トランス女性の性犯罪者率は男性より高いのか?
トランスヘイターがまたとんでもない画像を投下していました。
ここに何が書かれているか、分からない人向けに説明すると
まず"SEX OFFENDER RATE, PER MILLION"とは「人口100万人あたりの性犯罪者率」の意味です。下に「イングランドとウェールズの各性別の人数」とあるので調査対象はイギリスのうちイングランドとウェールズということでしょう。
イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北部アイルランドという4つの地域からなる国であり、そのうちのイングランドとウェールズ限定、という意味ですね。
下に続く人間アイコンは、「人口100万人あたりにどれくらいの性犯罪者がいるか」というのを図示するものです。
この図では性犯罪者の数を
「女性」は100万人あたり3人(実数3,040万人中103人)
「男性」は100万人あたり395人(実数2,950万人中11,660人)
「女性自認の男性」(原文ママ:女性自認男性とはトランスヘイターがトランス女性を指して使う表現) は100万人あたり1,916人(実数48,000人中92人)
としてます。
まず、トランス女性が100万人あたり1,916人としている点ですが、そもそも実数でトランス女性の数を48,000人としており、100万人とはその48,000人の全人口を超えています。そもそもそんな人数がいないものを100万人換算しているところに、トランス女性に対する猛烈な悪意が見えますね。
例えばこれを、割合ではなく実数値でグラフ化すると以下のような図になります。
はい。
性犯罪者の数は圧倒的にシス男性が多い、というのは一目瞭然ですね。
これを、トリックで「トランス女性はこんなに性犯罪をしているのだ!!」と見せかけるために100万人換算をしたわけです。
「92人では少ないから1,916人にしてやった」、ということでしょうか。
なんという外道でしょうか。
「でも、割合でいうとトランス女性の性犯罪者率は男性より高いのでは?」
とか思うトランスヘイターもいるでしょう。
なのでそのあたりを詳しく見ていきます。
まず、注目すべきは「48,000人中92人」という数字が一体どこから出てきたのか、という点です。
48,000人という数字の方はすぐ見つかりました。
それは右上にSOURCESとして書かれている下の方です。
これは、イングランドとウェールズの国勢調査の結果を示したもののようです。
これによれば
「あなたが自認する性別は、出生時に登録された性別と同じである」という質問の回答者はイングランドとウェールズに住む16 歳以上の4,570万人(16 歳以上の人口の 94.0%)
上記の質問に「はい」と回答したのが4,540万人(93.5%)
上記の質問に「いいえ」と回答したのが26万2,000人(0.5%)
「いいえ」と回答した人のうちトランス女性は48,000人(0.1%)
「あなたが自認する性別は、出生時に登録された性別と同じか」という質問に答えなかった人が290万人(6.0%)
という結果だったそうです。
トランス女性の母数48,000人はここから取られていることは明らかでしょう。
しかしながら、この統計を見れば、そもそも質問に回答しなかった人が290万人(6%)もいますね。
もちろん、回答しなかった人の全てがトランス女性だというわけではありませんが、国勢調査にトランス女性であると回答したくなかった、回答を拒んだ人がかなりの数いたことが推測されます。
この調査を根拠としてイングランドとウェールズのトランス女性の人数を48,000人と推定するのは不可能でしょう。
そもそもトランス女性だと回答した人の数が48,000と、とても少ないせいで、仮に質問に答えなかった290万人のうちの10%がトランス女性だったとするだけでトランス女性の人数が29万人増えてトランス女性が33万8000人となるわけです。この33万8000人を母数として計算すると、人口100万人あたりの性犯罪者は272人となり、男性の395を下回ることになりますね。
また、元画像では女性の数を3,040万人、男性の数を2,950万人としていますが、この調査の回答者は4,570万人です。回答しなかったひとを含めても4,860万人です。女性の数と男性の数を合計すると調査の全対象よりも多くなるのは一体どういうことでしょうか。
もしかして、トランス女性については16歳以上としているけどトランス女性以外は16歳未満も含めて分母にしているということでしょうか。
なんという外道でしょうか。(2回目)
次に、性犯罪者数の92人についてですが、こちらの方はそもそもソースが見当たりませんでした。
一応、画像に書いてあるSOURCESには、上記の統計以外にもうひとつソースがあるのですが、そちらのほうがはトランスとほぼ関係のない記事のアーカイブが表示されるだけであり、そもそもなぜこれがソースとして記載されているかが不明です。
トランス女性の性犯罪者の数については以前にも記事にしたことがありますが
そもそもイギリス政府は公式にトランス女性の犯罪者率の統計は取っていないこと、刑務所は入れ替わりが激しく、犯罪者の厳密な統計を取るのは困難であることを考慮にいれれば眉唾ソースであることは確実でしょう。
どこかにはなんかそれっぽいソースはあるのでしょうけど、仮になにかしらの根拠があったとして、その統計と上記で挙げられている国勢調査の統計のとりかたはまず間違いなく別であることが推測されます。
そもそも、この図、いちばん重要な「何年の統計であるのか」という部分が抜けていて探しようがないですね。
統計の基本として、統計の取り方の違うデータを混ぜてはならないのが原則だということをトランスヘイターの皆様には知っていただきたいですね。
そもそも、冒頭で取り上げたツイートは「トランスジェンダーをデマの標的に」しているという内容の記事を紹介するツイートに対してつけられているわけですが、まさにトランスをターゲットにしたデマを持ってきているわけです。
余談になりますが、この記事を書いててとあるネトウヨを思い出しました。
そのネトウヨが使ってた画像(の加工)を見てもらいたいのですが、この画像に書かれている数値の元ネタは「外国人犯罪者における国籍の割合」です。母数にそもそも日本人が含まれていないので中国人や朝鮮籍が実態より多く表示されているわけですが、「不明」の部分をネトウヨが勝手に「ここが日本人だろ」とか思い込んで日本人と書き換えたわけです。
いま、トランスヘイターたちが一生懸命「トランス女性の犯罪率は高いんだ」とか宣伝やっているのも、このネトウヨと全く同じ心理でしょう。
リテラシーって大切ですね。
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