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「人づきあいの処方箋」を読んで

 アルボムッレ・スマナサーラ著「人づきあいの処方箋」を読みました。お釈迦さまの教えを元にした内容で、副題が「人間関係に悩みがなくなる慈しみの生き方」とあり、慈悲の心がどう人づきあいのヒントになるか解説してありました。

 以下、裏表紙の引用ーーー
 私たちは皆、わがままな存在です。
 他人の批判とは「私は自分勝手ですが、他人のわがままはぜったいに許しません」ということです。
 人間は罰せられることが怖くていやなもの。
 ところが、私たちは他人を裁くことをたいへん喜んで偉そうにやっているのです。
 そうしておきながら「人間関係がうまくいかない」と悩んでいます。
 それではうまくいくわけがありません。

ーーー

 生きている限り、人は人間関係の悩みから逃れることはできません。家庭、職場、友人との付き合い、どんな場面でも必ずついてまわる問題。他人を責めるのではなく、まず自分の心を育てることが大切なのだとわかりました。
 私的に感銘を受けたポイントとして5つ挙げるとしたら、
①私は「わがままで自分勝手なのだ」と認める
②自分が正しいという思い込みを捨てる
③どんなことがあっても驚かない
④相手がどんなに理不尽に怒っても、私は怒らない
⑤慈悲の心で、相手の幸せを願う
この5つを実践していたら、人間関係の好循環が生まれるらしいです。

 はい、これは相当むずかしい。
 「海のような広い心」を育てないといけないんですって。
 私の心は今現在、ウチの狭い台所のシンクくらいしか広くないです。
 うっかりすると、すぐ水がはねて、こぼれて、床がビショビショになるくらいの狭いシンク並みです。せめて、できるだけ早くバスタブくらいに広くしたいです(ささやか)。

 みんなわがまま、という事実を頭に入れていると、愚痴を言う人と愚痴を言われている人、どちらも似た者同士だと気づきます。
 私の職場も人間関係はあまりよくなく、ギスギスしています。まあ、どこの職場にもあることですが。上司は「文句を言わず仕事しろ!自分の言うことを素直に聞く従業員になれ!」というわがまま。部下は上司に対し「好きな業務しかさせるな!もっと自分たちを評価しろ!」というわがままを言ってます。どっちもどっちかな、五十歩百歩かな。私もこの対立に巻き込まれて、いじめを受けて、ストレスで病気にもなりました。でも、この本みたいな仏教の本を色々読んでずいぶん気持ちが軽いです。「怒り、憎しみ、恨み」の感情を消して、相手の幸せを祈って堂々と行動していたら、いじめも下火になりました。自分の幸せのためにも「ざまあ」と小説のように仕返しを企んではいけないのですね。

 もちろん弱い者いじめはよくないですけど、そうしなければ自分を保っていられない可哀そうな人たち、とも言えます。ここで「いじめはいけません!」と相手を責めてはいけません。それは私の「いじめをしない同僚が欲しい」というわがままになるからです。
 そして残念ながら事実として、人間は自分より弱い生命を犠牲にして生きる生き物ですから。無知で理性のない人たちは、憂さ晴らし、八つ当たりで簡単に弱者を痛めつけます。自分を正当化して。時には「こいつのために説教してやっているんだ」と自分自身までだまして。どうして仲良く仲間として協力して生きていけないのか。それは私たちが皆わがままで、相手を責める生き物だからなのでしょう。だからこそ、意識して海のように広い心を育てないといけないのだと思います。

 いじめられても、平気で堂々としていることは結構大変でした。過去の出来事に執着しないこと、怒りを持続させないことはもちろん、特に嫌いな人の幸せを願うのは難しいです。まずは嫌いな人の爽やかな笑顔を浮かべます。そして心の中で「〇〇さんが幸せでありますように」と10回唱えるのです。これを1日1回続けると、どんな態度をとられても、笑顔で挨拶できるようにまでなります。そのうち、気遣いの言葉や態度が出るようになります。そうしたら相手の接し方も軟化してきました。もちろん、相手が怒りの感情をまき散らしているときは物理的に距離を置くことが大切ですけど。

 人づきあいはとても大変なことで、この本の著者のお坊さんも9割は上手くいかないものだとおっしゃっていました。だから失敗しても気にせずにいることも大切、とのこと。

 まだ台所のシンク並みの広さだけど、いつか海のような広い心を育てたいと思います。

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