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かつて「空きがないから」支援級の担任になった私が学校現場に思うこと

教員になり、支援級の担任になり、7年が経ちました。客観的に見たら、もうすっかり特別支援教育のベテランにみえるでしょ?

でも、全然そんなことはありません。
ぶっちゃけ、私は大学で一切特別支援教育について学ばなかった、超ド素人です。

そんなド素人な私が支援級の担任になった経緯と続けてきた理由についてお話できたらなと思います。

1.採用通知の電話での衝撃的な一言

時をさかのぼること7年前、新卒で教員採用試験に一発合格した私は、ルンルンな気持ちで残りの音大生活を過していました。

教員採用試験の合格者は、大体2月から3月辺りに、どの校種や自治体に赴任することになるのかを告げられます。私は音楽科の枠で受験していたので、当然音楽科の先生をやるんだろうなと思っていました。

しかし、教育委員会から「特別支援学級に赴任してください。」と電話で告げられました。

しかも、その内容が衝撃的。
「通常級に空きがないので、特別支援でお願いします。」

…は??????
空きがないからって、いくらなんでも特別支援バカにしすぎじゃない!!??
しかも大学で音楽しか勉強してないから、障害の知識ゼロなんですけど!

戸惑いを隠せない私は、思わず聞き返しました!
「あの、私、特別支援についての専門性、全くないんですけど…」

「あ〜、それは、実際に働きながら学ぶ感じですね。」

ん?????働きながら学ぶ!!??
発達心理学とか、そういうのをしっかり勉強しないと子どもとちゃんと向き合えないのに、何を言ってるんだ!!??

以上、教育委員会からの電話に対する率直な感想でした。
(ご家族に特別支援学級の関係者がいる方々、不快にさせる表現があるかもしれません。でも、これが現実なんです。申し訳ございません…。)

2.初任校に赴任して

初めて赴任した学校では、通級指導学級というものの担当に。

教育委員会の人のお言葉通り、特別支援教育とはなんぞやと言う勉強は実際に働き始めてからのスタートでした。

初任者研修は一応あるものの、教育課程についてとか学校組織についての話とかばっかりで、実際の支援や授業に役立つような話は一切ありません。
そのため、ソーシャルスキルトレーニングの授業やLD児への学習支援は、誰にも教わらないまま手探りでやるしかありませんでした。

先輩教員はというと、一年目に心理士資格を持ってる先生と一緒に働いたっきり、その後は誰一人として「特別支援の」専門性の高い先生はいませんでした。
ほかの先生方も、私と同じように突然特別支援学級に赴任して、誰にも教わらないまま手探りで授業をして経験を積んだという様子。私が質問しても、効果的な返答が返ってくることはありませんでした。

当時は、ASDとかADHDという言葉は知っているけど、具体的にどんな特性があってどんな困り感があるのか全く分かりませんでした。

ASDの生徒に感じて「どう思う?」と抽象的な質問をしたときに「分からない」と返答されて、なんで分からないんだろうと半年以上悩んだくらいです。(今となってはお恥ずかしい…。)

それでも、ネットや書籍を駆使して、なんとか発達障害の概要を理解できるまでにはなりました。

3.なぜ特別支援学級を続けようと思ったのか

闇雲に働く日々が辛かったので、次の赴任先では通常級で音楽科の教員になろうと最初は思っていました。そう考えながら働いて三年目のある日、転機が訪れます。

たまたま、特別支援学級に在籍する児童や生徒の保護者と茶話会形式で交流するという機会に参加させていただく機会がありました。

そのときに、最近娘さんを支援級に入れると決心したお母さんがいました。
お母さんは支援級に入れた方がいいと思う一方で、今のお友達と離れ離れになってしまうのはかわいそうという気持ちもあったようです。
また、親戚も支援級には大反対だったようで、今回の決心も親戚に内緒だったそう。

お母さんは、茶話会の中でこう言っていました。
「娘を支援級に入れるという決断は、今でも正しかったのか分かりません。」

とても衝撃的だったのを、今でも覚えています。
支援級に来ている子どもたち、その家族は、たくさん悩んで葛藤した上で、その子の人生を支援級に預けてくれている。
それなのに、「空きがないから」とか意味の分からない理由でド素人の大人が支援級に派遣され、専門性が保障できない状態で授業しなければならない。

国なのか自治体なのか分かりませんが、特別支援教育のシステムそのものに疑問を抱かざるを得ませんでした。
また、闇雲で中途半端に支援級の担任をしていた自分に深く反省しました。

この茶話会をきっかけに、特別支援教育について真面目に勉強しよう、次の学校でも特別支援学級を続けよう、と思ったのです。

4.今、私が思うこと

次の学校では、もっと様々な実態を抱える生徒と向き合いたかったので、知的障害の特別支援学級(固定級)の希望を出しました。

実際にたくさんの生徒と関わってきましたが、勉強になったのかどうか正直分かりません。
なぜならば、固定級はとても行事が多く、通常の業務に加えてその準備に追われる日々で勉強する時間なんか全くなかったからです。

教員全員が特別支援教育について勉強できていないまま、生徒数だけどんどん増えていって、実態も多様化していく。
先生たちは素人同然だから、難しい生徒の対応に四苦八苦して、お互いストレスがどんどん溜まっていっちゃう。
そして、私みたいに心身の調子を崩す。

これが、今の特別支援学級の現場です。
残念でなりません。

国でも自治体でもいいから、特別支援学級に発達に関する専門家を配置してください。
巡回でも構いません。不定期で構いません。素人の教員たちにアドバイスできる人をください。


(東京都では、特別支援教室(旧通級)には心理士が巡回していますが、固定級にそのシステムはありません。)

実際、私の転職先の児童発達支援施設では、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、公認心理師が常駐しています。これが本来の理想だと思います。

でも、学校にはこんな専門家はたくさんいません。スクールカウンセラーはいますが、特別支援学級だけを見てくれるわけではありませんし。

5.まとめ

教員は、何でも屋ではないと思っています。
あくまで、授業のスペシャリストです。
発達障害に関する専門的な知識を身に付けさせないで安易に支援級に赴任させるのは、子どもと保護者にとってあまりにも不誠実なのではと思います。

誰もこのシステムについて気にしていないようですが、私は重大な問題ではないかなと思っています。

もちろん、今後も特別支援教育についてしっかり勉強しようと思っています。
しかし、この現状をおかしいと思う人がもっと増えて、特別支援教育そのものがいい方向に進むことを願うばかりです。

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