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大阪なおみ選手の辞退と教師問題

 テニスを普段から見るわけではないが、ニュースウオッチャーとして今一番気になるトピックはこの表題。全仏オープンの試合後記者会見をボイコットした一件である。最初、この件を報道で見た時、皆さんはどう思っただろうか?ニュースを見ている限り、この行為を好意的に捉えた人はほとんどいなかった。もちろん、私はこのことを報道で知ったので、追い出されたメディアが彼女の行動に好意的な記事を書くことはないだろうが。

 結局6月1日のニュースを見ると「長い間うつに悩まされ、その結果の行動」ということで落ち着いた。罰金付きで。

 とった行動自体はとても賞賛されるものではない。記者会見を受けるということはエントリーする前から定められたルールであり、すでにそのことを知った上で大会参加を決めているはずだ。それを、自分の意思に沿わないからとボイコットするというのはやはり問題である。しかし、その理由が目に見えにくい精神疾患だったというのであれば、いたたまれない。何か良い手段は他になかったのか?と残念に思う。記者会見は怪我とか特別な理由があれば参加しなくても良い決まりになっているようなので、精神疾患もその解釈で罰金を取り下げてもらえないだろうか?

 今回の件に限らず、うつ病の増加は社会的問題となっている。私が身を置く学校でも教員の離職者は増加傾向だ。

 業務量の多さが一つの問題として挙げられているが、一番大きな問題は人間関係だろうと現場レベルとしては感じる。教師を目指した頃は毎日目の前で輝きながら授業をし、自分が悩んだ時には親身になって相談に乗ってくれた。そんな恩師に憧れて教師になったものの、実はストレスの連続。クラスでの問題も横の人間関係の問題も山積し、誰かに相談したくても全員が同じような状況なので新人のケアーにまで手が回らない。挙句の果てには上司も自分を責める。ここまでは言い過ぎかもしれないが、社会は外から見ているのと内から見るのではやはり違う。特に教師という理想色の強い職種を目指すような人たちだからこそ、このような労働環境の現実は受け止めにくいのかもしれない。ちなみに、教師が1人で授業に向かうストレスレベルは戦場に行く兵士と同じだと聞いたことがある。

 社会というのは自分のことは棚に上げて人には完璧を求める。特に日本社会は。その昔、天皇が現人宣言(自分は神ではないという宣言)というのを行なったと聞くが、教師も必要かもしれない。教師も人間であり失敗も成功も積み上げて成長していくものだ。そして、その他多くの人と同じように自分の大切にしなければならない人生もある。命に関わること以外で失敗などない。全ては経験なのだ。それを多くの人が肝に銘じるだけで、先生のメンタルヘルスも向上するし、生き生きと仕事をする姿を見る見る生徒たちへの影響は計り知れないものがあるだろう。

 大阪選手にも「精神的に辛い時は休んでも良い。」という風潮がこの世界にあったら、きっとこのような大きな問題は起こらなかったのではないかと思う。

世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。