父が亡くなりました‐終

 それ以降はお通夜、告別式と一通りの過程を経て、市役所に手続き関係で訪れたり、親族や関係各所に電話やメールで連絡を取り、お世話になった介護士や医師にお礼の品を送る為に百貨店に向かった。今、これを綴っているのがひとしきり終わった8月21日の夜。

 目まぐるしい毎日でありながら、1か月以上の時間が経過しているようにも感じる、短くて長い日々。もちろん、気持ちの整理は出来ていない。ふとした瞬間に泣いている。どれだけ泣いたって、涙は枯れない。告別式の最後に母は慟哭し、僕と兄はむせび泣いた。

 洗面所に父の髭剃り、お風呂場に父のシャンプー、玄関に父の靴。これまで同様に当たり前に全てがあって、父は家にいるように感じている。もとい、父は家に居てると思っている。ただ、父の声だけが聞こえない。僕に出来るのは、時の経過とともに、あらゆる物事と思いが心に染み込んでいくのを待つだけなのだろう。

 この悲しみは、父が最後にくれたプレゼントだと思う。そしてまた、僕が人生を賭けて答えを探す、父からの最後の宿題でもあると思う。14年間、父は癌と寡黙に真正面から戦い続けたファイターだった。15ラウンド目はリングに上がることは出来なかったが、これは負けではない。勇退なのだ。

 ありがとう。

 さようならは言わない。

 いつかまた、そっちで会おう。


あとがき

 介護士、看護師、医師、葬儀会館の社員、お寺のお坊様、斎場の職員、すべての方々に心より父の分も含めて感謝申し上げます。本当に大変な仕事に日々従事されている事を、この身を持って勉強させて頂きました。皆々様のこれからの人生が素晴らしいものになることを願っております。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?