見出し画像

#7 ワークショップの設計は「メインパート」から!

こんにちは、ワークショップデザイナーの相内洋輔です。2024年もどうぞよろしくお願いいたします!

年始はWordPressのブログをリニューアルして過ごしていました。テーマを変更したため大掛かりな手入れが必要で、元旦から連日パソコンと睨めっこでした!

特にレイアウト崩れが顕著だったので、公開済みだった約340記事をひとつずつ確認しました。

久しぶりに昔の記事を読んだことで、当時の記憶がぶわっと蘇ってきて、とても楽しい時間でした!

リニューアルしたブログ アイデア共創LABO


連続性の中では気づけなかった「文体」の変化

同時に、ブログをスタートした2018年から2024年の現在に至るまで、文体やトーンがたびたび変わっていることに気がつきました。

独立初期は学生向けのワークショップが多かった背景もあり、元気なお兄ちゃんキャラの文体。ブログ内に埋め込まれていた当時のツイートを読んだら、投稿者名が「相内洋輔 |人生の火付け人」となっていて、恥ずかしくて自分の顔から火が出そうでした…(笑)

コロナ全盛期の2年間はやや迷走していた感じで、決まった構成を持たず、エモさ重視の文章を書いていました。あの頃は先が見えなくて、家に籠もってばかりだったから、そういう気持ちになるのも分からなくないですね。

現在はほとんどのご依頼が組織開発・社会人向けのトレーニングになってきたので、落ち着いたビジネス向けの文体で、構成もFMT化されつつあります。

自分としては「変わってきた」意識が特になかったのですが、俯瞰して記事を見比べてみると違いが顕著で、すごく驚きました

ポジティブに捉えれば、ワークショップをご提供する対象や、環境に自身の年齢に応じて変化し続けているという点では、とっても健全ですよね。

フォーム無き継続に成果は伴うか?

でも一方で、今の時点から振り返って見つめてみれば、「もう少し早期に自分のフォームを固められなかったものかな?」と勿体なさも感じました。

なぜなら、コンセプトに沿って、統一された文体で記事を積み重ねているほうが、発信の価値が高まるからです。

今回はWordPressのテーマ変更に伴い、ブログタイトルとコンセプトにも修正を加えたので、なおさら強く思いました。

バラエティパックだから面白い読み物サイトと認識されるというケースもあるでしょうが、私の発信目的の一つは、クライアント候補からの信頼や問い合わせを得ることにあるので、コロコロ文体やキャラが変わっていない方が好ましいと思いませんか?

『うらおもて人生録』 より プロはフォームの世界

私はあまり麻雀はやらないのですが、坊や哲として有名な色川武大さん(阿佐田哲也さん)が書かれた『うらおもて人生録』が愛読書で、よくお風呂上がりに読んでいます。プロの賭博師として戦後の混沌とした日本を生きてこられた方だけに、言葉の重みが違うんですよ。

この『うらおもて人生録』には、プロはフォームの世界という章があります。

どの道でもそうだけれど、プロはフォームが最重要なんだ。

フォームというのはね、今日まで自分が、これを守ってきたからこそメシが食えてきた、そのどうしても守らなければならない核のことだな。

気力、反射神経、技、それ等の根底に、このフォームがある。
まず自分流のフォームをつくらなければならないんだがね。

それは一生を通じて自分の基礎になっていくものだから、
あやふやな概念で組み立てるわけにはいかないだろう。

うらおもて人生録

私はこの箇所がとりわけ好きで、いつも心に留めています。プロのワークショップデザイナーとして毎年60~70件の場作りを続けている上で、忘れてはならない観点だと思うのです。

ただ、先ほどご紹介したブログ構成の変遷については、まだ「これを守ってきたからこそメシが食えてきた」という核を見出せていないように感じられたのですよね。

私は残念ながら文章のプロではないので、時間がかかるのは仕方がないかもしれませんが、長く継続していく構えでいる以上、早々に機能するフォームを身につけたいなあと思うわけです。


ワークショップの設計はゴールから逆算する

さて、前置きが長くなりましたが、今日お伝えしたいテーマは「ワークショップの設計プロセス」についてです。

結論から書くと、ワークショップの設計は「ゴールから逆算」して「メインパートから作り始める」という考え方が最も機能する、と私は考えているんですね。

再び『うらおもて人生録」からフォームに関する言葉を引用します。

フォームというのは、これだけをきちんと守っていれば、いつも六分四分で有利な条件を自分のものにできる。そう自分で信じることができるもの、それをいうんだな。

ちがういいかたをすると、思い込みやいいかげんな概念を捨ててしまってね、あとに残った、どうしてもこれだけは捨てられないぞ、と思う大切なこと。

これだけ守っていればなんとか生きていかれる原理原則、それがフォームなんだな。

うらおもて人生録

ワークショップは博打ではないので勝ち負けは存在しませんが、良い場であったか否かは明確に成果が出ます。

その良い場を作るために、これさえ守っていれば六分四分で結果が出る、と私が心から信じられる原理原則の一つが、ワークショップの設計は「ゴールから逆算」して「メインパートから作り始める」なのです。

ですから私は、この思考手順を「ワークショップに関わる大半の方に身につけていただきたいなあ」といつも思っているんですよね。

ワークショップデザインに不慣れな方の傾向

というのも、ワークショップデザインの初心者ほど、これとは真逆の順番で設計を進め、頭を悩ませている傾向が強いと感じるから。

もう少し解像度を高めて書くと、不慣れな方はこんな手順でワークショップを設計していることが多いようです。

① ワークショップの目的やゴールに対して
② 自分が知っているワークか、すぐに思いつくワークを
③ 開幕からラストに向けて前から順番に並べていく

全然悪くはないんですけれど、これだと「肝心のメインパート」が疎かになってしまうことが多々あるんですよ!


ありがちなケース

例えば、頭から順番に考えていく過程で疲れ果ててしまって、メインパート作成に集中できなくなってしまう、疎かになってしまうケースは比較的よく見られます。2時間程度の短いワークショップをデザインするにしても、不慣れな場合は多大な時間がかかってしまうものです。

あるいは、ワークを配置することに意識が取られ、全てのワークを並列に扱いすぎてしまって、起伏やメリハリのないタイムラインになってしまう方も目立ちます。こうしたワークショップ案はずっと平坦で、どこで盛り上がるべきなのかが判然としません。

また、時には導入パートを潤沢にしすぎて、メインパートにかける時間が極端に少ない、尻切れとんぼのような進行案になってしまうことも散見されます。最初にドカンと打ち上げ花火が上がって、あとは静かなワークショップより、後半が山場のデザインが良いですよねー。

開幕から順に考えて行くと、全体が見通しにくく、修正の自由度も低い

そして何より、「開幕 → ラスト」の順番で組み上げていくと、ワークショップ全体を見通した時間配分が難しくなります。

前の方から順番に時間配分を決めていくため、各ワークの時間を積み上げてみたら、後半の時間が足りていなかった、という事態を引き起こしやすいのです。

特に上述した「導入が潤沢になりすぎてしまった」ケースなどは目も当てられません。

ワークショップ設計の最終盤で、「冒頭が手厚すぎて、全体の時間が足りない…?」と気づいてしまった時の絶望と言ったら…。

また、前から順に「Aを実施する」→「その流れでBを実施する」→「そのうえでCを実施する」といった形で思考が進んでいくため、

(ちょっとBを変えたいな)と思った時に、うまく修正できないことがあります。

どういうことかと言うと、Bを違うワークに差し替えると、

・ 前後のAとCのワークとの整合性が取れなくなり
・ 全パーツの修正が必要

という事態を招くことがあるのです。これだと手戻りが多すぎて、修正の自由度が低いんですよね。

ワークショップはメインパートから考え始める

そこで私がオススメしたいのは、下記の手順です。

① ゴールに到達するために必要な「メインパート」から考える
② メインパートが機能するためにはどんな前後のワークが必要か考える
③ タイムラインに落とす

こんな風に考えてみていただくと、メインパートを中心にして前後のつながりが設計されるので、ワークショップに統一感が出るのです

また、最も盛り上げるべき部分が明確になり、自然とワークショップの流れに起伏が生まれます

これらがワークショップの対話を弾ませ、成果を深めてくれるわけです!

そしてメインがどっしりと決まっているため、前後のワーク案を考え直すことも容易です。少なくとも「全部やり直し!」という事態は避けられます。

喩えると、料理のフルコースをデザインする際、まず最初にフルメインディッシを決めて、

それからメインが引き立つためにはどんな前菜やデザートがフィットするかを考える

ということに近いのではないかなと思います。ここで言うメインディッシュとは、もちろんワークショップのメインパート。前菜やデザートは、アイスブレイクや成果のわかちあい等のことです。


メインが決まると、他も決まるのです!

まとめ

ということで、今日はワークショップの設計は「メインパート」から!という記事を書かせていただきました。

もし、「普段はワークショップを作らないけれど、たまたまこの一回だけ」という方は、正直どんな手順で考えたっていいと思います。

ですが、良いワークショップを継続して量産したい方には、ぜひ「ゴールから逆算」して「まずメインパートを決める」という思考手順をモノにしていただきたいです。きっと効率も上がり、ワークショップの成果も向上します。

そのうえで、ワークショップは冒頭から順番に設計していくか、メインパートから設計していくかを試行錯誤いただいてて、自分に合った方をフォームにしていただければいいなと思います。

『うらおもて人生録』 プロはフォームの世界 の章末は、

ことわっとくが、フォームに既製品はない。自分で手縫いで作るんだよ。

うらおもて人生録

という一文で終わるのですが、私も本当に、その通りだなあと思うから!


共創ワークショップデザイナー
相内 洋輔

■ワークショップのご依頼などはこちらから



この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?