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スピッツのススメ① スピカ

今回は、スピッツの楽曲「スピカ」にまつわる個人的な思い出と個人的な解釈を書いてみます。

「スピカ」との出会い

スピッツを聴き始めたのは、中学時代。寮の先輩がCDを持っていて、部屋で流れていました。
その後、中学3年で仲良くなった同級生が熱烈なスピッツファンで、アルバムを順番に色々貸してくれました。
そして出会ったのが「スピカ」です。

ハウリング音で始まる前奏はちょっと苦手。でもサビがすごく良くて、何となく結婚を連想する歌だなと思いました。

それから十数年後、結婚式準備の際にプランナーさんから式の中で使いたい音楽を聞かれ、真っ先に思いついたのはこの曲でした。
明るいけれど、幸せの絶頂にいるようなテンションの高さでもない曲調。きれいな言葉ばかりが並んでいる訳ではないけれど、全体を通せば前向きな印象が残る歌詞。
結婚も結婚式も嬉しいことだけど、あくまで現実の生活の一部でしかないと思っていた私には、すごくピッタリ来ました。

披露宴のラストに流すダイジェスト映像で使ったのでDVDにも残っていて、個人的には非常に思い入れのある曲です。

個人的解釈

そんな「スピカ」の歌詞の個人的解釈を書いてみようと思います。

先に断っておきますと、私にとってスピッツは一番好きなアーティストではありますが、私自身はライブに行ったこともないファンもどきに過ぎませんので、的外れでも「にわかファンがなんか言ってらぁ」と寛容に受け止めていただけたら幸いです。

この坂道も そろそろピークで
バカらしい嘘も 消え去りそうです
やがて来る 大好きな季節を 思い描いてたら

「スピカ」作詞:草野正宗

そろそろピークに差し掛かる「この坂道」とは、人生のことであろうと想像できます。
年代的には、20代半ばくらいでしょうか?もう社会的には子供ではないけれど、精神的には子供時代の延長線上にいるような、まだまだ未来は明るいと思える人生登り坂の時期。

でも、その坂道は頂がもう見えている。登り坂にいる時は先行きを様々に夢想できたけれど、頂上に辿り着いたら、答えが見えてしまう。思い描いたことが「バカらしい嘘」になって消え去ってしまうかも、という将来への漠然とした不安がある状態だと思います。そんな不安や焦りを取りあえず傍に置いて「もうすぐ春だなぁ」とか考えている、そんな時を想像します。(たしか、スピカは春の星だったはず)

私自身は27歳頃がこんな気分だったように思います。念願だった海外駐在が2年目に入り、次の目標を見つけなければ、結婚や子供などライフステージのこともそろそろ考えなくては、と何かに急かされるような、そわそわした気分でした。

ちょうどいい頃に素敵なコードで
物凄い高さに届きそうです
言葉より 触れ合い求めて 突き進む君へ
粉のように飛び出す せつないときめきです
今だけは消えないで 君をみつめてよう

「スピカ」作詞:草野正宗

そんな気分の時に「君」に出会った、という話かと思います。コードというのは、ギターのコードのような音楽的な表現だと解釈していますが、素敵な出会いによって、自分は思っていたより高いところへ行けそうだ、という期待感を感じます。「君」は、直感的でエネルギッシュな人のようですね。

そんな人への思いは「粉のように飛び出す切ないときめき」。すごく斬新ながら身近な表現で、秀逸なフレーズです。小麦粉の袋を勢いよく開けてしまった時のように、薄く広く、でも止めようなく、ときめきがわっと飛び出していく様が目に浮かぶようです。

その後に続くのは決意表明。恥ずかしさや照れ臭さで、もしくはうまくいかないかもしれない不安で、逃げ出してしまいたいのをぐっとこらえて「君」を見つめていよう、と歌っています。

素敵な人と出会い、飛び出すような恋心を抱き、最後にはそれをぐっと自分の中で固めて「この人と向き合おう」と決意する、という過程でしょうか。プロポーズの場面とも結婚式の誓いとも捉えられるし、もっと前の段階なのかも知れません。

やたらマジメな夜 なぜだか泣きそうになる
幸せは途切れながらも 続くのです

「スピカ」作詞:草野正宗

「やたらマジメな夜」には何があったんでしょうか。将来について意見がぶつかり合ってしまったのかも知れないし、仕事やその他のことで頭がいっぱいで、二人の時間が持てなかったのかも知れません。

好きな人でも長く時間を共にすれば、楽しい時間、幸せな時間ばかりではないはず。それでも一番の最後は「幸せは途切れながらも続く」と結ばれており、二人の未来を前向きに描いています。

この辺りも、言葉選びのセンスがすごいなと思います。ちょっと遠回しで、その分却ってリアルな心情が感じられるような気がします。
私のような素人では「泣いた日もあった、でもあなたと幸せになれるって信じてる」とか書きそうですが、これだと芝居がかっているというか、クサい感じになりますよね。

夢のはじまり まだ少し甘い味です
割れものは手に持って 運べばいいでしょう
古い星の光 僕たちを照らします
世界中 何も無かった それ以外は

「スピカ」作詞:草野正宗

長くなってきたので、少し割愛して二番のサビです。

私は勝手にこの歌を結婚の歌だと定義しているので、「夢のはじまり」は新婚とか婚約中の時期だと思っています。甘いけれども、壊れやすい幸せな日々を「割れもの」として、大切に手で運ぶように続けていこうとしているのでしょう。

何億年も前の星の光が、暗い夜に私たちを照らすように、恋人時代の思い出がその後の結婚生活においても光となる、という感じでしょうか。

そして、二番の最後は過去形で「世界中何も無かった」となっています。今はもう、そうではないのかなと思わされます。すでに結婚して数年経っている時点で、出会った日からのことを振り返っているのかも知れません。

そうすると最後に繰り返される一番の歌詞「続くのです 続くのです」の重みが増すような気がします。これまでそうだったように、これからだって、たとえ時には途切れたように思えても、きっとずっと幸せは続いていく、という願いが込められているのだと思います。

最後に

この歌は、結婚後数年経って結婚当初を振り返った時の心情を歌っている、と解釈しました。
でも、実際にはそのような場面を経験したことのない人が、想像で書いているんだと思います。

それが丁度、結婚前に「結婚生活ってこんな感じなのかなー」と考えていた私にはピッタリはまって、結婚式に使用させていただきました。

さて、実際に結婚後数年経った私から見ると、実際の結婚生活には、「幸せは途切れながらも」では済まないくらい殺伐とした空気になる時も多々あります。でも、そんな時こそ「割れものは手に持って運ぶ」ような気持ちが大切なのかも知れません。

結婚をテーマにした歌は、そこがゴールかのように華やかに描かれたものが多く、結婚式自体も新たなスタートというより何かの集大成のような構成になっています。
そんな中で、この歌を結婚式のラストに使い、新しい家族のスタートを切れたことは、良かったと思っています。

これからもずっと大切に聴いていきたいし、たまには初心を思い出して、私にとっての「君」である夫のことも大事にしなくちゃな、と思います。

[曲の情報]
タイトル:スピカ
作詞作曲:草野正宗
収録:「楓/スピカ」1998年7月7日
   「花鳥風月」1999年3月25日

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