わがまま爆弾だということ。好きなときに遊びに行きたいしお酒も飲みたいし文章も書きたい、でも自分が会いたいときやそばにいてほしいときに相手がいないと「なあ、どこにいんの何してんの浮気してんの? というか好きじゃないってことですよね私はあんたが願ったときはどんな真夜中でも会いに行ってんのに」みたいなことを悶々と考えて勝手に自壊する。って言うか私は実際にそういうシチュエーションで相手に浮気されてた経験があるから、余計始末に負えない。

 どれだけ相手を好きになったとしても、なんの迷いもなく全部丸呑みなんてできない。差し出された飴玉をとりあえず口に入れても、いつでも吐き出せるように、ポケットの中ではくしゃくしゃの包み紙をずっと握っている。
 だからきっと絶望的に恋愛に向いてないし、誰かに愛されることはおろか誰かを想うことすらおこがましいような妖怪が私であって、そんな奴の主戦場が恋愛小説だというのだからもう笑うしかないよな。どうなってんだ世界。


 同時に思うのは、実生活じゃもう期待できないからこそ創作で登場人物に恋愛させてるんだろうな、と。太陽に向かって立っているから自分の目の前には影なんかできてないのに、無理やりにでもそれを踏もうとしてる感じ。
 毎日が救いようのないクソみたいな現実だからこそ、虚構でくらいは夢を見たくなるもんなんだよな……みたいな作品を最近書いた。書いている本人が一番の夢見心地で、読者がついてけなくて夜中に汗だくに目覚めていても、筆者は朝まで気持ちよく夢見て爆睡。以後ループ……っていう生活がここ数年続いているのだけど、本当にこのままでいいのか。
 これだけ続けたら、もうこのままでいいかどうかわかんないな。


 そう考えたときに、冒頭の疑問が頭に浮かんできた。結局これだけダラダラと書いたくせに答えが出ないで終わったけど。

 他人に明確な答えを求めるわりに、自分が一番曖昧だって気づいてる?

 ずとまよの新曲聴いてたら、最近ぜんぶ適当になってきた自分に対してそうやって問われてる気がしてきて、なんかゾッとしたって話です。


 まあいいや、なんとかなるしょ。こんな私でも、まだ誰かとの縁があるのならば、きっと何らかのカタチで導かれるはずだから。
 こういうところがまだまだ素朴だよね。どのくらい素朴かっていったら


お読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、創作活動やnoteでの活動のために使わせていただきます。ちょっと残ったらコンビニでうまい棒とかココアシガレットとか買っちゃうかもしれないですけど……へへ………