見出し画像

21エモンは嘆いている。

 本棚の整理をしていると奥から藤子不二雄先生の「21エモン」が出て来た。装丁も劣化が激しく、セロテープでつぎはぎしている。が、それでもなお処分しなかったのは、とにかく好きだったからだ。今にして思えば、自分の好きな要素のみで出来ている漫画なのだ。旅行が好きで、宇宙が好きで、未来という言葉が好きな僕には、未来のホテルを舞台に宇宙に憧れる21エモンは子供の僕そのものだったのかもしれない。そんなことを思いながら、この週末は全5巻をじっくり読み返した。
 やっぱり面白い!宇宙がグッと身近な未来の東京を舞台に、想像を超えた環境の惑星に住む宇宙人がホテルを訪れたり、そんな惑星で21エモン達が冒険を繰り広げる。面白くない訳がないのだ!!

去年の型が2017年。つまり、21エモンの舞台は2018年!!

 が、読み返して最大の衝撃は上の通り、舞台が2018年なのだ…。OMGと書いてオーマイガーである。もう5年前やん。過去やん。1巻の裏を見ると、初版が昭和59年、つまり1984年なのだ。今から39年前。1981年生まれの僕が読んだのが6歳~7歳とすると、35年前前後。その時の僕は、35年後の自分など想像も出来ない一方で、2018年にはこんな未来が来るのかと、心躍らせていたハズだ。

 

 現実の2023年は、21エモンの世界に近づいている。エア・カーのようにもうすぐ車が空を飛び、立体テレビもほぼ実現している。いや、それ以上にメタバースで仮想空間さえ既に存在し、授業はコロナ禍要因とはいえリモートで行われた。ゴンスケやオナベそのものとは言えないまでも、2足歩行のロボットも現実にいる。AIやchat GPもしかり。35年前に夢見た世界に近づいているのだ!
 

日本州とは地球全体が国家として成立している証じゃないか?

 いや、本当にそうだろうか?漫画の中では地球が国と成立し、日本国は日本州となっている。世界国家の一州として機能しているわけだ。ところが現実はどうだろうか。領海を争い、島の領有権で一触即発。海にミサイルを発射して威嚇し、海を汚す。世界中で戦争は続いている。選挙結果は嘘だといって争う。世界の至る所で争いは増えている。政治家は選挙に勝つ事に奔走し、いつまでも汚職は無くならない。発言を取り消すなどの幼稚な撤回を繰り返す。 
 行き過ぎた市場経済が貧富の差を拡大させ、貪欲な利益追求で地球の資源を食い尽くし、その結果、気候変動や海面上昇が止まらず、だんだんと地球そのものに住めなくなってきている。それでも、世界の指導者達は手を変え品を変え、言葉巧みに経済発展を止めようとはしない。世界中がともに気候変動に取り組まなければならないことは明白なのに。既得権益を守ろうとし、誰かがどこかで環境保全の動きにブレーキをかける。環境を守らなければ、その既得権益そのものが存在する為の地球が存在しなくなる、ということを理解出来ない訳ではなかろうに。
 別に社会主義に基づいた国家にならなければならないと主張したいのではない。経済の成長スピードを緩めなければならないのだ。それが貧富の格差を解消していくことに繋がり、貧富の差から生まれる紛争や戦争を抑制していく。一例だが、ガソリン車が環境に悪いと言って、電気自動車を「次から次へ」と生産するのは環境に良いわけではない。経済成長の成長とは、地球資源の食いつぶしと「等価」なのだ。永遠に成長し続けるのは不可能であり、それを唯一可能とするのが宇宙資源に手を出すことなのだ。故に、経済大国が宇宙に進出している理由がそこにあるのだ。宇宙への進出は人類の夢である、という謳い文句に今一度疑問を持たなければならない。それは単なる人類の欲望だ。それを宇宙の神秘を探ろうとする活動と混同しては絶対に駄目だ。
 もし21エモンが現実の2023年を見たらどう思うだろうか。世の政治家達は綺麗事だけでは世界は回らないと、常套文句のように言うのだろうか。綺麗事で世界が回るように目指す、と言うのが目指すべき高みではなかろうか。 そして、僕は35年前の僕自身に謝らなければならない。心躍らせた世界とはかけ離れた35年後が待っているよ、ごめんな・・・と。目指すべき未来はもう既に過去となった21エモンの世界だ。いつの日か、過去に向けて未来は戻れるのだろうか?

21エモンが目指す宇宙は、僕らの宇宙には無い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?