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【中上級者向け】音楽評論家 粉川しのさん、精選!blur(ブラー)の本質を衝く“隠れた名選” 全10曲

ブリット・ポップ/UKロックの旗手として、UKロック・シーンを代表する存在となった、4人組ロック・バンド、blur(ブラー)

『The Magic Whip』以来、実に8年振りとなる新作スタジオ・アルバム
『The Ballad of Darren / ザ・バラード・オブ・ダーレン』

Blur について

彼らは、2023年8月19日(土)、20日(日)に開催される「サマーソニック2023」(SOLD OUT)のヘッドライナーに決定しており、本国UKでは、超巨大会場のウェンブリースタジアムが即日SOLD OUTし、各国の有名フェスティバルへの出演も予定されていたりと、その注目度は高まる一方。
(いよいよ来日ですよ皆さん!!)

blur(ブラー)って名前ぐらいは耳にしたことはあるけど、というリスナーさんに向けて、ひとまず、これだけ聴いとけばなんとかなる!的な企画
“blurといえばの〈定番/鉄板/おススメ楽曲>全10曲”noteにて公開しました。

しかしながら、とあるblurファンさんより

「有名曲も改めて聴きなおしたいけれど、折角の来日だし、もうちょっとディープな楽曲が聴きたい!」

という声を頂いたことに発奮し。
<中上級者向け>として第二弾をご用意致しました。

今回は、よりプロフェッショナルな視点からということで、スタッフセレクトではなく…blurの変遷を常に音楽業界の最前線でチェックされてきた、プロ中のプロ!音楽ライター/ジャーナリストの粉川しのさん に、敢えての有名曲・全外しをお願いし(汗)、玄人好みの全10曲をセレクト頂きました!
※粉川さん、快くお引き受けいただき…誠にありがとうございました!

ご存じの方も、そうでない方も、なかなかのblur節な楽曲ばかりが揃っております。敢えてここから聴いてみるのも全然アリです!

新作『The Ballad of Darren / ザ・バラード・オブ・ダーレン』リリース直前!
それでは10位から1位まで、じっくりどうぞ!


楽曲発表 (10位から1位まで!)

10. Thought I Was Spaceman

Magic Whip / ザ・マジック・ウィップは、グレアム・コクソン復帰作としては『13』から実に16年ぶりの作品だったわけだが、彼らの復活が単なるレトロスペクティブではなかったことを、刺激的な実験に満ちたこの約6分間のサウンドジャーニーが伝えている。Blur初期のサイケデリックや後期のビンテージなシンセ音、そしてGorillaz(ゴリラズ)デーモンのソロへと発展していったシネマティックな音響の全てを内包して未来に繋げる曲。リバーブの奥からデーモンを追いかけてくるグレアムのコーラスにもぐっとくる。「僕は宇宙人だと思ったんだ」という歌詞の一節は、『Magic Whip』をレコーディングした香港という街を、デーモンが別の惑星のように感じたことから書かれたという。
(粉川)


9. Music Is My Rader

Blurは2000年に初のベストアルバムThe Best Of / ザ・ベスト・オブをリリース。ジュリアン・オピーの描いたアルバム・ジャケットも含めてファンに愛されている同作からシングルカットされた新曲が「Music Is My Rader」だ。

『The Best Of / ザ・ベスト・オブ』アルバム・ジャケット

Blurのパブリック・イメージをことごとく裏切っていくナンバーであり、リリース当時は賛否両論だったと記憶している。何故ならここには『Parklife』期の魅惑的なメロディも、『Blur』期のアンセミックなギターもないからだ。骨格は限りなくミニマル、その代わり彼らが身を躍らせ、没頭しているのはポスト・パンキッシュなリズムだ。本曲でオマージュを捧げたトニー・アレンは後にデーモンとThe Good, the Bad & the Queen(ザ・グッド・ザ・バッド・アンド・ザ・クイーン)を結成する。様々な意味において未来への種を蒔いた曲と言えるかもしれない。(粉川) 


8. Maggie May

Blurはこれまでに数少ないながらも幾つかのカバー曲をレコーディングしている。中でも名カバーとして名高いのが「Maggie May」だ。オリジナルはRod Stewart (ロッド・スチュワート)の1971年の名曲。Blur ver.の初出しは、過去40年のUKヒット曲を人気アーティスト達がカバーした傑作チャリティ・コンピ『Ruby Trax』(1992)だった。Blur「Maggie May」がエポックメイキングだったのは、彼らが1992年というブリットポップが未だ影も形もなかった時代に、同曲で早くもその片鱗を伺わせるプレイを見せていたという点だ。初めて聴いた際に

Blurってこんな正統派ブリティッシュ・ポップ(注:当時はまだ「ブリットポップ」という単語は存在しない)も演りこなせるバンドだったのか」

と驚いた記憶がある。今改めて聴いても Rod Stewart へのリスペクトに満ちた仕上がりで感動する。(粉川) 


7. Trouble in the Massage Center

全英1位の大ヒット作、ブリットポップの金字塔にして日本でも高い人気を誇るParklife / パークライフだけに、同作は基本的に誰もが知っている名曲ばかりだ。そんな『Parklife』から敢えて「隠れた名曲」として挙げるとするならこの曲だ。アルバムを通して聴くと、同作のブリティッシュネスを凝縮したメロディやノエル・カワード的世界にあってこの曲の異質さ、その際立ってノイジーでラウドな個性に気づくはずだ。チャーミングなブリットポップの情緒に容赦なくヤスリをかけるようなラフで乾いたギターは、『Blur』期のそれを先取りしている。その一方で躁状態にあるシンセや、自分の脳を情報が錯綜するメッセージセンターに見立てた歌詞のアイロニーは、この時代の Blur ソングの醍醐味だ。(粉川) 


6. When The Cows Come Home

ライバルのOasis (オアシス)の初期2作がそうだったように、Blur にもシングルのBサイド曲の名曲率が神懸かって高かった時代がある。それがセカンドModern Life Is Rubbish / モダン・ライフ・イズ・ラビッシュの時期だ。特にファースト・シングル「For Tomorrow」のカップリングはどれも珠玉なのだが、敢えて一曲上げるとしたら「When The Cows Come Home」だろうか。ミュージックホール風のホーンやデーモンの戯けた声色、喜劇ミュージカルのようなコーラスetc.で彩られた同曲は、「London Loves」「Tracy Jack」のブループリントのようなナンバー。『Parklife』の曲ほどポップソングとしてポリッシュされていない、いなたいインディーサウンドはこの時期だけの魅力だ。英国郊外に住む普通の人々にフォーカスした歌詞は『Modern Life Is Rubbish』のテーマに則っている。(粉川) 


5. Interia

Blur はデビュー当初から圧倒的に評価されていたバンドというわけではない。デビューアルバムLeisure / レジャーはマッドチェスターとシューゲイザーをいいとこ取りした作品で、要領がよくシニカルな新世代が登場したという印象だった。しかし同作は後に再評価が進み、映画『トレインスポッティング』でフィーチャーされた「Sing」は彼らの代表曲の一つに。そんな『Leisure』期のナンバーでも特にコアファンに愛されているのがシングル「There's No Other Way」のBサイドだった「Interia」。名匠スティーヴン・ストリートと初めて組んだ「There's No Other Way」が彼らの眠れるポップセンスを呼び起こした一方で、セルフプロデュースの本曲は思いっきりノイジーでトリッピーな Blur の原風景。グレアムのファズギターは恍惚の一言。(粉川) 


4. Under The Westway

2012年のロンドン・オリンピック閉会記念ライブのために書かれた「Under the Westway」は、blurの最新の古典と呼ぶべき名曲。“Westway”とは、パディントンからロンドン西部へ抜ける高速道路のことで、「Westwayから見上げた空にはかつて彗星が見えたのに、今ではジェット燃料が降ってくる」、「それでも楽園は今も君の中にあるし、僕も歌い続けるんだ」と歌う、ロンドンとそこに暮らす人々に向けたラブソングのようなナンバーだ。
blurとしては珍しくライブ一発録りでレコーディングされ、デーモンのピアノ弾き語りに必要最低限の要素を纏わせていく構成が彼らのリリシズムを際立たせている。
ちなみに93年のナンバー「For Tomorrow」でも「僕らはWestwayで道に迷ってしまった」と歌われるように、“Westway”はデーモンにとってある種の原風景であり、そこで「歌い続ける」と誓ったことは、グレアム復活後のブラーの旅路にとって大きな意味があったはず。
2023年7月のウェンブリー・スタジアムで、この曲を歌いながらデーモンが思わず涙したのも納得なのだ。(粉川) 


3. Young & Lovely

Modern Life Is Rubbish / モダン・ライフ・イズ・ラビッシュからのシングル、「Chemical World」のカップリング・ナンバー。これは言わば Blur「青春ソング」であり、Blurとスティーヴン・ストリートのタッグが生み出した最もリリカルで甘酸っぱい曲だと言える。リバーブがたっぷりかかったサイケデリックからキラキラとした鈴音と共に極上にクリーンなコーラスへと転じる展開が素晴らしい。

「欲しいものは何だって手に入るよ、だって君は若くてラブリーなんだから」と歌う思春期賛歌だが、「心配しないでママ、私だってバカじゃない。将来はママみたいになるから」

と、若さという無敵ターンはいずれ終わることも暗示するほろ苦いナンバーでもある。2012年のハイドバーク公演でデーモンはこの曲を「僕らの美しい子供達に」捧げていた。(粉川) 


2. All Your Life

Blur の最高傑作との呼び声も高い5作目Blur / ブラーもまた、『Modern Life Is Rubbish』同様にシングルBサイドが充実したアルバムだ。「All Your Life」はファースト・シングル「Beetlebum」のカップリングだったナンバー。この曲のヴァースにDavid Bowie(デヴィッド・ボウイ)「Oh! You Pretty Things」を連想するのは私だけではないはず。そのキッチュでグラマーなメロディには『Parklife』『The Great Escape』の頃の残り火を感じるが、アウトロに向けて軋むフィードバックノイズやため息のようなコーラスは、ブリットポップの夢から醒めてリアリスティックなギター・ロックをやり始めた『Blur』の彼らの現在地を指し示している。アルバム毎に音楽性を変遷させていったブラーだからこそ、こうした「端境期」ならではの醍醐味があるのだ。(粉川) 


1. You’re So Great

名曲揃いのBlur / ブラーから1曲選ぶのは極めて難しいが、曲のクオリティ、圧倒的なコアファン人気に反比例して一般の知名度が不当に低いのが「You’re So Great」ではないだろうか。2023年の復活ライブに際してバンドがやってほしい曲を呼びかけた際にも、多くのファンがこの曲をリクエストしていた。弦の軋みもそのまま剥き出しのギター、プツプツとノイズの入るローファイな音響、おずおずと、しかしどうしようもなくエモーショナルに震えてひっくり返るグレアムのボーカル。この曲には表層的なポップを極限まで削ぎ落とした『Blur』で彼らが手に入れた、ロック・バンド=Blurの唯一無二のピュアネスが結晶化されている。名曲「Coffee & TV」の前日譚としても位置付け可能な曲であり、寂しく惨めな日々も、君が大丈夫だと言ってくれれば光り輝くのだと歌う歌詞も、いつまでも胸に残り続けている。(粉川) 


まとめ

いかがでしたでしょうか?

7/21新作『The Ballad of Darren / ザ・バラード・オブ・ダーレン』は勿論のこと、

タイトル:The Ballad of Darren / ザ・バラード・オブ・ダーレン
リリース情報:2023年7月21日(金)/¥3,190(税込)/WPCR-18616
収録内容:
01. The Ballad
02. St. Charles Square
03. Barbaric
04. Russian Strings
05. The Everglades (For Leonard)
06. The Narcissist
07. Goodbye Albert
08. Far Away Island
09. Avalon
10. The Heights
11. The Rabbi
12. The Swan
13. Sticks and Stones* (*日本盤CD Bonus Track)


以下のプレイリストも忘れずにチェックしてみてくださいね♪

Apple Music - Blur: Deep Cuts

Apple Music - はじめてのblur

Spotify - This is blur


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Blur - Warner Music Japan アーティストページ


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