自分を好きでいるためには途方もない努力が要る

恵まれた容姿も、個性も、能力もないので、自分で自分の存在を肯定するには努力が必要です。
美容整形で「まとも」に近付ける、その費用を工面する、整形したと周囲に悟らせない、「まとも」に近付いた容姿を生かすメイク・ヘアセット・言動をする、周囲と調和する、その他いろいろ。

そしてそれらは休みなく終わりなく継続しなければならない努力です。
生まれながらに「まとも」以上の人や、「まとも」という観念に囚われない自己肯定感を持つ人にはない精神的負荷です。

常日頃から「綺麗な人」「清潔な人」「賢い人」「若い人」「良いお母さん」「良い奥さん」などいろいろなフィルターを掛けられたい欲だけが先行するのは、コンプレックスの強さが原因だと思います。
それなりに努力の甲斐はあって、平均より目立つ小綺麗な人、とは思われているようです。年齢より若く見える、というのも言われ慣れました。

とはいえ、世の中は無自覚な凶器に満ちているので、他人の何気ない言葉で「あ、私もう頑張れないかも」と思います。

夫に風呂場で背中の垢すりをしてもらっている時、夫がぽつりと「運動しない人の背中だな」と言いました。
「若いときは皆同じなんだけど・・・」

夫は優しい人なので、けっして「年を取ったから背中に運動不足が表れている」とは言いません。でも、そう思っていることは十分に伝わりました。

実際私は運動が嫌いで、運動で痩せるよりは飢え死にするほうがマシだと思っています。
というより体質的に瘦せ型なので、痩せる必要に迫られたことがなく、運動=痩せるため という思考によって運動=不要 と考えています。

だから背中に年齢が表れているのは事実なのでしょう。でもそれを夫から言われる覚悟はしていませんでした。夫も悪気はないはずです。
でも、普段からどこか容姿を褒めてくれるわけでもない夫が、目について感想を述べたのがそこか・・・と思うと、なんだかやるせなかったです。
顔つきや肌、首、手など年齢の出るところに気を遣って手入れして、年齢は夫のほうが下だけど、絶対に夫より若々しくいる自信はあるのですが、年を重ねることに抵抗のない夫と何かを争っても意味がありません。

若いときに若さをお金に換えて生きてきた私には、年を取ることは正しく商品価値がなくなることです。
フェミが発狂しそうな思考ですが、お金に換えられる価値が自分にあるということだけが自己肯定、存在理由になる女性がこの世にはたくさんいます。
その換金価値が頭を使う能力なら問題ないのですが、若さ、美しさ、快楽のほうがより簡単に売れるし、楽に生きようとすることは人間の社会性と相反するものではないと思うので、買う男も売る女も悪ではないと思います。

商品として売れる自分だけは好きでいられる、というのが私の問題点です。
良い妻、良い母に見られたいという欲求以上に「男性にとっての性的対象となる自分でありたい」という欲求が強いということです。

妻や母は年齢とともに「良い」の基準は変化していき、時間とともに役割の比重は軽くなっていく、と思います。
でも、男性に売れる女性性は、「若さ」か「美しさ」かのどちらかです。
悲しいことに、私はもう若くないし、どう足掻いても美しくなれないと悟るときがあります。
年を重ねるごとに容姿を褒められる機会は減り、実際鏡で見る自分は疲れていて顔色も悪い、だんだんと化粧をしても隠せない加齢を感じています。

誰でも年を取るし、それは悪いことではないのでしょうが、私のような「他人に褒められる」「他人にとって価値がある」自分でなければ自分をわずかでも好きでいることが難しい人間にとっては、老いはただただ怖いものです。

いくつになっても男性は「何歳までの女なら抱ける」「美人なら何歳でも抱ける」といった下衆な物差しを持っています。
このような物差しの範囲内に収まる自分でいられれば、少しは自分が好きと感じられる。
でも当然、その範囲から逸脱する日が来る。そう思うとやりきれない気持ちがします。

そして、私の最大の問題点が、そういう精神構造から脱却したいとは思っていないことです。
周囲の目を気にしない、絶対評価の自己肯定ができる人になりたい!とは、これっぽっちも思っていません。そんな奴は馬鹿だと思っています。私の夫がそれです。
夫が私を褒めなくても、綺麗だと思っていなくても、私を愛しているのはわかります。それは夫が上記のような馬鹿だからです。

私も私で救えない馬鹿なのですが、私が望むのは「賞味期限が過ぎたらそこで死ねること」です。女性性を放棄してママ業をしたくはないし、男に媚びないオバサンにもなりたくない。

だから今は努力を続けます。それしか自分を肯定できる可能性がないので。
無意識に私をオバサンと決めつける夫や、私の話を軽く笑い話にしないと気が済まない義母などに傷付きながらも、死ぬのも簡単ではないので。
食べ過ぎないし、少し運動するし、スキンケアも手を抜かないし、身体も売ります。そうやって「役目のある自分」を実感して何とか生きます。

だからどうか女を買う男性は、言い値を値切らないでやってください。
マッチしないなら無視でいいです。
「〇〇円じゃだめですか?」は、自己価値を値切られるのと同義です。せめて黙って去ってね。


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