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「あいつ」(伊勢正三が描く情景)その2 「夏この頃」

「あいつ」の後日譚と解釈されているのは「夏この頃」という曲です。私は不覚にもこの曲の存在を数ヶ月前まで知りませんでした。それはこの曲がかぐや姫が1974年に発表した「妹」というシングルのB面に収録されていたからです。もちろん「妹」は有名な曲で何度も聴いた事があるのですが、そのB面は知る機会がありませんでした。作詞が伊勢正三で作曲は山田つぐとです。

発表順から言うと、「夏この頃」が先で「あいつ」が後ですが、この曲を聴いた時「これは『あいつ』の続編だ」という感想を持ちました。

夏この頃

「あいつ」の季節が春で、「夏この頃」はタイトルにもあるように季節は夏で、「あいつ」の季節である春から数ヶ月経ったある家族の夏の風景を描いた曲です。

主人公とあいつは幼馴染みだったのかもしれません。あいつは主人公の家へよく出入りしていたようです。主人公の父とは、たまに将棋を指したりして、主人公の家族とは家族ぐるみの付き合いだった感じです。主人公の家族構成は両親、兄、妹という事がわかります。その家族全員があいつを家族の一人として受け入れていたのでしょう。

「あいつ」では山へ献花に行ったわけですが、そこには主人公とあいつの彼女以外に主人公の家族たちも付き添っていた感じがしてなりません。それは、この「夏この頃」が描く主人公一家とあいつとの関係からも考えられるからです。

「あいつ」に登場した彼女はあいつと付合い始めたばかりの感じです。主人公の家へも一度か二度くらい連れてきた程度だったのでしょう。

主人公の父からは

「お前にもこんな可愛い彼女が出来たのか。これからは旅に出るのも控えないといかんぞ」

なんて冷やかされたかもしれません。そんな矢先の冬山での遭難。あいつをめぐる主人公たちの情景を「あいつ」と「夏この頃」は見事に描ききっています。

さて、この2曲について気になることが1つあります。それは、ある歌、についてです。

あいつが遭難してから、主人公は妹があいつのことを好きだったと分かり、戸惑ったりします。それは次の歌詞から分かります。

「あいつの好きだった歌がかかっていたっけ。妹も部屋にこもりラジオ聞きながら泣いていた」

「あいつ」では、「それまでにきっとあいつの得意だった歌を覚えているから」という歌詞があります。

この2曲にでてくる「あいつの好きだった歌」と「あいつの得意だった歌」。一体どんな歌だったのだろう?「あいつ」と「夏この頃」の2曲を重ね合わせて初めてそのような疑問が湧いてきました。

色々と考えを巡らせているうちに、もしかしたらこれかなっていう歌を見つけました。それは…








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