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卒業の季節

 3月の今頃は中学、高校、大学、専門学校などどこも卒業を迎えているであろう。本校も本日卒業式だった。共に時間を過ごした生徒が巣立つその姿は頼もしく、そして寂しさも覚える。それは日本人誰もが共通した感情なのかもしれない。

 思い返してみるとアメリカで卒業式典で涙する人はいなかった。人生の次のステップが輝かしいものになると確定しているような喜びを卒業式では表現する。日本という国は他国と比較して過去に未練を感じやすい人種なのかもしれないと思ったりもする。

 しかし、今まで繋がりがあった人が自分の基からいなくなるということに寂しさを感じるのは伝統的に「一期一会」を大切にしてきた日本人の宿命でもあるし、美徳なのかもしれない。アメリカに住むと留学生が来たり帰ったりするのでいつの間にか別れというものに慣れてしまった自分がいる。それはそれで良いと思っていたが、人生も半分を生きると人とのつながりというものがこんなにも自分を苦しめ、同時に幸せも感じさせてくれていたのかと気づかされる。人間関係は人生のスパイスなのだ。

 この時期になるとあれこれと考えてしまうが、一番伝えたいこと。それは自分の人生に自分で責任を取るようになればいつでも道は切り開かれるということ。人間関係に慣れると、「なぜあいつはやってくれない!」「なぜあいつは動かない!」「なぜ自分ばかり!」となる。自分が目指していない人のことばかりに目を向けていると人生が主体的なものから受動的なものへと変わり、いつの間にやら毎日が窮屈に思え、生きづらさを感じるようになる。自分が目指す人のこと以外に目を向けてはいけない。時間は有限なのだ。その有限の時間を自分を進化させるために使いたくないか?

 もしも次のステップが自分の望むものでなかった場合、遠慮することはない。移れば良い。今の世の中、パソコンの操作方法を取得し、自分が今叶えたいと思えるアイデアさえあればいくらでも実現でき、生きることができる。我々の時代に比べれば本当に生きやすい世の中になっているのだ。

 しかし、そのような生き方をしたいのであれば自分の人生は自分で決めるという覚悟が必要だ。学校では、あなたの決断を咎めたり、後押ししてくれたり、そういう素晴らしい環境をいつの間にか提供していてくれた。自分がいつの間にかその環境に慣らされてしまっていたとまずは自覚することだ。そのような環境がなくなることがどれだけ大変なことか、それを覚悟する必要がある。何かイベントをするとき、一つの掲示板にポスターを貼っておけば何百人と自然に見てくれたのが、その掲示板から自分で交渉して探さなければならない。個で生きるというのはそれだけ大変なことだ。

 最後に組織に属するということの利点も伝えておきたい。組織に属すると自分の叶えたいことの賛同者を得やすい。個で生きると自分のアイデアに自分でお金を出さなければならないし、人も集めなければならない。組織であれば、お金は組織が出してくれるし、人も当てがってくれる。その代わり上を通さなければならないのだが、個人で生きる人生に「上を通す」という一つの面倒を加えるだけで、組織の利点を最大限に得ることができる。

 何よりも失敗しても大したリスクにはならないということも組織の利点といえよう。上を通して実現したことであれば上手くいかなく損失を出しても、最大で「始末書」を書くぐらいで済む。場合によっては給料カットもあるかもしれないが、全額カットなどはほぼ無い。個人で生きるとそれは自分の生活に直結するかもしれない。ひょっとしたら公共料金の支払いもできなくなるかもしれない。もちろん、プロジェクトが成功しても会社がその利益を得て、あなたの給料はほぼ変わらないか、金一封をもらえるぐらいだが。

 どちらにもメリット、デメリットはある。要はどちらが自分に向いているかだ。私は世間がいい加減に勧める「起業」を勧めるつもりはない。起業したいのであればまずは組織に属して仕事のノウハウや人脈を作ってからの方が格段に成功する可能性が上がると思っているからだ。一部の天才はいきなり起業でいきなり成功するかもしれないが、ほとんどの人は無駄なリスクしか取れない。

 「組織で生きる」「個で生きる」どちらも正しい。一番正しく無いのは個で生きたいのに組織に属していたり、組織で生きたいのに個でしか生きられない矛盾が生じる時だ。人生の次の選択肢。あなたは何を望むか?そのためにどういう努力をしてきたか?卒業おめでとう!それでも、「あなたの次の人生のステップは輝いている」と言おう。なぜなら、人生は今日が一番若い日だから!



世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。