手先の魔法と・・・ 人生のターニングポイントに出合う人
『髪を切りたいなぁ〜
前みたいに、パーマをかけて軽くしたい』
そう思っていたら末娘が、気前よく美容院代をプレゼントしてくれた。
「せっかくだからシックに行ってくれば」(シックのカットはとても上手)と言われて、そうすることにした。
コロナ禍騒動で、マスクをしたままカットするのにもうんざりして、ここ数年は美容院に行くことをやめてしまっていた。前髪も自分でカットしていた。
シックに行くのは何年ぶりだろう。
朝10時で予約。
久しぶり過ぎて、道を間違えて反対側に曲がってしまったので、予約の5分過ぎに到着。
髪型のチェックで大きな鏡の前に座る…美容師さんが
「実は、、。来年の一月で店を占めるんですよ。」
「えっ」
「だから、(このタイミングで私が来たことに)びっくりして…」
そう、私はここの美容師さんの魔法の手で、かつて勇気をもらったのだ。
下に貼った記事に出てくる美容師さんが、この人だ。
その昔、元夫の投げた鍋で大きく腫れた目のあたりの膨らみはひいたけれども、右目の瞼が、赤紫の濃いアイシャドウを塗ったようになっていた私に、理由は聞かずただ、「素敵な、似合う髪型にしましょうね」と言い爽やかにカットしてくれたのが、その美容師さんだ。
当時はかなりイケメンで爽やかな青年って感じだった。
後から知ったのだが一時期はバンドも組んでいたらしい。
ハサミ捌きも素晴らしく、「これが私?」っていうほどに私の顔に似合う髪型にしてくれた。
鏡の中の自分をみて、なんだか力が湧いてきて(単純だなぁ)、なんだか違う自分になれそうな気がして、その足でスポーツジムの会員登録をしてきたのだ。
当時は長く貶され、怯えてオドオドと暮らす中、かなり精神的に不安定だったと思う。
そんな私がその日を境に、新たな道を見つけ出していくのだが・・
私が離婚への道を歩くのと並行するように、美容師さんは独立して店を出した。応援したい気持ちもあり、通うようになった。
赤ちゃん連れでも大丈夫なように遊ばせるスペースもある美容室を奥さんと一緒に初め、美容師さんの息子さん達も、よくそこで遊んでいた。
たまたま一時期私が働いていた派遣先の社員の方が、美容師さんの叔父さんだったことがあり、その美容師さんは海外でも修行をしていたと聞いたことがある。
本当にカットの腕は凄く、何処よりも綺麗な仕上がりにしてくれる。ちょっと頑固なところもあり、変な注文をしても「それはやらない方がいい」とハッキリしていて職人気質だったりもする。
パーマ液なども首筋や頭皮にかからないよう丁寧で、たまに職場の近くとか、家の近くの他の美容院に行ってしまうこともあるのだが、もれなく首が被れたり、似合わない髪型になってしまってがっかりするのだが、その美容師さんの所では安心して任せられた。髪の癖も私よりわかってくれていたりして、髪形もお任せで良くお願いしたものだ。
技術は勿論の事、センスがあるのだと思う。
顔の形や表情などから似合うものを感じ取り、それを表現できる手業。
私をはじめ、息子も娘たちも何回かは通わせてもらっている。
オープンして19年
私が離婚してから20年・・・
離婚前の大変な時期から、離婚後の大変な時期、そして少し落ち着いて生活できはじめた頃や、講師をするようになって、講座の前に髪型を整えてもらったり…私の激動の日々とお店での会話や、その時々のエピソードなど
いろいろなことを思い出して少し涙ぐんでしまった。
死ぬわけじゃないし、同じ街だからまた何処かで会うかもしれないですよ、なんて言われたものの、もう髪を切ってもらいながらの雑談の時間はないのだ。
やはりコロナ禍を境に経営が厳しくなってしまったようだ。
わたしも足が遠くなっていたので…ここ数年の間に入院されたりしていたことも知らなくて、それだけ来てなかったんだなと。
ずっとそこにあると思って安心していたけれど、ずっとあり続けるものなんてないのだなと改めて思う。
ちょっとしんみりしてしまったが、店仕舞い前にフッと立ち寄ったことに、縁を感じる。
息子さんたちも社会人になっているとのことで、大工でもやろうかなと思っていると話していたが・・・
昔、私と一緒に美容院に行った娘が、待ち時間に遊び相手をしたこともあるあの兄弟が社会人とは、月日の流れを実感した。
人との縁・・・それぞれのターニングポイントに出合う人。
いろいろな瞬間のいろいろな偶然に、勇気づけられたり、たすけられたりして今の私がいる。
今・・・私にとっても新たな分岐点なのかもしれない。
久々にパーマをかけたし・・気分も新たにまた進み始めよう。
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