ああっ女神さまっ

精細なメカ描写と美麗なキャラクターデザインに定評のある藤島康介先生の言わずと知れた代表作である。
藤島先生の絵だ〜となるのは少し経ってからで、最初の方は別人かと思った。マジで。

「ああっ女神さまっ」はファンタジー作品でありながら、メカ描写を含め工業的な色が強く、それも専門性の高さがあるから面白い。
特に女神が資格制度によって認定されるというのは斬新だと思ったし、それでいてウルドは魔族の血が流れているから資格が取れないだとか、なるほど現実の資格制度とファンタジー要素は決して相反する要素ではないと感心する。
むしろ資格制度のない神様の類は神様としての定義が難しいような気もしてきて、似たような神様系の活躍するファンタジーが粗く見えたりもする。

メカ関係の描写が丁寧な一方で、ドラマ性もかなり繊細に描写されている。
僕の好きなエピソードに三姉妹の末っ子・スクルドが自分だけ天使を喚び出すエピソードがあるのだが、それまで垣間見えていた点が繋がる巧妙な構成や、葛藤するスクルドに各々が各々らしい言葉を投げかけるところ、それら女神たちの心情描写が人間と同じように成長していくというのがとても好きだ。
このエピソードでは主人公・螢一がリンドから天使を任されることで、それまで天使はどういった存在なのかよく分からなかったものが読者と共に知ることになり、このパズルピースがハマった気持ち良さと設定の丁寧さに脱帽する。
因みに、数多く登場する女神の中でリンドが一番カッコ可愛い僕の推し女神である。

メカ・ファンタジー・ロマンス・コメディー・ヒューマンドラマ……と数多くの要素を破綻なく詰め込んだこの作品は、ズラリと並ぶ壮観な巻数があっという間に読了してしまうほど痛快で、「20巻以上続くマンガは飽きる」と持論を展開する僕に例外を教えてくれた。
アニメ等のメディアミックスも多く、今でもどこかでコンテンツが生きてるんじゃないかと思ったりしてしまう。

今でもたまに読みたくなるのだが、何しろ巻数が多いので、実家の本棚の奥深くに眠っている。
取り出すと片付けるのが少し厄介で諦めてしまうのだが、この繊細でアナログの良さが強い絵を電子書籍で読みたいとは思えないので難しい。

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