IQ探偵ムー

「IQ探偵ムー」はジャイブ社・ポプラ社からカラフル文庫レーベルで出版された児童向けの推理小説シリーズで、姉妹作品に「IQ探偵タクト」がある。
御長寿児童書といえば「黒魔女さんが通る!!」なんかが有名だが(記事執筆の前年ぐらいに完結したと思う)、「IQ探偵ムー」もかなり巻数を重ねた作品である。

出会いは書店に平積みされた表紙。
まだまだ女の子に興味の薄い頃ではあったが、表紙に描かれたヒロイン「茜崎夢羽」の不思議な雰囲気と衣装デザインに惹かれ、柄にもなく衝動買いしたことを覚えている。
確か7巻だと思う。

児童書なので殺人事件のようなものはなく、主人公たち小学生の周りで起こる「おや?ここに飾ってあった絵が無いぞ?」とか「駐めてたチャリ盗まれた!」とか、小さな謎を解いていくものが大半だ。
中にはミステリー大好きおじさんからの事案発生もあるが(笑)

15巻ほど買い集めた辺りで僕も地元を離れ、以降しばらく疎遠になっていたのだが、完結を知って急に懐かしく思い、オトナパワーでまとめてAmazonで買い揃えた。
中には中古でしか手に入らず、価格も高いことがあったものの、そもそもの始まりが衝動買いで、揃えると決めたのも衝動なのだから、最後まで衝動のままに買い集めた。

主人公たちは10歳で、今の僕は(恐ろしいことに)3倍近く生きてきた。
読み進める中で「ああ、俺もそれやってた!」とか、「そうそう、大人ってのはいっつもそう!」と自分と体験が重なるのだから、まるでガキの頃の自分を見ているかのようでとても微笑ましく、温かい気持ちになる。
その中で、小学生の等身大の悩みを読んでは、「それを乗り越えて俺はここまで生きてきたんだな」と染み入ることもある。
無邪気な好奇心のままに突き進んでいく主人公達を見守っていると、自分もその仲間の一人のような気がして、現実で伸し掛かる大人の苦労を忘れ、童心に帰って一緒にワクワクできる。
著者の深沢先生も読み手が物語の中の一人であるように書かれているとのことなので、まんまと術にハマっては大人気なく読破しました。
……オッサンに片足を突っ込んだ独身男性が。

俗に言う「サザエさん方式」で物語は紡がれている。
推理モノだから、もしかしたら時系列がバラバラなのでは?なんて考えたりもしたが、そうではなさそうだなというのと、そこまでするのは野暮かなと思ってやめた。
健やかな少年少女のその後を読みたいような気もするが、このままでいて欲しい気持ちもある。
僕の中で物語とは「一定の時空間の中である視点から見て起きたドラマを切り取ったもの」と定義している。
だから、きっとこの物語の前にも後にも時間は流れているだろうから、ここで完結している意味と余韻を噛み締めながら、子供達がきっと素敵な未来を歩いていると信じている。

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