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マキハラ

雲一つない空に似合わずジュネーブの街は火の海と化す。

巨大ヒーロは倒され地球転覆を狙った地球外生命隊レンコフ星人の作り上げた宇宙怪獣チョップスティックがにじりにじりと国際連合本部へ近づく。

戦車を走らせるのが馬鹿馬鹿しくなるほどの敗北のなか特殊団員マキハラの目だけは死んでいなかった。

「マキハラくん。世界を救う覚悟はあるかね?」

掠れながらも妙に伸びてくる声に振り返ると
『新兵器SYIY-mkⅡ』を持ったチェ博士が燃えるような眼差しで立っていた。

「今日開発された試作品だ。これならチョップスティックの息の根を止めることが出来る。私は君のその腕に、その眼に、その憎しみに全てをかけてみようと思う。やってくれるか?」

マキハラは頷きもせずジッとチェ博士を見つめた
「はやくその兵器をよこせ」そう言わんばかりの表情にチェ博士は笑った。絶望の淵に立たされていることも忘れて。

「試作品は1発しか無い。慎重に狙いを定めるんだ。地球の命運は君にかかっている」

『新兵器SYIY-mkⅡ』をチェ博士から
受け取るや否やマキハラは持っていたショットガンに詰め込みぶっ放した。この間わずか0.2秒。


思えばマキハラはそういう奴だった。

鯉にあげる餌を300円で買うや否や袋の端を持ち近くの池にブッ放すような奴だった。鯉が龍のように連なり餌に群がっていた。

捨て猫を拾うや否や『スタローン』と名付けるような奴だった。『捨て猫』だった時と『スタローン』になった時の境目が全く見えないような奴だった。

フルグラに牛乳をかけるや否や一気に食い切るような奴だった。終盤のシナシナ感など知る由も無いような奴だった。

小説を読み切るや否やAmazonレビューを書くような奴だった。読後感など屁の類だと思うような奴だった。

ファミレスで席に着くや否や呼び出しボタンを押すような奴だった。高校生クイズの勢いで押すような奴だった。

洗い流さないトリートメントを塗るや否や洗い流すような奴だった。これに関しては何のメタファーなのかわかりかねるような奴だった。

オロナミンCをあけるや否や風呂に入るような奴だった。炭酸が抜けていくのもつゆ知らずな奴だった。

長くなった髪の毛をバッサリと切り落とすや否や
昔の江口洋介の写真集を眺めるような奴だった。
苦虫を噛み潰すような顔を平然とやってのける奴だった。

捨て猫を拾うや否や『スタローン』と名付けるような奴だった。夏目漱石も腰を抜かすような奴だった、

みんなで登山に行く計画を立てるや否や「ヤッホー」と大声で叫ぶような奴だった。もちろん帰ってくることは無かった。

伝説のポケモンを捕まえるや否や『ひでんワザ』を覚えさせるような奴だった。技スペースの圧迫を味付けと感じる奴だった。

『イノベーション』という言葉を知るや否や会話に散りばめさせるような奴だった。
「ローションのイノベーションが起きたことによってマスターベーションのイノベーションが引き起こされた。ペペノベーションマスターイノベーション」と言ってきて喉ちんこをイガイガさせてるくるような奴だった。

「もう恋なんてしない」と言うや否や「なんて言わないよ絶対」と言ってのける奴だった。なんか知らんけど170万枚のミリオンセラーを記録するような奴だった。

捨て猫を拾うや否や『スタローン』と名付けるような奴だった。実はこれが一番衝撃的だった。



『新兵器SYIY-mkⅡ』はチョップスティックの胸元を貫き爆発。
チョップスティックは肉片と化した。

「よくやったマキハラ!これで地球の未来は救われたぞ!」

マキハラはチョップスティックの肉片でバーベキューをしていた。

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