あなたがくれる手紙はいつも決まって

ありがとう

だったね。

それは私が言うことば。

だけど声を出したら涙が溢れてくるものだから

しゃがみ込んで止めるので精いっぱいの情けない娘だね。

それでもあなたは最後に小さな声をふり絞り

病弱の私を気遣って

「お前には何もしてやれなくてごめんな」

だなんて言わないでよ。

背高のっぽでハンサムで

頭が良くって達筆なちょっと名を馳せた書家で

審査員で

すごく自慢の父だった

今日、三回忌を終えた。

黒いレザーの父のお気に入りのソファーに目を移すのが癖になったのはあなたが逝ってしまった日から。

世界中で一番愛するお父さん

お盆には帰ってくるね。

好物の甘いもの作って待ってるからね。

お父さん

とうとう言えないまま胸の奥に仕舞い込んだものがあるの

ありがとう

「こんな私を愛してくれてありがとうございます」

と。