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祝杯のわけ

入学した高校がたまたまサッカーの強豪だった。

かつて何回も全国制覇を果たしていて、運動部にも、スポーツそのものにもなんの興味もなかったわたしでさえ、一応その事実だけは知っていた。

ただわたしの入った頃には、母校のサッカー部はもう全盛期を10年くらい過ぎてしまっていて、県内では新興勢力が台頭した結果、彼らはなかなか全国大会へと進めなくなっていたのである。

それでも他の部活がどこもパッとしなかったこともあって、まぁ母校で有力な運動部といえば、サッカーであると、これは在校生の共通認識だった。

余談だが後年、たまたま北朝鮮の子供達が、母国が世界に誇るスポーツはサッカーであると、みなで胸を張って語る映像を見たことがあって、なんかどこかで見たことがあるなと思ったが、まぁそれはそれ、これはこれである。

高校1年の時、これまた、たまたま新聞委員会というのに所属することになり、そこの取材ということで、県大会の初戦からサッカー部のことを追いかけたことがある。
週末ごとにあちこちの会場に試合を見にいき、驚いたことに母校は久々に快進撃を繰り広げた。

全国大会出場をかけての決勝戦。
相手は後に日本代表になったFWを擁する、新興勢力の雄である。

テレビ局まで取材にやってきて(出来過ぎた話だが、その相手FWの妹は、母校の、わたしのクラスにいた)インタビューを撮り出すし、いやぁ、盛り上がったのである。

                   

結論から言うと、試合には負けて、母校はその後長く続く低迷期に入っていく。

学校新聞には、わたしの「テレビの解説が相手よりだった」という恨みがましい記事が載り、まぁそのあとは何事もなく、一瞬盛り上がった校内のサッカー熱も、じき終了となった。

                   

ただ、わたしだけは違ったのである。
なんの関係もなかったのに、ただ記事のために試合を全部見たという、それだけのことで、わたしはサッカーシンパとなった。

どれだけシンパかというと、その後地元にできたJリーグチームに入れ込んで、45年過ぎた今日、この日もスタジアムに観戦に行ってしまうくらいには、シンパである。

でね、
あまりパッとしない贔屓のチームですが、今日は気持ちよく勝ちまして、帰りに連れ合いと美味しいお酒を飲みました。

という話です。はい、申し訳ありません。




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