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blur 今について語る

イギリスのラジオ番組”Absolute Radio”にて2023年5月にblurのメンバー4人が集まり、新作アルバム『The Ballad of Darren』とワールド・ツアーについて語りました。

本noteではそのインタビューの簡単な日本語訳の文面を載せましたので、動画を見ながら是非インタビューを読んで下さい。

●Absolute Radioへようこそ。個人的に大好きなバンドなので光栄です。人生で一番多くライブを観たバンドなので。電車を追っかけて撮影する若者みたいに、大興奮と同時に怖くもあります。まずは再結成してみてどんな気分ですか?
デーモン「うーん」
●重大な質問ですよね(笑)。
デイヴ「すごく長い、時間のかかるプロセスだ」
グレアム「うん、確かに長いプロセスだ」

●新鮮でエキサイティングな時代が始まった感じですか?
デーモン「実際それが表われてると思う」
アレックス「そうだね。最高のアルバムができたわけだから」

●そうですね。ウェンブリーでの大規模なライブが控えていることについてはこの後お聞きしますが、ウォームアップの会場も素晴らしくて、Eastbourne Winter GardensとWolverhampton The HallsとNewcastle O2 City Hallが選ばれていますが、エセックスのリー=オン=シーにいる私にとってはColchester Arts Centreが一番近くて――。
デーモン「それはよかった」
●初期のブラーがライブをやっていたようなところを思い出させるヴェニューですよね。
グレアム「そこではみんなそれぞれ別々にライブをやったことがあるよね。デイヴとは同じバンドだったことがあるかも」
デイヴ「デーモンと初めて会ったのってそこだったよね。君が帽子かぶった奴と一緒にライブやってて」
デーモン「帽子かぶった奴ね。当時はサーカスってバンド名で、僕は80年代ふうの、ジェルでつんつんに尖らせた髪型をしてて、覚えてるのはステージで…グレアム、僕は何て言ったんだっけ?」
グレアム「起きろ!って大声で」
デーモンで「そう、それで会場全体がすごく気まずい雰囲気になって、さらにひどいことに、僕がステージを下りてオーディエンスの中に入っていくと、人数は多くなかったけど、みんなが僕に背を向けて離れていって、最悪な状態だった。それが最後にそこでライブをやった思い出だ」
アレックス「コルチェスター出身じゃない人間には、スタートするのにいい場所だと思えるよ。過去はずっとそこにあって、それを変えることはできないわけだけど、立ち返ってみるのは面白いことだと思う。実際、この辺り、ブルーワー・ストリートを歩いてみたんだけど、いい気分だった。フード・レコーズがあって、すべてが始まったところだからね。パブのクラウンもあるし」

●思い出の場所ですね。
アレックス「それに僕達みんなたぶん、まあ、僕はとにかくまた曲を演奏できるのが楽しみだっただけで、新しい音楽を作るなんて夢にも思わなかった。でも、それによって今回の再結成の考え方が完全に変わったわけで、僕達の過去も新たに輝き出した感じがする」

●過去についてもうひとつだけ。あなた達のように素晴らしいキャリアのある人は、立ち止まって自分が成し遂げたことを理解する機会がないままでいることがあります。あなた達は素晴らしいことを成し遂げて、これから先も最高の音楽を生み出していくわけですが、当時成功を味わって、きちんと理解していたと思いますか?
デーモン「どんなものであれ、大きな経験の余波というのは後になってからの方がよく理解できるものなんだ」
アレックス「君達はどうか知らないけど、僕は過去を振り返るのに時間をかけるタイプじゃない。あのころがなつかしいかって訊かれるけど、いつまでもサンタクロースが来ていたころをなつかしがってるわけにもいかないし」
デーモン「君は僕よりはるかにたくさんブリットポップのドキュメンタリーをやってきたからね」
アレックス「まあ…今は飲み物だ(笑)」(※アレックスは「BRITPOP」と名付けた飲料を発売したことがある)
デイヴ「(笑)いつできるのかと思ってたよ」

●再結成のきっかけは? 偶然の出会いだったのか、それとも――
デーモン「偶然の出会いだって(笑)」
●ブラーのグループチャットがあったとか?
アレックス「そんなものがあったとしたらこれほど時間がかかってないって。まったく。いつからだっけ? 2015年?」
デーモン「まあ、僕達はただの中年男4人組で、これまで生きてきて、こんな素晴らしい共通の歴史があるわけで、もしもう一度バンドとして表に出ようとするなら、お互いを再発見することがすごく大事だったと思う。デイヴやグレアムやアレックスみたいな人達と長年付き合ってきて嬉しいのは、たくさんの共通の経験があることで、それは喜ばしいことだ。今のところはね」

●(笑)。バンドのWhatsAppグループがあるんですか? バンドなんだから当然――。
アレックス「3年くらい前に試したことあったよね」
デーモン「僕は携帯持ってないから、WhatsAppグループがあってもどうしようもないんだ」

●携帯持ってないんですか?
デーモン「持ってないよ」
●いつから?
デーモン「結構前から」
●僕もちょっとやめてみようととしたことがありますけど、ない方がいいですか?
グレアム「持ってたことないよね?」
デーモン「公平のために言うと、僕は一度も熱心な電話ユーザーだったことがないんだ」

●なるほど。固定電話が好きなタイプ?
デーモン「固定電話だって怖いというか、向こう側に誰がいるのかわからないんだから」
●なるほど、いいですよね、持たない方が自由で。ではウェンブリー公演について、あっという間にソールドアウトになりましたが、もう一度ウェンブリーでやろうとすることに不安はあったのでしょうか? チケット発売前に少しでも怖くなりましたか?
デーモン「別に」
グレアム「僕はちょっと怖かった」

●ちょっと怖かった?
グレアム「少しはそうなるよ。パジャマを着て学校に行く夢を見るような感じというか。大きな会場だし、あっという間に売り切れて、驚いたよ」
アレックス「実際にチケットを売ってみないと、いまだに気にかけてくれる人がいるのかどうか確かめようがないし、あんなに速くソールドアウトになってびっくりした」
●あなた達は全員人前に出たがらないタイプで、常にメディアに出ずっぱりではないので、何年も再結成をほのめかして人々を煽ってきたわけではなくて、だからこそチケットが即完したのは嬉しいことです。
デーモン「一番興味深いのは、僕達がまたアルバムを作ったことだよ。もちろん大勢の人達と同じく僕達にもノスタルジアがあるけど、2023年のやり方で入っていくためには、今は僕達が始めたころとは状況がずいぶん変わったわけだから(苦笑)、何て言うか、僕が今作の曲で使った言語が全体的に奇妙な感じがするのは、昔はかなりおかしなところもあったけど、今はもっとこう真実を題材にして、それを奇妙な形で示しているからで、何だろう、それを今の音楽に結び付けて、真実だと感じられるアルバムを作る必要があったんだ」

●では新作『The Ballad of Darren』について話しましょう。素晴らしい作品ですね。昨晩帰宅しながら聴いたのですが本当に素晴らしくて、僕には社会的な主張のように感じられました。『Modern Life is Rubbish』が当時のイギリスについて語っていたように、今作も今の時代に対する社会的な主張だと言えますか? 今の世界は曲にするには異例の状況なので。
デーモン「外を見るための窓、もしくはのぞき込むための鏡だ」
●しばらく前から書き溜めていた曲なのか、それとも短期間で多くの曲が生まれたのでしょうか? 爆発するように曲が一気にできた感じ?
デーモン「それはまた別の話になるけど、まとめ始めたのは1月で、今に至るってこと」
●なるほど。アレックスは「This Is a Low」に合わせてプレイしている動画をツイートしていましたよね。
アレックス「ちょっとした練習で」
●すぐに思い出せましたか? 皆さんに訊きたいんですけど、昔の曲はすぐに思い出せたのか、それとも学習しないと――。
アレックス「それは――」
デーモン「(笑)昨日のことだ」
アレックス「(笑)要するに、僕達は長年にわたって毎日何時間も一緒にプレイしてきて、幸運なことに、言ってみればひとつの技術を身に付けることができたわけで、この4人が揃って演奏できるのは本当にすごく貴重なことなんだ」
デーモン「他にやりようがない(There’s no other way)んだよ。しゃれじゃないけど」

●(笑)
アレックス「いや、そのとおりだ」
グレアム「まあ、昔はギタリストにしてもベーシストにしても、だんだんうまくなっていけばよかったんだ。タッチやスタイルを徐々に発展させていくことが許された。僕達のスキルの土台は、スキルと言っても僕にあったのはほんの少しだけど、常に学んでいくことで、それが自分の、そしてこの4人で一緒にプレイする一風変わった独特のスタイルになっていくっていう」
デーモン「僕達特有のDNAがあるのは明らかで、つまり、自覚はないにしても、明らかに何かがあって、それがなければここにいないわけで」

●でもあなた達はバンドとして素晴らしくて、当時のことで覚えているのは――。
アレックス「そこにたどり着く唯一の方法は、何年も続けていくことだけで、それが他のどんなものとも違うサウンドになる。僕達は確かに何年もずっと一緒にプレイしてきて、でも新しい――」
デーモン「活動休止してたけどね」
アレックス「うん、だけどそれもいいことだと思う。みんなで一旦立ち去って、ウサギの穴に落ちてまた戻ってくるんだ。新しい新鮮なニンジンが必要だからね」
デーモン「確かに」
デイヴ「みんなでプレイする感覚みたいなものはすぐに戻ってくるというか、そのDNAってやつは初日の終わりには復活してたよね? でも曲は強制されないと無理だ。少なくとも僕は(笑)」
アレックス「いまだにコーラスを間違える(笑)」
デイヴ「曲はつぎはぎだらけだ(笑)」

●リハーサルはどんな感じですか?
デーモン「かなり疲れる。僕達の中には、いや全員が、リハーサル場所から離れたところに住んでて」
アレックス「誰一人近くないね」
デイヴ「選んだリハーサル場所がみんなが行きにくいところで」

●ウェンブリー公演のセットリストはどうやって選ぶんですか?
アレックス「僕達はやらない。他の人に頼むから」
グレアム「そう、他の人に仕事としてやってもらうんだ」

●セットリストは外注?
デーモン「全曲、すべて」
●本当に?!
デーモン「当然だよ」
アレックス「とても無理だ」
グレアム「全員が自分の好きな曲を入れてもらうために賄賂を渡すんだ」
デーモン「(アレックスを指して)彼が思う完璧なセットリストがあって、グレアムもアイデアがあるし…デイヴはいつもかなり実用主義的だけど、ドラマーだからね (笑)」

●万能選手ですから(笑)。
デーモン「必要なのは全員が――」
●信頼がないとできませんよね。
デーモン「僕達のためにセットリストを作ってくれる素晴らしい人物のことはもちろん信頼してる。彼の名前はStuart Lowbridgeだ。ていうか他にもいるから、彼の名前を出したのは問題ありだけど、彼はずっと一緒にやってきてくれて、1990年にダドリーのJB’sでライブをやったときからファミリーの一員なんだ」

●訊きたかったのはいつも一緒にいるのか――。
デーモン「クルーの多くは20~25年以上前までさかのぼるし、できる限りみんなをつなぎとめておけるようにしてきたんだ」
●僕が最初にブラーを観たのはローラーコースター・ツアーで、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、ダイナソーJr.と――。
デーモン「じゃあ牛の一生を逆回しにした映像を観たってこと?」
●そう、戻っていくやつですよね。
デーモン「覚えてるんだ! あれまたやるつもりだから、ウェンブリーで(笑)」
●いいですね、帰りの電車の中で話題になりました。逆向きの食物連鎖というか。
デーモン「そう」
●最高です。
アレックス「あのころは本当に楽しかった。ウィリアム・リードやダイナソーJr.のメンバーとボウリングに行ったりして」
デーモン「ソーホーに二晩連続でいたよね」

●グレアム、あなたはこの国が生み出した史上最高のギタリストの一人だと思います。ジョニー・マーやジョン・スクワイアと並んで――。
グレアム「え、それはあんまり嬉しくないな。いやいや、みんな素晴らしいよ(笑)」

●(笑)新作ではいい意味でサウンドが変化したと思うのですが、ギターに対するアプローチがかなり洗練された感じがします。「ときにはリフが役に立たないことがある」という発言もありましたし、アプローチが違いますよね。
グレアム「今回のサウンドやコードの大半は、リフが合わない音楽だと思った。リフに隠れるというか、そういうのが難しかったから、今回のアプローチは…ただコードに従うことに集中して、そのコードをギターでできる最高の形で音にしていくようにした。それに、僕はこれまでだってそんなに、ノイジーなタイプじゃなくて、人にそう思われるのは構わないし、
それがグレアム・コクソンのギター・サウンドだと思われることもあるけど、常にそれが好きだったわけじゃないから、違った感じのギターやその可能性を追求してみたかったんだけど、そのおかげでもっと美しいサウンドになった。というのも、生々しい不快なサウンドを作りたいとしても、そういうサウンドも今作にあるけど、それはそこにある他のものと共存しないといけないわけで」

●昔よりもペダルは少なくなりました?
デーモン「(咳払い)」
●(笑)ペダルがたくさんありましたよね。
グレアム「使わなくてもよかったんだ。最高のアンプとレスポールだけで何でもできてしまえばいいんだけど、そういうわけにもいかないから。僕はギタリストらしくギターを弾かないというか、自分が作りたいサウンドを出すためにギターを使ってるわけで、ギターが一番手近にあったってこと」
●ブラーをいくつかの時代に分けるとしたら、たとえばプリマス・パビリオンなどでの崖っぷちのブラーとか、『Leisure』時代のようにクレイジーな復活を遂げたブラー、『Modern Life Is Rubbish』のブラー、『The Great Escape』でチャートを席巻したブラーなど、そうすると今はどんな時代だと言えますか?
デーモン「『Parklife』は?」

●『Parklife』は――。
デーモン「インペリアル(威厳ある)?」
●威厳あるブラー。
デーモン「インペリアス(傲慢な)だ」
●傲慢なブラー! (笑) 今のブラーはどんな時代にいると思いますか?
アレックス「ロック紳士の時代とか」
●そうとも言えますね。
デーモン「それには興味ないな」
グレアム「完全に新しい時代だと思う。でもブラーをよく知ってるリスナーなら、かなり初期のころの響きやちょっとした瞬間に気付いてもらえると思う」

●ウェンブリーのステージに上がる前に緊張すると思いますか?
デーモン「いや」
●アレックスは――。
デーモン「ていうか、するかもしれないし、今は完全にビビってるよ(笑)」
●言われてみれば――。
デーモン「うん、大事なのは何より音楽だと思うし、それ以外はないから、つまりそこにエゴがあるべきじゃなくて、ナーヴァスにさせる唯一のものはエゴなんだと思う。いずれにしてもみんな音楽を聴くために集まってるわけだから。言いたいことわかるよね?」
●はい。
アレックス「ああいうビッグなショウでは、ステージに出て、『うわ、デカい』って思って、ちゃんと自分の仕事ができれば、ステージから去ると(両腕を広げて狭めながら)自分が縮んでしまう感じで――」
デーモン「それはかなり縮んでるね。昔買って大好きだったレザージャケットを思い出すよ」
アレックス「(笑)。ゾーンに入るよね? というかこの番組を聴いてる人の方が多いんだ。大規模なライブをやるにしても、これを聴いてる人の方がウェンブリーでの演奏を聴く人よりも多いんだから。でもこれはただおしゃべりしてる感じで」
デーモン「ウェンブリーではジャケットを染めたときよりいい仕事をしないとね


● 以前日本でライブをしたときのCDを持っていて、オーディエンスが熱狂していたのを覚えているのですが、これからのツアーの予定は?
デーモン「あんまりやり過ぎたくない」
アレックス「12公演くらいだって言われてるから、それほどでも」
●それほどでもないですが、いいところでやりますよね。
デーモン「それよりもっと多いって、アレックス。12公演だなんて甘いよ」
グレアム「12だって言ってるのはアレックスだよね」
デーモン「そのとおり」
グレアム「それより多いなら僕は悪いけど――」
デーモン「12だとは思わない。南米に行って、日本に行って、ヨーロッパにも行くし」
アレックス「南米で4回、日本で2回、まあ12よりは多いかもしれないけど、20はいかないよ」

●なんとかなる程度?
アレックス「それはどうかな」
デーモン「(厳粛な声で)それはどうかな」

●ではこの新時代において、素晴らしい新作を聴くことになるブラーのファンに感じて欲しいことは何ですか? 新作から何を感じ取って欲しいと思いますか?
デーモン「僕達の痛みを感じてもらえれば」
●(笑)。幸運にもウェンブリー公演のチケットを手に入れた人は、どんなショウを期待できますか? セットリストは外注だとしても。
デーモン「見たこともない、万華鏡のような、これまでの34年を振り返る素晴らしい旅になる」
● いいですね。
グレアム「これまでやってきたすべての音楽の再解釈みたいな感じだと思う」
デーモン「ギグというよりウエスト・エンドのショウみたいな」

●『スターライト・エキスプレス』ですね(笑)。復活してAbsolute Radioに出てもらえて嬉しいです。ありがとうございました。
(口々に)「ありがとう」「またね」


【リリース情報】
■アルバム情報
アーティスト名:blur / ブラー
アルバム名:The Ballad of Darren / ザ・バラード・オブ・ダーレン
リリース日:2023年7月21日(金)
国内盤CD:WPCR-18616 / \3,190(税込み)※ボーナス・トラック収録

<トラックリスト>
1.     The Ballad
2.     St Charles Square
3.     Barbaric
4.     Russian Strings
5.     The Everglades (For Leonard)
6.     The Narcissist
7.     Goodbye Albert
8.     Far Away Island
9.     Avalon
10.  The Heights
11.  The Rabbi
12.  The Swan
13.  Sticks and Stones *ボーナス・トラック












■オフィシャル・ミュージック・ビデオ
The Narcissist

St. Charles Square:

 


【リリース情報】
■アルバム情報
アーティスト名:blur / ブラー
アルバム名:The Ballad of Darren / ザ・バラード・オブ・ダーレン
リリース日:2023年7月21日(金)国内盤CD:WPCR-18616 / \3,190(税込み)※ボーナス・トラック収録

https://blur.lnk.to/TBOD

<トラックリスト>
1.     The Ballad
2.     St Charles Square
3.     Barbaric
4.     Russian Strings
5.     The Everglades (For Leonard)
6.     The Narcissist
7.     Goodbye Albert
8.     Far Away Island
9.     Avalon
10.  The Heights
11.  The Rabbi
12.  The Swan
13.  Sticks and Stones *ボーナス・トラック


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