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オフコース 「流れゆく時の中で」

この曲は、1982年9月29日にTBSで21時から放送されたオフコースのテレビ番組「NEXT」のサウンドトラック「NEXT SOUND TRACK」に収録されたものです。

この番組をもって5人オフコースとしての活動は完全に終わりました。

この「NEXT」という特別番組は、オフコースのメンバー自らが脚本・演出・監督・主演を手がけたもので、内容はオフコース解散後それぞれ独自に色々な仕事をしていたメンバーが中村敦夫演じる黒幕に拉致され再びコンサートを開催することを要求されるというものでした。

その年の6月30日の武道館公演を最後に公の場から消えたオフコースを見るため、私もテレビの前で固唾を飲んで番組を観たものです。

番組のBGMとして、オフコースの今までの曲が流されましたが、新曲としては鈴木さんの「流れゆく時の中で」と小田さんの「NEXTのテーマ」の2曲のみでした。

したがって必然的に鈴木さんのオフコースにおいての最後の作品が「流れゆく時の中で」となったわけです。

この曲はオフコースにおける最後の鈴木作品に相応しい極上のバラードに仕上がっています。鈴木さんは、この曲の制作時の心境を素直に歌い上げています。何のわだかまりも無く落ち着いた感情の中に熱い想いが込められているのが伝わってくる逸品と言えます。

前のアルバムの鈴木作品である「愛のゆくえ」と聴き比べてみると、それぞれの制作時の鈴木さんの心境が鮮明になってくる気がします。

時系列を確認すると

◎1982年6月30日 武道館公演の最終日(鈴木さんのオフコースにおける最後のステージ)

◎1982年7月1日 アルバム「I LOVE YOU」発売(『愛のゆくえ』収録)

◎1982年9月21日 サウンドトラック「NEXT」発売(「流れゆく時の中で」収録)

アルバム「I LOVE YOU」の制作は武道館公演の前だったでしょうから「愛のゆくえ」も武道館公演の前だったはず。

ゆっくり漕ぎ出したね 
小さな船だった
僕等はこの船を
泊めようとしている
もうやり直せない
二度とは戻れない
生きてゆくこと哀しいね哀しいね

愛のゆくえ

「愛のゆくえ」は最後のステージの武道館公演前ですから、オフコースの活動を終わらせようとしている時の心境が歌われています。

武道館公演後の「流れゆく時の中で」は

今僕は 流れゆく時の
静かな音を聞いてる
鮮やかな昨日と
何も見えない明日
心に思い比べながら

流れゆく時の中で

「鮮やかな昨日」とは正に6月30日の武道館公演の最終日に象徴されるオフコースでの音楽活動の日々ですね。

こうして鈴木作品を振り返ると、鈴木さんはその時の心境を素直に作品にしていると言えますね。そこから推察すると、鈴木さんは裏表のないストレートな性格なのかもしれませんね。だからこそオフコースを離れるしかなかったのでしょう。

ただ「愛のゆくえ」にしても「流れゆく時の中で」にしても目指す夢は一貫して変わっていません。

いつまでもこの夢を
追い続けてゆくのさ
くじけてもくじけても
果てない夢だから

愛のゆくえ

めざすものは
今も変わりはしない
信じるままに
僕は追いかけてゆくよ

流れゆく時の中で

この鈴木さんの目指す夢とは

歌うことは
自分をみつめてゆくこと
僕の勇気と涙確かめること

流れゆく時の中で

この熱いメッセージを遺して鈴木さんはオフコースを去っていきました。

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