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「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル」を見て、考える - その3 -

今回は、前回の続きから初めていきたいと思います。


2. 黎明期(技術の引き金、Innovation Trigger)

2-13. デジタル・メッシュ(主流の採用まで:10年以上)

デジタル・メッシュとは、IoT、AI、VRやARなどを活用したシステム・サービスをつなぐ網目状(メッシュ)の環境を意味するようです。
IoT等のデジタル機器自身がメッシュネットワークを構築することで、異なる端末で取得・生成したデータを相互に交換し合うことが出来るということだと思います。例えば、デジタル温度計で取得したデータから今日の洋服をコーディネートしてくれたり、自分が帰宅直前になることをGPS情報で判別して自動で暖房を入れてくれたりだと思います。
BluetoothやWi-Fiを基にしてシステムかなと思いましたが、もし5G/6Gがベースとなってデジタルメッシュを構築するのであれば、セキュリティ面が気になりますね。
(公衆Wi-Fiが一番危険だと思いますが、、)

2-14. 非中央集権型Web(主流の採用まで:5〜10年)

Web3.0と同義だと思います。
Webの歴史を考えると、Web1.0(単方向、閲覧ユーザは編集権限なし)、Web2.0(双方向、 SNS等でプラットフォーマの一人勝ち)と来ており、Web3.0では分散型ネットワークが期待されています。Web2.0までは中央集権型ネットワークであり、ユーザの個人情報がプラットフォーマに独占されていました。Web3.0では、ユーザは利用者であると同時に管理者となることが出来るという主張になります。
そんなに大勢が相互的に繋がるとセキュリティ的に危ないかと思いましたが、SSI/DIDという考えがあるようです。自己主権型アイデンティティ(Self-Sovereign Identity:SSI)は、管理主体が介在することなく、個人が自分自身のアイデンティティをコントロールできるようにすることを目指す考え方です。分散型アイデンティティ(Decentralized Identity : DID)は、ユーザーが自分の属性情報に関するコントロール権を確保した上で、各データ保有者が保有するユーザーの属性情報のうち必要な情報を、ユーザーの許可した範囲で連携し合う考え方です。これらの考え方により、「自らのデータは自らが管理し、必要になった際は必要最低限のデータだけ共有する」という仕組みを作り、セキュリティ面での問題を乗り越えるのだと思います。
また、分散型であれば通信量やデータ処理量が増える課題もあると思うため、ネットワーク自体の更なる発展やエッジコンピューティング技術の発展も必要になってくるのかなと思います。

ウェブの発展段階

2-15. デジタル倫理(主流の採用まで:5〜10年)

「2-6. 人間中心のAI」で述べたように、データやAIの正しい活用方法を考えることを意味していると思います。近年、各国のGAFA等のプラットフォーム企業への対策は強まっており、どんどんその傾向は強くなることでしょう。

2-16. トランスフォーマー(NLP)(主流の採用まで:5〜10年)

NLPとは自然言語処理(Natural Language Processing)のことであり、この分野で用いられる深層学習モデルの一つがトランスフォーマーとなります。
深層学習の進歩に大きく寄与したものであるようで、Self-Attention(自己注意)のプロセスが非常に大事なようです。
従来の自然言語処理で使われていたRNN(Recurrent Neural Network,回帰型ニューラルネットワーク)では、逐次前回の出力結果を次の入力に利用し、過去の情報を利用して出力していました。そのため、必要ではないノイズも含まれていたり、並行処理できないため時間が掛かるという課題があったようです。
一方、Transformerでは、Self-Attentionプロセスによってデータのどこに着目すれば良いのか学習する機能があり、関連度に応じて出力してくれるようです。また、RNNのように順に単語を渡していくのではなく、Encoderには時系列順に並べた文章データを渡します。そのため、逐次結果を入力に利用するのではなく、並行処理を実施することが出来るようです。
TransformerはNLPにとどまらず画像認識にまで革命をもたらそうとしているようで、様々な分野でのブレイクスルーに寄与してくれることが楽しみですね。

RNNの逐次処理
Transformerの並行処理


2-17. エッジAI(主流の採用まで:2〜5年)

「2-5. 量子エッジコンピューティング」で少しコメントしたので割愛します。
クラウド側でなくエッジ側でAI処理をしていこうという動きです。そのためには、AI処理が出来るコンピュータリソースをエッジに配置する必要がありますので、どれだけ導入できるかどうかが鍵になるかと思います。また、一旦導入したものは簡単に変わらないと思うため、エッジAIの普及度によっては量子エッジコンピューティングの需要は増減するのではないかと思います。引き続き、確認が必要です。

2-18. コネクテッド・プロダクト(主流の採用まで:5〜10年)

デジタル・メッシュと同じような概念だと思います。
センサーと外部からのデータを使って、製品の状態や稼働状況、外部環境の監視を行うことができるため、製品のアップデートや制御が可能になることだと思います。
例えば、日常のスマホも定期的に通信オペレータや端末メーカからソフトウェア・アップデートが掛かると思いますが、こういった制御や監視があらゆる端末で普及していくものだと思います。ハードウェアこそ発売後の置き換えは難しいですが、ソフトウェアでは可能ですので、購入後のアップデートが基本的に実装される世の中になっていくのではないかなと思います。

最後に

内容が多いため、一旦こちらで終了します。
次回、続きから実施してみます。

参考資料

資料①:メッシュ?エッジ?最新デジタル用語はツッコミどころ満載!
資料②:「Web3.0」は何が新しいのか?【2022年、知らないとまずいキーワード】
資料③:デジタルアイデンティティ ~自己主権型/分散型アイデンティティ~
資料④:デジタル倫理(Digital Ethics)とは・意味 - IDEAS FOR GOOD
資料⑤:【世界一分かりやすい解説】イラストでみるTransformer
資料⑥:【コード付き】画像用Transformerを利用して衛星画像の分類機械学習モデルを作成する



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