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温泉だよ人生は

 お風呂に入る流儀は人それぞれである。マナーとして、湯船に入る前には必ず全体的に身体の汚れを落とす。それは共通している。私は結構入念に石鹸で全身を隈なく洗ってから入るタイプだ。人によっては、お湯でざっと流して入る人もいる。内湯に入る人、外の露天風呂に入る人、思い思いに温泉を楽しんでいる。

 露天風呂に入り、満天の星空を見上げ、冷たい風を頬に感じながら一人きりの時間を心ゆくまで堪能する。日本には独自の温泉文化があり、ただ身体を清めるだけに留まらず、卓球をして身体を動かしたり、夜中にラーメンを食べたり、畳の上で寝転がったり、付随する楽しみ方は多岐に渡っている。目的は風呂に入る事ではあるが、ただそれだけではつまらない。昔から日本人は風呂も人生もその様に出来るだけ楽しもうと工夫を凝らしてきたのだろう。

 最初に、身体を洗って入るのが礼儀だと言ったが、人生になぞらえれば学校で勉強するのがそれに該当しそうだ。誰もが通る道。学校で一通り、社会のルールや基本的な事柄を学ぶ。もっと徹底したい人は石鹸やシャンプーで洗い、更に気合いを入れたい人は顔にパックをしたりする。しかしながら、洗いに専念していると、湯船に入る時間が少なくなってしまう。さっとお湯で洗っただけの人はもう30分以上前から露天風呂で寛いでいる。そうすると、自分は礼儀として身体を洗おうとしただけなのに、露天風呂に入るひと時を忘れて、前準備で疲れてしまっている事に気づくのだ。

 滅多に無い貴重な時間を過ごそうとするならば、本当に大切な事は、湯船に入ってゆっくり夜空を見上げる事なのではないだろうか。勉強は大切である。それを用いて人を幸福にし社会に役立てなければ何のために人生という温泉リゾートに来たか分からなくなってしまう。湯船に入っても仲間同士ぺちゃくちゃお喋りする人を苦々しく思う事もあろうし、お湯に長時間入り過ぎて湯あたりする事もあるだろう。そんな時は湯船から出て涼んだり別な湯船に移ればいい。人生風呂は何とでもなる。

 お風呂から脱衣所に戻り、服を着て髪の毛を乾かす。血行が良くなり肌もツルツルになった。心ゆくまで楽しみ身も心も解された。また違う温泉にも行ってみたいと思ったのであった。

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