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バカの馬鹿話

誰でも若い時はバカである
わたしも学生の時はバカだった。
今でもバカだが、幸いもう体力と気力がない。

あの頃はないのは金だけで、気力も体力も有り余っていた。
おまけに入学したのがバカの巣窟である美大であった。
バカがバカとして存在の許される稀有な場所だ。

「キンペン」を漢字にしろという、小学生でも解ける問題に堂々と「北京」と書いたやつでも、ただ無駄にデッサンが上手いという理由で入学できた、「大学」である。

悪貨は良貨を駆逐する。
多少マシだった連中も、日に日にバカになった。

それでも一応最高学府なので、バカも講義に出る。
美学という講座があって、ニーチェの「悲劇の誕生」なんぞを学んだ。

担当のM教授は語る。
全ての芸術はアポロン的な理知とディオニソス的な情動の側面を持つのであるぞ、うむうむ。
ディオニソスは、すなわちバッカス。
バッカスちゅうたら酒の神であるのだ、うむうむ。

さあ飲め、歌い踊れ、若い芸術学徒よ、てなわけで
ディオニソス的芸術を極めるため、バカたちはよく酒を飲んだ。

学祭では地元の二級酒「千人隊」がでた。
一級酒の「高尾錦」は高かった。
酔って寝込むと凍死するというので、裏山のパトロールが割り振られたが、本当にボロ切れのように寝ている奴がいて、叩き起こして歩いた。

夜がふけると、なぜかグラウンドの模擬店の真ん中にリングが作られる。
真夜中の大プロレス大会である。
リング実況に飛び入りの解説者がつく。
レスラーも飛び入りする。
「おっとここで、近隣住民から苦情が入った模様です。流石の午前2時、時まさに丑三つ時、ヤマモトさん、ここは音量を抑えてお送りいたします」ってなんじゃそりゃ。

真夜中の模擬店でラジオを聴いた。
私と年齢が同じくらいなら、ビートたけしの、「学祭に呼ばれたものの台風の直撃を受け、客が入らないのでここは出演料を出世払いにしてくれと土下座された」というネタをご存知の方も多いと思う。

が、まさにそこで実名を出されているその大学で、今年もバカがバカをやっているのだ。

その時土下座した人も知っているが、果たしてあのギャラは返済できたのだろうか。


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