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実写映画版「ゴールデンカムイ」に見るアイヌの伝統家屋の「薪の置き方」

北海道ロケが功を奏した
「ゴールデンカムイ」の映像美

去る1月19日より全国公開の映画版「ゴールデンカムイ」。

映画『ゴールデンカムイ』公式サイト (kamuy-movie.com)

早速見てまいりました。

オープニングはゴールデン、砂金がさらさら渦を成しアイヌ文様となり、北海道島、アイヌ語で言うヤウンモシㇼの形を象る。砂金が烈風で吹き飛ばされれば明治期の北海道の地図となり、一面の雪原を歩む杉元の姿と相成る。

周囲を覆うのはブラキストン線以北の植物相。
エゾ松にトドマツ、ミズナラにシラカンバと北海道南西部から道央部に特徴的な「針広混交林」を抱えた雪原での世界観。ここに1本でも松や杉の木が混じればいっぺんで「内地での撮影」が予感され興覚めものだが、監督の熱意が通じ北海道ロケが敢行され、乾燥した寒気が支配する北海道の冬がより冷徹に迫りくる。

そして役柄設定のすばらしさ、生命力が横溢しすぎる杉元はいうまでもなく、清楚と強靭な精神にあえて変顔のアシㇼパ、命の蝋燭ボリボリ齧って脳汁タラリの鶴見中尉、そしてあまりにも本物な天才脱獄囚・白石。無機質な顔立ちにトロリと黒目が光る二階堂兄弟はそろってサイコパス。意外なところでは白石と共に捕らわれるモブ的な入れ墨囚人・笹原勘次郎がマンガそのまま。

詳細なアイヌ文化考証
「鼻の下を撫でる」アイヌ女性の挨拶

その素晴らしさ、そして実写映像化に置いてくわえられたエッセンス
「フチの仕草 アイヌの礼儀作法」については以前、ネット記事でも書かせていただいた。

ゴールデンカムイの監修者である中川先生のインタビュー記事にもあるとおり、アイヌ女性の改まった席での礼儀作法。貴人に出会った際は、右手の人差し指で鼻の下をなでる。
その有様は、現在はウポポイがある北海道白老町で大正期に撮影された映像にも、実際に残されている。

白老地方特有の、細長く切った布によるアップリケで幾何学文様を描いた晴れ着「ルウンペ」を纏ったアイヌの男女。それぞれの性別ごとの挨拶を実演する。男性は両の手をすり合わせた上で掬い上げるように自分の顔に向ける。女性は人差し指で鼻の下を撫でる。

この場面が付け加えられた一件に置いては、ゴールデンカムイの監修者・中川裕先生のインタビューでも詳細に語られている。

だが私はそれに連なる屋内のシーンで、「さらなる精密な時代考証」を悟った。それは…

「囲炉裏の炎・薪の置き方」だ。

丁寧なアイヌ文化考証
それは「薪の置き方」

薪を燃やす。
焚き火と言えば、大抵はこんなイメージだろう。

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