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2024年2月29日(木)《GB》

《歌詞を間違えていることは良くあることです。何となくで口ずさんでたりすると全く違うことがある》
【ウエスト:富田 正継・新熊 芽衣奈】
「うわ、まじか」
「どうしたのまさくん」
 注文した料理を待っている間に何やら急に叫び声を上げた富田 正継に、少し驚いた感じで新熊 芽衣奈が声をかけた。ここは下通りにあるそば屋『ウエスト』。お昼のピークは過ぎたようであり、店内は多少落ち着いた雰囲気である。本日午前中は別々の部隊で探索を行っていた富田と新熊だったが、探索を終えた後で合流し、一緒に街に出てきたのである。お昼ご飯をどこで食べるかを話し合った結果、富田の意見が通り、行きつけの『ウエスト』でそばを食べることにした。『ウエスト』は九州一円に店舗展開しているうどん屋であり、ドライブなどに行くと至るとこで看板を見かける。本来はうどん屋なのであるが、ここ下通り店は蕎麦を全面に推している。以前は本当に蕎麦だけだったが、数年前からうどんも提供するようになっている。おそらく以前は銀座通りにうどんメインの『ウエスト』があり、そこが閉店したので、こちらでもうどんを出すようになったと考えられる。また、道を挟んで斜め前には『資さんうどん』がある。『ウエスト』は蕎麦屋で『資産さんうどん』はうどん屋である。だが『ウエスト』にはうどんがあるし、『資さんうどん』には蕎麦がある。富田の考えでは目の前にうどん屋があるのに蕎麦屋でうどんを食べることは理解に苦しむのだが、『ウエスト』でうどんを注文する人は意外といるのである。
「いやー、今まで歌詞を勘違いしていた」
 この富田の言葉を聞いて、新熊は店内に流れるBGMに耳を傾ける。その曲は良く有線で流れている曲なので聴いたことはあるが、なんの曲かは良く知らない。
「ウォンチューオーレって人名か何かの固有名詞だと思ってたら、俺やん。今までずっと間違えてた」
 店内に流れている曲は南 佳孝さんの“スローなブギにしてくれ”という曲であり、“ウォンチュー俺の肩を抱きしめてくれ”という歌詞があるのだ。その俺の部分を今まで俺と認識できていなかったのだが、今日たまたまその部分が俺だとはっきり認識できたのである。
「まあそんなこともあるよ」
 大した話ではなかったので安心した新熊は笑顔を浮かべ、先ほど店員が持ってきたごぼう天蕎麦に箸を伸ばすのであった。

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