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我を消す、とは?映画『今夜、世界からこの恋が消えても』鑑賞。

先週二十歳の娘に誘われて観に行きました。普段自分一人では観に行かない映画です。

いつも友達と映画館に行く娘も夏休みに入ってからテレビの宣伝効果?で「評判がいいらしいよ」「みっちー(道枝駿佑くん)と(福本)莉子ちゃんが出てるから」と急に観る気になったらしく、そんな理由で?と思いながら観ました。若い時はそんな理由が多いのかしら。

元々涙脆い上に近頃更年期とバセドウ病で情緒不安定な私。たぶん号泣するのだろうと思っていましたが、、、案の定マスクの下は涙と鼻水でグシャグシャになりました笑マスクを着けていて本当によかったわ、とこういう時に思います。

記憶障害がテーマの作品といえば同じ恋愛映画だと「私の頭の中の消しゴム」等たくさんあります。本好きの私でしたら小川洋子の「博士が愛した数式」が印象的でしょうか。読みすすめると頑固な博士の佇まいにクスッと笑みが溢れてしまい、いつの間にか「人生って自分が思うより味わい深いなあ」と独特の世界観に入り込んでいます。一度も映画は観たことがないのに再読した時に寺尾聰さんと深津絵里さんがふっと頭に浮かんでしまうのはなぜでしょう?それがいわゆる適役、というものでしょうか。

そうだとすると今回鑑賞したこの恋愛映画はどの俳優さんも適役でした。

主人公の女の子・日野真織は生真面目で純粋。福本莉子ちゃんは元々顔立ちが整った、正統派美人なので少し何を考えているのかわからないようなミステリアスな部分があります。それ故に一度眠ってしまうと記憶を失ってしまうという一歩間違えればわざとらしくなる難しい役を嫌み一つなく演じていました。

その真織に偽装恋愛を持ちかけられる男の子・神谷透はなにわ男子の道枝駿佑くんが演じています。演じている、というよりそのままの自然体に見えるのが彼のいいところです。透はつかみどころのない、どこか飄々としたところが道枝くんそのままです笑(褒めてます!)記憶がもたない真織と時間を過ごすごとに本気で真織を好きになってしまいます。彼は真織のことを本気で想うがゆえに真織の親友・綿矢泉にあることを約束させます。

そのヒロインの親友を古川琴音ちゃんが演じているのですが、やはりこの子、すごいです。上手いです。可愛いです。くせのある話し方が好きです。

なんか俳優論になりそうなのでやめておきます。その切ない切ない透の運命と決断で涙が止まらなくなってしまいました。

誰しも好きな人が出来たら「私のことを思って(忘れないで)」と思う気持ちが芽生えます。しかし真織は記憶がつづきません。自分が記憶をなくす、という記憶すらなくしてしまいます。

その性質を悪用するひどい人間もこの世の中には多くいて現実に犯罪も発生しています。愛する人をどう守るべきか。

非常に難しい問題です。しかし透は真織の記憶障害を「利用」するのではなく、「尊重」することを思いつくのです。泉のようにいつも見守ってくれる人の存在は欠かせません。透は“我を消す”ことで真織を守ることにしました。真織を守る、という決断を真織にとって欠かせない存在の親友の泉に託したのです。

透は真織と向き合ってから人としてどんどん強くなっていきました。真織は透と向き合って本来持っていたであろう自信を取り戻したように。

透は真織の前から本当に消えてしまったけれど、真織が描いた透の肖像画がかつて真織にとって大切な人が“確かに”存在していた、という「希望」になるのです。







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