12月30、31日の催事のご案内と新刊「クラフトビールの諸相」について
12月30日はJR大崎駅南口改札前にて開催されるおもしろ同人誌バザールに、翌日31日は東京ビッグサイトで開催されるコミックマーケットに参加致します。これらに合わせて「クラフトビールの諸相」という本を新しくリリースすることとなりました。こちらはセルフアンソロジーと言えば良いでしょうか、これまでの4年弱を私なりに総括するものです。私の持つ問題意識や関心の方向性が強く反映されてはいるのですが、とりあえずこの一冊を読むと今のクラフトビールシーンが持つ幾つかの側面についてイメージを持って頂けるのではないかと思います。
思えば4年前、2018年の秋のことです。私が本を作るようになったきっかけがありました。
親しい友人と飲んでいた時、それまでに発表していた数百本の文の他、まだ仕上げていない下書きやアイディアメモがたくさんあるので一度まとめてみたいと言ったら「じゃ、本にして冬コミに出ましょう!」と提案がありました。正直なところ、「冬コミ」と言われて一瞬何のことやら分かりませんでした。ニュースやらで聞いたことはあったのですが、社会に出てからお酒一筋で同人誌やコミックマーケットには全く縁がなく、それがどういうものなのかは全然知らなかったのです。とはいえ、こういうきっかけでもない限りまとめる作業はしないだろうから、「ぜひ!じゃ、一緒に出ましょう」とノリと勢いだけで返事をしてしまいました。残念ながらその年の冬のコミックマーケットには落選してしまったのので、「まぁ、運がなかったな。仕方ない」と諦めて特に執筆も進めていませんでした。
忘れもしない翌年の6月7日のことです。突然こんなメールが来ました。
私に内緒でもう一回申し込んでいたらしく、当選してしまったのです。青天の霹靂。寝耳に水。虚を衝かれるとはこういうことを言うのだな、と身を持って知りました。とにもかくにも、コミックマーケット96に参戦することになり、気がつけばあれからもう4年ほど経ちます。早いものです。
その後コミックマーケットだけでなく、コミティア、文学フリマにも参加するようになりました。私個人の感覚としては出来る限りビール祭りに出るのと似ています。酒屋でもある私としてはビール祭りには通販でビールを販売するだけでは得られない確からしさがあります。モニター越しに聞く「カンパイ」の声よりも、目の前で行われるそれを直に見ることや、その輪に入って一緒になってグラスを上げることは何にも代えがたい体験です。そして、それが生きる気力にも繋がっていることを実感します。「○○○本の缶ビールが売れた」というのは紛れもない事実なのだけれど、その事実よりも「○○○回の乾杯に関わることが出来た」という感覚やそこに生まれる感情を大事にしたいと思うのです。本も同様で、「○○○冊売れた」ではなく「○○○人に自分の言葉が伝えられた」という感覚があります。毎回出来る限り良い原稿にしようとギリギリまで粘るので心身共に極度に疲弊するのですが、それを補って余りある体験なのです。
白夜書房のウェブ媒体・ミライのアイデアに寄稿し、クラフトビールについてこう書きました。
クラフトビールは液体として独立して存在するモノというよりも、コミュニティと相互補完的に成立する動的な現象として様々な切り口で切り取って記述されるべきものであろうということです。そして、それは感性、感情など精神の働きを多分に含むものであるから、数値だけではなく言葉によって描き出されるものに違いありません。
作り手、飲み手各人の想いも様々です。一様でないからこそ多くの考え方が出来ます。ビールそれ自体を考えるだけでなく、その思考がどういうものなのか、何に由来するものなのかを考える事ができるでしょう。ビールも人も時代と共に変化していくのでそれについて思いを巡らすことに終わりはありません。
この場合、終わりが来ないことは辛いことではなく楽しいことです。私がCRAFT DRINKSを立ち上げて7年以上経ちますが、一度も飽きたことはありません。日々新しいものが生まれて刺激に溢れていますからむしろ楽しさは増しているとすら思います。
考えることは楽しく、書くことは苦しいのだけれども、イベントに出るからには書きたい。そういう思いから、自分自身に勝手に課していることなのですが、突発的に決まったものは除いてイベントに参加する際は出来る限り新刊を用意するようにしています。つい今しがた数えて判明したのですが、この4年の間に14冊出していました。時系列順に並べるとこうなります。
テーマは多岐に渡り、様々な角度からお酒を通じて人と社会について論じてきました。コロナ禍もあって人とお酒の関わり方、そして社会の有り様も変化してきたように思いますから15作目の本書ではこれまで私が考えてきたことをまとめ、現段階で言えるクラフトビールの持つ幾つかの側面について過去作を下敷きに論じ直し、人と社会について改めて検討してみました。
ベースはあるにせよ、最終的に9万字強、本文80ページほどになりました。目次からして大盛りなのですが、こんな感じです。ご覧くださいませ。
正直なところ、自分でも暑苦しいと思います。クラフトビールにだけついてよくもまぁここまで色々書けるものだと我ながら呆れたりもするのですが、それほど魅力的であるということだし、まだまだ分からないことばかりだということでもありましょう。書き終えて思うに、何が出来たのかが分かるということは同時に何がまだ出来ていないかが分かることでもあるということです。そして、それはこれからの課題が抽出されたということと同義ですから、自らの情けなさを受け止めつつこれからの糧としていきたいと思います。
ということで、30日の大崎・おもしろ同人誌バザール、31日のコミックマーケットにて皆様にお目にかかるのを楽しみにしております。30日は受付順にスペースが決まるので当日確定次第各種SNSでご案内致します。31日は東京ビッグサイト東館1階ホール5の「ピ39b」です。見本誌もご用意しますのでお手にとってご覧頂ければ幸いです。
なお、イベント終了後余ったものに関してはBASEの本屋にアップします。追ってご案内差し上げますのでご確認ください。
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