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声を出して笑った本

今月突発性難聴になり2週間ほど自宅療養した際、けっこう落ち込んでいた私が思わず吹き出して笑った短編小説が、東野圭吾著「超たぬき理論」という短編。1995年小説すばるに掲載され、集英社の同氏の短編小説集「怪笑小説」と集英社文庫の「短編復活」に収録されているお話。私は「短編復活」を読んだんですが、16名の作家さんたちのアンソロジーなので、内容も様々。人情ものもあればミステリーもあり、だったら東野圭吾氏ならミステリーかな、と予想していたけれど、全然ちがったのです。

あらすじとしては、幼い頃に出会ったたぬきを通して「たぬき」超能力説を掲げ、UFOはたぬきが文福茶釜に変化したものだと信じ、生涯をその研究に注ぐ男性の話で、東野氏の畳み掛けるようなストーリー展開に多いに笑いました。
私いまだに、文福茶釜という文字を見ただけで思い出し笑いするぐらいツボです。

笑った本といえば、つかこうへい著「長嶋茂雄殺人事件ージンギスカンの謎」(角川文庫)も思わず笑ってしまった作品です。何しろ実在の人物がどんどん出てきて、ええ…これまずいんじゃないの、怒られちゃうよと読者のほうがハラハラする小説でもあります。「もっとも長嶋茂雄を愛した者が彼を殺す権利がある」と、荒唐無稽、支離滅裂な話かと思えば、深い人間洞察に基づいた突き抜けた誇張と揶揄、人間の愚かな部分を愛情いっぱいに描いた小説ではないかなと思います。私が笑ったのは徳光和夫さんの長嶋茂雄大好きな言動の数々。もう本当に笑い転げました。

もうひとつ、大笑いしたのは、群ようこ著「トラブル クッキング」(集英社文庫のエッセイ)群ようこ氏が苦手な料理にチャレンジした時のことを淡々と描いているのですが、これは料理なのか?と疑問になるほどの内容。いや実は土木工事なんですと言われても不思議ではないくらいの展開。一番強烈なのは「土鍋と肉じゃが」エピソード。でんぷん質と化したかつての肉じゃがが土鍋と一体化するという普通では考えられない状況。とても笑わせていただきました。

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