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正しくな(れたほうがいいけどやめら)れない

 あまり詳しくは書けないが、今の私の仕事は「ここはルールに則ったお仕事ができてますか?」ということを調べるのが主な業務だ。子供の頃から家電の取扱説明書を読むのが好きだった結果かどうかは分からないけど、よく言えば真面目で、悪く言えば融通の効かない大人になった私には合ってるんじゃないかなーと思う。まだ勤めはじめて日は浅いものの、少なくとも「ここはまあうまくやっといて責任は取らないけど」とか「ぜんぶルール通りにやってなんかいられるか」みたいな会社や上司のもとでは働きたくないから。

 それでもやっぱり、多少間違っているとかおかしいとかいうだけで、全部が全部「ココ! コココココ・コ・コ・コ!!!!」と指摘することができるかといえばそうではないらしくて、まあ今回はいいけど次からは……もう……ネ………などとお目溢しをしたりする場面も多いらしい。
 ここに私の柔軟性のなさがキッコーマンかどっかの麺つゆばりに凝縮されてるんだと思うんだけど、なんかそれを先輩から聞いたときに(結局、正しさってなんなんだろうな)と感じてしまった。そんなに正しいことだけしたけりゃ警察官にでもなれ……って言われそうだけども、最近は警察がルール破ってるニュースばっか流れてくるしなあ。


 あと、正論ばっかり言う人間ってどうしても嫌われがちだよな……とも思う。その人にとってはその正論こそが正しくて、周りだって「正論」と認識しているのなら内心は(まあ確かにあいつが言ってるのが真理だわ)ってことくらいわかってるはずなのに、それでも煙たがられてしまうのが、なんだかなーと思っちゃう。

 それってどうしてだろう、と思ったときに行き着くのって大抵は「盛り下がる」とか「空気読んでない」とかなんの解決にもなってない結論が多いんだけど、なんか今日はふっと「正しく生きるのは面倒だから」という答えが思い浮かんだ。
 ほら、ちょっと前の警察ドラマにもあったじゃん? 組織の中で正しさを貫くのは難しいんだ、正しいことがしたけりゃ偉くなれ……みたいな。あのドラマの登場人物たちみたく、よっぽど強い志がある人なら耐えられるのかもしれないけれど、一般的な人間だったら、途中で信念を曲げてでも楽なほうへ進路をとってしまう。きっと正しく生きようと思えば思うほど窮屈だし、面倒だし、辛いうえに損する確率のほうが高いから。歩いてても絶対に信号無視しないような超真面目な人より、多少ズルけてもそこそこ有能さ発揮できる手近キャラのほうがモテちゃうし。人間みんな心の中ではできるだけ正しく生きられたほうがいいってわかってはいても、そういう窮屈さとか面倒臭さみたいなことが頭をもたげてきて、ちょっとくらいならいいでしょ……と片足突っ込んだらもう二度と抜けなくなってるって感じなんじゃない? 知りませんけど。私も人間だから。


 フィクションの世界でも、堅物の主人公が死にかけてるところを助けるのが、それまで誰彼構わずぶっ殺したりルール踏み越えるのに躊躇ない冷血だったキャラが人間の心を取り戻した結果で……みたいな流れも個人的には好きじゃない。世間的に見れば、ルールを守って他人に迷惑かけずにずっと生きてきた人よりも、昔はいろいろ悪いことしてきたけど今は更生して真人間になったんだよね……みたいな人のほうが評価されるのが気に入らない。それまでの人生で何人も傷つけて悲しませて苦しませてきたのに、やっと真人間に戻ってきたってだけで周囲がやたらめったら褒めそやすのも変な話だろ……と思ってしまう。平準器置いたら絶対まだ傾いてるし。


 もうちょっとずる賢く生きることを学びなさい……って人もいるけど、なんで悪者があたしに偉そうに説教してんだよ、って気持ちになってしまうのでまともに話が入ってこない。だってズルをするってことはそのぶん誰かが損してるってわけだし、そのことに少しも心が痛まないのなら、もう救えないじゃん。
 浮気も然り。配偶者は形だけで浮気相手に気持ちも金も遣うけどまんまと家族手当はせしめるなんて完全に詐欺だかんな。私がウシジマくんだったらこれまで不正受給してきた手当の金額の数字ぶん、相手の体中の毛穴に針を刺すね。脱毛の施術みたいに。多少私憤は混ざってるけど。


 私たちはみんな義務教育で「ルール守って他人に迷惑かけないで生きろ」って教わるのに、結局守んないやつだけが得をする世界なら今すぐに滅んでくれたらいい。正しく生きても欲しいものを手に入れられないとか、大事なものが守れない世界ってなんなのかな。私にはわからん。まあ人間は本質的に、正しくなんか生きられない生き物なのかもしれないけど。

 ただ私は「だからって規則を破っていい理由になんかなんねえだろ」って思うので、さっさと知識と力を身につけて、相手が泣くまで叢雲のつるぎの先っぽでツンツンツンツンできるようになりたい。頼むから業務に関するルールくらいちゃんと守ってくんないかな。指摘が増えると仕事が忙しくなって超めんどくさいので。

 ん、でもそれってつまりは「私は自分の仕事をラクにするために相手の間違いを是正する」ってことになっちゃうのか。それってズルにあたるのかな。でも決められた枠組みの中で省力化を図るのはズルでもサボりでもないよな。平気でオレンジ色のラインはみ出してぶち抜いてくやつはアウトだけど、今の話は言うなれば、普通の白い破線だもの。



 あーやっぱり超めんどくせえ。正しいってなんなんだろうね。結局は、みんな間違っててみんな正しい、とかいう玉虫色の結論になっちゃうのかな。愛してるけど愛せない、みたいで嫌いだわ。でもそこで「やっぱり友達同士でなんかいられないや」って簡単に他人の彼女を抱いちゃうような男のほうが私は嫌いだし絶対に命乞いの途中で袈裟斬りにする。そんな感じで、戦隊モノとかで主人公が変身してるシーンの途中に攻撃しちゃえば絶対勝てるのにね。こういうこと平気で言っちゃうから煙たがられるんだよね。最近は思っても口にしないようにしています。えらい。





 最終的にはなんの結論も出せなかったけれど、思っていることを思うままエディタに叩き込むのってすっきりするし、まだしばらく書いていきたいと思う。というか私だって講義寝つぼって友達に学食でラーメン奢る代わりにノートのコピーもらってたし、なんならその講義は3回連続で落としたから結局単位取れずに卒業したわ。

 なんだよ真面目どころかズルだし犬畜生じゃん私。もうワキ脱毛とか行ってニードル突き刺されてチワワみたいな悲鳴でもあげてろ。解散。


お読みいただきありがとうございます。いただいたサポートは、創作活動やnoteでの活動のために使わせていただきます。ちょっと残ったらコンビニでうまい棒とかココアシガレットとか買っちゃうかもしれないですけど……へへ………