雪月花

精いっぱいの幸福よりも一日遅れの幸せ日和に肖りたい 雪・月・花 儚く遠く切ない名前だけ…

雪月花

精いっぱいの幸福よりも一日遅れの幸せ日和に肖りたい 雪・月・花 儚く遠く切ない名前だけれども 雪は溶けて春が来て 月の伝説は小気味よく 花は幾年も返り咲く 「生きていくのよ」それが私のスローガン せっかく生まれてきたんだもの 私は生きることに恋をして世界を描きたい

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"The doctor says you have two years to live." 唐突に彼からそう聞かされたのは弥生の月 いつもと特段変わらぬ表情で 世間話に織り込んで気安く告げた それから ハハハ… と、 強がりだろうか、続いて笑って見せた それなら冗談だよと笑ってよ あの一瞬から私の心は何も響かなくってしまった まるでロボットのような言葉では作れない感情だけが支配する 涙も声も何もかも私の体内から抜け落ちてしまっったようだ こんな小さな私には大きな悲

    • 貴男の存在

      強いお人ですね。 賢く厳しくいかなる時も動じない。 その逞しさが見ていて辛いのです。 どれほど苦しいでしょうか まるで闇に取り残された幼子のよう 息も絶え絶えに憔悴しきり 知らない邦を彷徨い続けて…更に更にと 何里行けど誰にも声が届かぬ独りぼっち あなたはそれでも今日という日を存分に生きたと感謝する 私はその背中を見て大きな大きなお人だと敬うばかりです。 これからあなたが逝くという国は 痛みもかゆみも苦しみも何にもないと聞いてるわ でも待って そんなに忙しくいか

      • Dad

        この頃 笑わなくなったね …雪月花 眩しくて生き生き輝くきみが消えた 何があったの…雪月花 大きな瞳は悲しいと叫んでいるようだ 私でよければ話してごらん 大粒の涙をひらりと溢して語りだす それは大切な人の深刻な現実 その人は海よりも深い人 のどかな春風よりもわたしを包んでくれる人 知人で友人で親友であり異国で暮らすわたしのもうひとりのDad. ころばぬように迷わぬようにとわたしに光を与えてくれた人 だって彼はヒトを助けることを使命とし 動物を愛し 植物を愛で慈しむ

        • 私の夢見るおっきな未来

          どんなにどんんなに想ってみても叶わないことlは叶わないものでしょうか。 健康優良児として認められ両親を喜ばせる乳児だったらしいけれど いつの頃からだろう… たぶん健康を否定されてしまってから意気地のない私は我慢と諦めが得意になった。 夢は可愛いおばあちゃんになって孫を連れて界中を旅したい。 英語さえ話せればどこの国へ行っても怖くはない! なるはずだったのに 辛い体を引きずっては国内だっておぼつかないだろう。 未来が描けない 夢が描けない 現実は悪者だ だけど私は普通ビ

          人魚

          長い長い回廊ですね そこは過去も未来も現在も未知の空間もなにもかもが交差して 自由自在に飛び回れる世界 そして私は思い出をめぐり もっと幸福になりたいと 様々な物語を描くのよ 1度目は悲しい結末で終わって志っても 2度目に読めば めでたし!めでたし! に変えてしまえばいい バーチャルな暮らしもいいものだもの

          生きる選択

          長い時間…ヒトの顔して生き永らえてきたけれど 人間でいるのは苦痛だった 心はいつも森林や海や風や自然の空気たちに嫉妬してる自分に気づく 臆病者… おくびょうもの! それが本当は巣のわたし 分かってたけれど受け入れて大人に成りとて変わりもせず… いつまでも小さいままの自分に腹が立つ 生きていこうと決めたけど 病と闘い自分の性根を隠して作り笑顔の人造花でいることに 気持ちはいつも置いてけぼり 老いるということは決して悲しいものじゃないと思っていたのに こんな峠で突如出会

          生きる選択

          うた

          今でもピアノを弾くとふと思い出す あれは… もう幾年も昔のことだったのに 友人のアパートを訪れた時 小さな玄関の額に入った文字が目に付いた とても素敵に洒落た言葉たち 『くりくり目玉のひとみちゃん 何をしようか… おしゃべり? ギター? そしてそれから僕と結婚してください』 瞬間 小気味よいリズムが浮かんだ 私は曲をつけて未だに 時折くちづさむ

          笑って

          大切なものがある 友情 大好きな友人 未来なんて誰も分かりゃしないのに 勝手に悲しむものじゃない 大丈夫だよ 俺はまだ死なないよ わかってる わかってる なのに部外者が辛気臭い顔をして怯えてしまう ひとりの時間は窮屈なほどこんなにも虚しさに支配されてしまう その人は多発性腫瘍 癌が更にに出現する可能性がこれからも襲い掛かるかもしれなくて 生存率は…? 余命は…? 一般人でも臆測はできる それでも 友はいつもと同じ 生きることに貪欲で つまらぬ話に付き合ってよく笑

          彼女

          あの子 出会ったのは雨降る病院の待合室 沈んだ空気の中にそぼ降る雨音が厭に空々しくて 話しかけたのは人見知りの私の方だったよね。 「あの…とても失礼ですが何処がお悪いのです?」貴女は明るく笑って 「全部です。頭のてっぺんから足の裏まで全部が悪いんです」 だなんて。 そう、私も同じようなものかしら。 私たちは同い年と分かりすぐに意気投合 診察までの小1時間多くの話題で事欠かず楽しい時間が持てたっけ そうして…彼女は進行性難病 薄く笑ってそう言ったんだ… 静かに空気が淀ん

          I love you the best in the world.

          あなたがくれる手紙はいつも決まって ありがとう だったね。 それは私が言うことば。 だけど声を出したら涙が溢れてくるものだから しゃがみ込んで止めるので精いっぱいの情けない娘だね。 それでもあなたは最後に小さな声をふり絞り 病弱の私を気遣って 「お前には何もしてやれなくてごめんな」 だなんて言わないでよ。 背高のっぽでハンサムで 頭が良くって達筆なちょっと名を馳せた書家で 審査員で すごく自慢の父だった 今日、三回忌を終えた。 黒いレザーの父のお

          I love you the best in the world.

          5月母の日

          おかしな話です。 でもクスンと笑えません 道端でまだあったかい仔犬を拾ってつれて帰った時にも 大事にしてあげようと貴女は笑ってうけいれてくれました 世界で一番大好きな人だよ お母さん ほんとはね、ずっと前から気づいていたのに照れくさくて言えなくて 胸水が溜まり緊急搬送されてからも 病院内は面会禁止でガラス窓越しに母が賢明に頑張ってリハビリに精進してる姿が目に飛び込んだ途端 (お母さんがんばってるね もう少しだよ) 心の中で胸っぱいに叫んだら一心に見つめる私たち姉妹に気づ

          5月母の日

          雪の降る夜に  娘より

          ありがとう お母さん 貴女は大きな人でした 今更だけど私の自慢の母でした こんな簡単な言葉もっと早く言っておけばよかったね なのにいつも悪態ばかりついてきた愚かな娘 今になってやっと分かるなんて遅いのかな 毎日 祈ることしかできずにいた私はなんて無力なのだろう 手があったかいのに 医師は再三嘘をつく お母さんが死んじゃったの… お母さんは死んじゃったの… こくんこくん…て数回の下顎呼吸を繰り返し穏やかに眠って逝ってしまったの…? 「先生…」 楽観的と言えば聞こえが

          雪の降る夜に  娘より

          遅すぎたありがとう

          持って生まれた性格・気質は環境ではそう変わりはしないものらしい 私は自分が嫌いだった 内気で臆病で消極的で おまけに根暗で後ろ向きのくよくよいしぃ だけどこんな私を愛してくれた人がいた なのに幾つになっても悪態ばかりついていて 失くして初めて心が凍えた 本当は大好きだったんだよ カッコよくて達筆で背高のっぽのお父さん 何も持たない私の一番 自慢だった そんな父が去ったのは一昨年の真夏のこと 誰かが言ってた 一週間もすれば忘れると そんなの嘘 私はいまだに心が癒され

          遅すぎたありがとう

          愛した妻は諷の別人

          「おっ……ととと」 幹男はいつもの不作法な癖が相俟って、左肘をテーブルについて右足を軸に片足組んでご馳走に有り付くものだから左の如くとんだ惨事に見舞われた。 ガーデンカフェの角地に席を陣取ったのは春の小風を感じながら、燦々と峰々に煌めく夕日さえも食卓で味わえると詠んだからだっだ。と、そこまでは脳裏は〝勝算有り〟とにわかにほくそ笑んでいた。 だが、旨そうな肉が運ばれ貪りつこうとした矢先、地面を踏みしめていた右足首当たりに得体の知れないヌメリを感じた。違和感はそれだけ

          愛した妻は諷の別人