篠原雅武(masatake_shinohara)

哲学などを研究しています。現時点での肩書は、京都大学大学院総合生存学館特定准教授。主な…

篠原雅武(masatake_shinohara)

哲学などを研究しています。現時点での肩書は、京都大学大学院総合生存学館特定准教授。主な著書『生きられたニュータウン』(青土社)、『複数性のエコロジー』(以文社)、『人新世の哲学』(人文書院)、『人間以後の哲学』(講談社選書メチエ)など。ティモシー・モートンの翻訳なども手がけた。

最近の記事

ティモシー・モートンの「自然なきエコロジー」についての文章

2021年9月に某出版社より「『文学理論の名著50』執筆のお願い」というメールがあってそれで原稿を書いたのですが、いつの間にか企画そのものが消滅したそうで、原稿も自動的にボツになりました。 それをそのままここに載せておきます。 ティモシー・モートン『自然なきエコロジー』 篠原雅武 Ecology without Nature: Rethinking Environmental Aesthetics, Cambridge, MA: Harvard University P

    • 人新世という言葉を否決したからといってその現実が消えることはない。

      先ほど、日経新聞に掲載されていた、「地質時代「人新世」案、学会否決 社会で浸透も議論に幕」という記事を読んだ。 ということなのだが、それはつまり、地質学者の世界において否決された、ということである。じつをいうと、人新世をめぐっては、たとえば地球システム科学者によっても提起されていて、2018年には、「ホットハウスアース」仮説を提唱する論文が出された。日本語訳も出ているが、その冒頭にはこう書かれている。 つまり、温暖化の観点から、今が人新世に入りつつあるということを主張する

      • 大学で講義した

        今日は京都大学で講義をした。新入生向けに開講されるILASセミナーというのがあって、その枠で講義した。大学では、どういうわけか院生相手にこれまでしてきたのだが、学部生相手に授業したのは久々で、緊張した。 講義名は、「人新世の「人間の条件」を考える」というもので、概要は下記のとおりである。 どれくらい受講生が来るのか心配だったが、わりと来てくれた。文学部、法学部、経済学部、総合人間学部、農学部など、多彩である。よく考えてみると、合格発表からまだ一ヶ月程度で、つまり、受験勉強

        • 2020年あたりから考えていること(what does it mean to be human?)

          思えば、2012年に、ティモシー・モートンの本を読む中、エコロジカルな思考(ただしそれは、post-anthropocentricな観点を見出すことを通じて、人為の限界を考えることであって、そのかぎりでは、人間を中心とするのではない世界像を描き出し、そのもとで人間とは何かを考えること)の大切さに気づき、必死でフォローしてきたのだが、自分の言うエコロジカルなものはいわゆる自然保護とは違うものだということを(日本国内で)主張するのに疲れてしまって、そろそろ限界かと考えるようになっ

        ティモシー・モートンの「自然なきエコロジー」についての文章

          高校生(受験生)から大学生になること。私の場合。

          みなさまこんにちは。篠原雅武と申します。わりと適当に始めたnoteですが、読んでくれた人もいたみたいで、とても嬉しく思います。 気づいたら四月になりまして、新学期になり、京都の岡崎公園周辺は大学生で溢れています。3月半ばから末にかけては、みやこめっせ周辺には卒業する学生さんがたくさんいて、近所のスターバックスも学生さんやその親御さんで溢れかえっていたのですが、その一週間後には新入生が入学式をするというわけで、なんとも目まぐるしいです。 大学は、文系と理系に分かれて入試をす

          高校生(受験生)から大学生になること。私の場合。

          自己紹介など

          はじめまして。篠原雅武と申します。 1975年生まれ。神奈川県出身。京都大学総合人間学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。著書『複数性のエコロジー』『人新世の哲学』『人間以後の哲学』など7冊刊行。翻訳書として『自然なきエコロジー』(ティモシー・モートン著)など4冊刊行。 学問研究を生業にしています。哲学を勉強し、写真や建築にも関心をもって勉強し、本を書いたり翻訳もしています。哲学的な問いをたて、それをめぐって考え、文章を書くというのが基本です。自分の問い

          2023年8月24日に釜山で行われた韓国教育思想学会夏学術大会で話したこと

          「人新世の哲学」「人間以後の哲学」がいずれも韓国語に訳されて、そのこともあって、韓国教育思想学会より講演の依頼があり、読み上げ原稿をつくった。当日は僕が日本語で読み上げたものを通訳者が韓国語に翻訳してくれたのだが、この原稿も韓国語に翻訳され、当日の配布物のなかに収録されていた。日本では誰も知らないことが、韓国で起きていたということなのだが、この文章を埋もれさせておくのもどうかと思い、ここで公開することにした。(篠原雅武) 継続中の問題としての「人新世」をめぐって 1

          2023年8月24日に釜山で行われた韓国教育思想学会夏学術大会で話したこと