イベントドリブン投資について

今回はイベントドリブン投資(またはスペシャルシチュエーションと呼ばれることもある)について少し語りたいと思います。今回は大きく分けて2種類の方法について説明しています。


きっかけ

グリーンブラッド投資法という本が好きで、今でも時々読み返しています。現在、日本と米国に投資をしておりますが(少額で中国)、この本が好きになってしまったせいかイベントドリブン的な投資を好んでいます。今回はどんな投資を行っているのか、少し整理しながら書き連ねたいと思います。

買収アービトラージ

米国市場では度々機会を見かけますが、日本市場でも最近見かけるようになりました。日本市場においては、近年のアクティビストの活躍により、買収等が増えてきて、今後、買収アービトラージなどが活発にできそうだなという印象を持っています。ある企業(買収者)が買収したい被買収企業(買収される企業)を買収すると公表したとしても、様々な手続などにより、買収が完了するまで時間が幾ばくかかかります。その間、例えば米国でよくある、FTC(米連邦取引委員会)などが割り込んできて買収を阻止するといった、何らかの理由で買収が頓挫する可能性もゼロではありません。日本市場ではあまりこのような事例がなかったため、買収が公表されると買収予定価格と被買収企業の株価の価格差(ディール・スプレッドなどと呼ばれる)がほとんどない状態でしたが、最近では久々に敵対的な買収がでてきたり、アクティビストなど「物言う株主」等によって買収について異議を申し立てるなど、買収が必ずしも成功する環境だと言い難い状況になりつつあると感じています。市場もその雰囲気を感じ取っているのか、スプレッドがみられるようになってきました。個人的にもワクワクしております。
基本的には被買収者をロング、買収者をショート(空売り)する方法が一般的です。この方法に関してもやり方は各人違っていて、数%しか存在しないディールスプレッドをレバレッジをかけて投資する投資家もいれば、大きなィールスプレッドが開いている案件しか投資しない投資家もいるそうです(後者は私)。このディールの基本的な考え方として、スプレッドの大きさである程度市場が見込んでいる買収案件成立の確率が見えてきます。スプレッド小さいと成立する可能性が高くなり、逆にスプレッドが大きいほど買収成立の見込みが低いと市場は考えていると見るのが一般的です。そのため、前者の数%のスプレッドの場合はレバレッジをかけても買収が成立する可能性が100%に近いため、問題ない?とみる投資家もいます。数%のリターンは小さく見えるかもしれませんが、例えば、2カ月で2%のリターンを得ることができれば、年率換算で考えると12%のリターンを得たことになり、そんなに小さいリターンではありません。ただし、買収が万一不成立に終わった場合は株価が買収提案前の株価(またはそれ以下の株価)に戻る可能性が非常に高いため、レバレッジをかけてしまうと痛い目にあう可能性ももちろんあります。そのため、投資家によってはレバレッジを含んでもPFの5%以下のポジションしかとらないというような自分のルールを決めている方もいるようです。一方、後者のやり方はリターンはそこそこ大きいものの、そもそも投資機会が少ないです。また、20%程度のスプレッドが開いていることは、市場が買収成立に懐疑的にみている可能性があります¹。そのため、前者の方法よりも、買収成立の可能性を吟味しないと損失を被る可能性が存在します。ただ、上手くいくと短期(中期)的にそこそこなリターンを得られることもあり得ます。

事業分離

米国企業ではよく見られる光景です。誰でも知っているような大企業、例えば、再建中のGE然り、今年は3Mといった大企業が事業分離を行う予定です。グリーンブラッドの本では、分割されるほど企業に嫌われた企業を探せと熱く語っておりますが、私もこの辺りの感覚に関しては賛同しております。個人的に特に興味があるのが、切り離された企業がパッとしないような事業だった場合です。事業分離が行われる過程で、親会社の既存株主に分割企業の株式が割り当てられる場合があります。そうなると、既存株主はパッとしない事業はいらないので、分割された企業の株式が一時的に過度に売られる可能性が出てきます。そういった機会を狙うことがあります。また、親会社にとっては資本構成を変えるチャンスでもあるので、例えば、分割した企業に負債または現金等を極端に配分する場合があります。理論的には、基本的に資本構成の変化では企業価値は変わりませんが、市場の理解・評価は変化する場合がありますので、そのような機会を掴みに行くこともあります。

その他

倒産した(しかけている)企業に投資することも時々あります。例えば、シフィック・ガス・アンド・エレクトリックは山火事の原因作ったとして多額の損害賠償等を請求され、米連邦破産法11条(チャプターイレブン)を2018年に申請しました。このケースは特殊なところがあって、破産法申請後も株式は上場を維持しました。このケースでは、会社が出した再建案と、債権者側(確かエリオット・マネジメント)の再建案がどちらが採択されるか争っていました。債権者側の案の方が既存株主等に厳しく、債権者側の案が通れば100%減資に近いような内容だったと記憶しています。結果としては、会社側の案が採択されて、既存の株式の価値が維持された結果になりました。結果が出るまで、株価も大きく揺れたので、非常に安い価格で株式を買うことができればそれなりの成果が出せたディールだったと思います。

他にも色々あると思いますが、大まかに説明すると以上のようになります。


1 ヘッジファンドのアクティブ戦略のという本では、「最終的に失敗するディールはより大きなディールスプレッドを持つ傾向があり、約20%から始まる」と明記されています。個人的な感覚もこの程度です。


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