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2024年3月12日(火)《GB》

《物価が上がるのは仕方がない。貧乏人がそれに対抗するのは買わないの一択。買えるものがなくなる》

【下通りウエスト:富田 正継・前田 綺羅・原田 祐一・大塚 陽菜】
「インフレー!」
「正継、どうした急に」
 店内のテーブルに座り、注文用のタブレットを操作していた富田 正継はまるでIKKOさんのモノマネをしたかのようなテンションで叫び、それを聞いた原田 祐一が突っ込みを入れた。ここは下通りにある『ウエスト』。14時を少し過ぎたぐらいの時間であるが、店内は割と賑わっている感じだ。本日午前中は普通に鍛錬場で鍛錬を行っていた4人であるが、明後日のホワイトデーのお返しを購入するために、一緒に街に出てきているのである。この、ホワイトデーのお返しを一緒に買いに行くことは毎年行われているイベントのようなものであり、前田 綺羅と大塚 陽菜からすれば、あまり貰っても嬉しくないものを貰うリスクがなくなるし、富田や原田からすれば、何を渡すか悩む必要がなくなり、また渡した物によっては不満をぶつけられるという危険を未然に防いでくれるのである。このようにWINWINのイベントなので、毎年誰が言うわけでもなく当たり前のように行っているのである。今年はホワイトデーのお返しをサクラマチで物色し、前田と大塚が満足するものを購入することができた。本日は街に出てきて、先に買い物を行なっていたので、昼ごはんをまだ食べていなかった。そこで何か食べようという話になり、何を食べるかで悩んだ挙句、富田の意見が通って下通りの『ウエスト』に来たのである。いつものように店内に入店し、入り口から見て右側のテーブルに座り、タブレットを操作しながら先ほどの声を発したのである。
「こんなところにまでインフレが忍び寄っているとは」
 軽くため息をつきながら富田が言葉を漏らす。富田はこの下通り『ウエスト』が大好きで、高校生の頃から良く食べに来ていた。食べるメニューは昔はかき揚げそばが多かったが、いつの頃からか月見そば一択になっている。その月見そばであるが、富田がここに来だした頃は480円であり、数年前にそれが550円に値上げしている。そして今タブレットに表示されている金額は640円になっているのである。
「90円かー、意外と上がってるわね」
「インフレっていうか物価が上がってる」
 値上げ幅を聞いて前田が言葉を発し、それに大塚も感想を述べる。
「とはいえ640円でも高いとは思わんけどね」
 こう口にした富田は640円の月見そばを注文し、タブレットを原田に渡したのである。

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