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監査効率化に関する提言 ~デジタル監査で本当に効率化は進む?~

「監査の効率化」

会計業界に関わるもの全員の願いです。監査法人も現場の監査チームも同じ目標に向かって、あれこれと試行錯誤を進めています。

同じ目線を持っているはず。。。なのですが、ここ数年は法人(グローバル含む)としての取り組みや施策は、監査現場レベルで好意的に受け入れられていないものが多いように感じます。

今回の記事では、「監査効率化」の観点から、昨今感じる監査業界のあれこれをなるべく簡潔に綴っていきたいと思います。



AI・デジタル監査で監査効率化???

期末監査本格化に向けて、各監査チームで準備が進められている頃かと思います。

法人からも様々なアナウンスが出され、中には「期末監査のための効率化案」や「知っておくべきTips集」などと気を引く内容があります。
しかし、期待に胸を膨らませてリンクを開くと、そこには、「新規デジタルツールの紹介!」や「デジタル監査に向けた施策!」、「逆に工数が増えてしまいそうな謎ルールの強制適用」などが並び、うんざりしてしまうことも。。。

デジタル監査の導入

デジタルツールの導入としては、

  • Alteryx等のツールを使ってデータ準備を自動化、工数削減に寄与するもの

  • 外部ツールや法人開発ツールを使い、仕訳や明細データの高度な分析を実現したり、データをビジュアル化したりすることで、手作業で行っていた作業の代替や、リスク評価の高度化に役立てるもの

などが最近の主なトレンドでしょうか。

もちろん、これらの取り組みの必要性は感じており、効率化のみならず、監査チームの手続高度化やクライアントへのアピールの観点で一定の意義があると思います。

しかし、監査チームの効率化を心から考えるうえでは、もっと根本的な議論が必要なのではないでしょうか。

AIテクノロジーで変わる監査

最近では、AI監査とも表され、監査業界でも様々な準備が進んでいます。
ここ一年の記事でも、下記のEYのリアルタイム監査やPWCでの証憑突合自動化など、ワクワクするような内容が発表されています。

出典: DX白書2023 | 書籍・刊行物 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構、p283
出典: PWC 『監査の変革 2024年版 どのようにAIが会計監査を変えるのか』

しかし、根本に立ち返ったとき、果たしてこれらの改革が、現場の監査チーム作業を抜本的に削減するものになるのかは正直疑問です。
試しに、上記の証憑突合の自動化を例に取ると、実際に監査チームで突合作業自体に要している時間はどれほどでしょうか


AIとデジタル監査で効率化。それって本当?

監査スタッフが突合作業に時間を要してしまっている場合、実際に突合する作業に時間を要してしまっているというよりも、下記に時間を要している場合が多いと思います。

  • 「大量」のサンプル抽出 >> 依頼 >> 提出資料の取り纏め

  • 解読が難しい証跡(契約書・請求書)の体系理解

  • 監査手続に沿って確認すべきポイントの洗い出し・理解

結局は、「うーん、、、」と読み込んだり悩みこむ時間に作業時間を取られる場合が多い気がします。

この「うーん。。」と期末に悩みこんでしまうことを防ぐ取り組みこそ、監査法人・現場レベルで、それぞれ監査時間削減に取り組んでいくべきエリアだと考えています。

また、AIでの突合作業の代替自体も、結果的に責任を負うのは作業者(監査チーム)であり、下手に一部作業をAIに代替されることにより、監査チーム内で十分なナレッジが溜まらず、ブラックボックス化する部分が増えてしまう気がします。(ブラックボックス化する部分が増えないということは、つまりそれは監査チームの作業時間を抜本的には減らせていないことを意味する、ある種のパラドックスにもなっている気さえしてきました。)


今できる効率化とは??

監査チーム全体で、実際に時間がかかっている場面は一体どんな場面なのでしょうか。
(「監査の生産性向上」という観点では、間接時間の削減などの、もっと根本的な部分から議論ができそうですが、ここでは直接作業時間(加工時間+段取時間)に絞って議論します。)

ここ数年の監査業務を振り返ると、一番現場で時間を要してしまっている作業、それは可読性の低い会社資料や前期調書の理解ではないでしょうか。
上記で言えば、「うーん。。」と資料や監査調書を眺めてしまっている時間です。

会社の取引理解を通して解読がより進むようになる資料もあるかもしれませんが、複雑で解読不能なExcelワークシート、ヘッダーが解読不能な明細を提出され、それらの数字や記載とにらめっこしながら貴重な監査時間を使ってしまうことが多々発生しているのが現状だと思います。
頻繁にクライアントを捕まえて質問することも叶わず、誰しも少なからずこのような経験はあるはずです。

このような経験が「監査人を成長させる」という議論はここでは置いておいて、単純にこのような時間を削減しようと考えるうえでも、様々なやりようがあるように思います。


監査チームとして

  • 適切なナレッジの蓄積(調書内・外に引き継ぎメモを残す運用を徹底)

  • 共有フォルダに理解までのやり取りや流れを残すように徹底

  • 期中に一部サンプルを突合し、期末前にナレッジを貯めておく

  • 分担を期末前の早めに策定して、期末前に適切な引き継ぎの時間を用意

  • 不明点をすぐに聞けるようなオープンコミュニケーションを醸成

監査法人として

  • 上記の監査チームの運営事例を具体的に実践可能な内容で共有する

  • 業界毎・調整内容事に、参照できるナレッジを適時に公表する(監査チームに属人化せずに、法人全体で共有できるものはする)

クライアントとの協力を通して

  • 業界毎・調整内容毎に、標準フォーマットを公表する
    (EYのクライアントには、なるべくその形式に習ってもらう。そうすることでお互いに資料を説明・理解しあう時間の削減につながる)


おわりに

いかがでしたでしょうか。

上記は直接作業時間に限った中での効率化案について、思いつく限り(可能か不可能かは置いておいて)リストアップしてみました。
監査の効率化や生産性向上という観点では、間接時間の削減や他にも様々な効率化案がありそうです。(次回以降の記事で自由に書いてみようと思います。)

私の硬い頭では、ナレッジの共有や引き継ぎなどと、当たり前の事を並べるにとどまりましたが、是非皆様のお持ちのアイデアがあれば、私個人としてもとても勉強になりますので、お聞かせいただければ幸いです。


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SHIRAKI 【公認会計士】
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