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ほのぼの生きる  123_20230521

123の彼

今日は別のことを書こうと用意していたけれど、ナンバーが「123」だったので、予定変更して、恋の話を書くことにする。

25歳の私は劇団員に恋をした。

ちょうどその頃、通信大学に通っており、夏のスクーリング授業を受けるため、上京していた。
私には高校時代につきあった彼の元彼女の友だちが親友になるというへんてこな交友関係があり、1つ下のさっちゃん(仮名)の家に居候した。
さっちゃんはもともと地元で就職したが、東京にあこがれて上京した。上京するときに、わざわざ職場まで挨拶をしに来てくれ、東京に来る時にはぜひ遊びに来てください、と言ってくれた。それを鵜呑みにして、声をかけたところ、2週間ぜひうちに泊まってくださいという。
遠慮のない私は2週間ほどさっちゃんの家にお世話になることになったのだ。以来、ことあるごとにさっちゃんにはお世話になっている。

さっちゃんのアパートへの帰り道、学生の私はさっちゃんの帰宅時間に合わせてあちこちで時間を潰していた。

ある日、たまたま入った電気屋さんでMDウォークマンを眺めていると店員さんに声をかけられた。
その店員さんは、太陽のような笑顔の人だった。
「MDウォークマンがほしんだけど、色を決めかねていて・・・」
「オレンジ色はこたつの上のみかんを思い出しますね」
「?」
「青は海かなぁ。黒はかっこいいけどな、ピンク!今日の色と同じですね!」
(なんか、ぐいぐいくるなぁ。でもなんか悪い感じしない。)
「緑はトトロの森!」
(なんかこの人いい人!!)

「・・・トトロ・・・お好きなんですか?」
「はいっ!お姉さんんもトトロ好きですか?」
「はい、めっちゃ好きです」

MDウォークマンを前にしながら、ジブリの話でめっちゃ盛り上がってしまった。

で、結局、緑色(二人でトトロで一致した)を買うことにした。購入の際、何かで住所と名前を書かなくてはいけなくなったのだが、なんか個人情報を見られるのがとてもためらわれてしまった。怖い、というよりは、恥ずかしい!
ここは東京。この人は東京のめっちゃイケてるお兄さん。
私は田舎から上京中。今日はシティガールを装って、ピンクのワンピで買い物しているが、今日だけだ。これは仮の姿。
ばれちゃうのがとっても恥ずかしかった。

ところが・・・

なぜかそのお兄さんは、急に自分の実家の住所(と現住所)を書き始めた。
東北県〇〇市・・・バス通りなし(バス通りなしというのは田舎を強調したかったのかな?)
実家の住所はこれからいろんなところを転々と引っ越しても実家なら必ず捕まるから、と言ってくれた。
最後に電話番号まで教えてくれた。

「東京にはいつまでいるんですか?」
「今週末まで」
「また寄ってくださいね。良かったら電話もください。」

これは・・・???

東京の男子は皆こうなのか?
若干、混乱中・・・
でも、この人、結局東京の人ではないんだよね、東北県の人だしな。トトロで盛り上がったのが何よりだな。

それは、私の一目ぼれだった。
相手の方は知らない。結局、なぜあの時声をかけてくれたのかは聞いていない。

その日の夜、さっちゃんに話をした。イメージが上手く伝わらない。でも、皆が皆、お店でナンパするようなことはないと思うけど・・・という話であった。

次の日の夜、勇気を出して電話をかけてみた。
彼は、おおっと言って、私たちはもうすでに友だちだと言わんばかりに、驚いた風もなく、ごくごく自然に、昨日の話の続きをした。ジブリの話で盛り上がった。1時間の長電話だった。何かの拍子に彼が劇団員であることが判明した。

それから、文通が始まった。
彼の書く文章はとても文学的で詩的で、感情豊かだった。
メールの文化はあったと思うが、私は彼の手書きの文章が読みたくて、文通にした。
彼のアドレスはXXXX123@XXだった。
私が韓国に3か月行った時も「国際郵便を出すのは初めてだ」と喜んで手紙をくれた。

なんどか彼の舞台も観に行った。花束を持って。
舞台が終わるとご飯を一緒に食べようと言ってくれて、一緒にご飯も食べた。
1回だけ1日使って、デートらしきことをしたことがある。ひたすら広い公園を散歩するというデートだ。でも手はつないでいない。

この関係は一体なんだろうか。
私は一フアンとして、舞台を応援していたが、彼に一度も好きと言ったことがなかった。
好きと言った後、どうしていいか分からなかったからだ。
彼の役者になりたいという夢を応援したいと思っていたからだ。
感情がとても曖昧だった。

一方、彼も私のことを好きだと言ったことはない。
フアンの一人として見てくれていたのだろうか。

どのみち、現実的につきあうことは難しいことをお互いに分かっていたと思う。

結局、二人の関係はぼやっとしたまま、私はシドニーに行くことになってしまった。そして、今の夫と巡り会った。
シドニーから帰国して「彼氏ができました」と伝えた。
頑張っていた仕事と地元を捨てて、当時憧れていた東京には進出せず、結婚して北国に住むことになったことには少し驚いていたようであったが。

結局、私たちは何も変わっていない。
彼は今も独身で劇団員として頑張っている。
舞台のチラシが郵便で届くし、年に1度だけ年賀状を送る。私の年賀状は夫と二人でラブラブの写真付きである。
「今年もお互いに頑張ろう」
これが合言葉である。
機会があれば、舞台を観に行きたいと思う。

以上、しょうもない恋の話でありました。123だー!!!

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