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ドッグ・タグ

夜半。
降り続ける雨。
惑星ロジンは、昼は日が降り注ぎ、夜に雨が降る星である。
外から見れば、青いあの惑星に似ている。
だが、ここで生きている生命体は4人しかいない。

胸に鈍く揺れるタグ。
いつから、これを付けてたのか私は知らない。
ゾーフィは「これは君にとって大切なものだ。付けているといい」
そして「君が命を賭けて守ったものだ」と、彼は言った。
これは何?
リピアはそっと手で掬う。
タグに掘られている文字?は私には読めない。
でも、とても大切なものだというのだけは感じる。
だけど、それ以上は思い出せない。
どうして?
なぜ?

「・・・おかあさん、それなぁに?」
隣で眠っていたミーアがのぞき込む。
「あら、目が覚めちゃった?」
「うん・・・」
ミーアの隣で寝ているエンヤは、スースー寝息を立てている。
「これはね、おとうさんが下さったのよ。付けているといいって」
「そうなの?いいなぁ、おかあさんは」
「何が?」
「うーんとね」
ミーアは照れくさそうに首をかしげた。
「色んな人が、おかあさんの事、大切に思ってるの。おとうさんもだけど、
この名前の人も」
「えっ」
ドッグ・タグに掘られた文字を、ミーアは小さな指でそっとなぞる。
「遠くからだけど、おかあさんのこと、思ってくれてるの。おかあさんのこと、知らないんだけど、思ってるの」
「この人だけじゃないの。アサミさんとか、フナベリさんとか、タキくん?でしょ、ハンチョウも。アサミさんはね、会いたいよ、どこにいるのって言ってる」
鈍く輝くドック・タグ。
さびしそうにミーアは言葉を紡ぐ。
「おかあさんのこと、さがしてる。思ってるよ」と言った途端、涙がこぼれた。
「・・・どこにも行っちゃダメ。おかあさんは、ミーアのおかあさんなんだから、おにいちゃんのおかあさんなんだから、行っちゃダメ」
ミーアは、泣きながらリピアに抱きついた。
「ミーア」
リピアは小さな身体を抱き寄せた。
「ひとりぼっちはイヤ。さびしいのはもっとイヤ」
震える小さな身体を、細い腕は優しく抱き留める。

深く広がる黒い夜空。
どこかで、この子と同じように寂しさを抱えて生きてる人がいるのだろう。
このタグに刻まれた文字と思い。
どうして私は思い出せないのだろう。


「遙か遠い星の故郷」4話目です。
神永(リピアーが憑依してた方)さんが、付けてたドック・タグですが
私はガチャガチャの方でしか持っていません。
作中で、常に付けていたのは、何よりもこの惑星の人間でいたかったのではと思っています。
まぁ、惚れ込んだものです。ある意味、感心します。
宇宙飛行士だった野口さんが、
「こんな辺境の惑星に、宇宙人なんか来ないですよ」みたいな事をおっしゃっていました。
地球なんて田舎のド田舎だと思います。
それでも、宇宙人は地球で生きている生命体を見て、驚くのかな。






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