ブラック★ロックシューター(OVA版)

僕が一番オタクオタクしていた頃……というと印象が悪いのだが、黒歴史時代を脱した直後はそれしか楽しみがなかった頃、めちゃくちゃトガッた作品が出てきた。
それがOVA版の「ブラック★ロックシューター」(以下「BRS」)だ。
何と言っても原作はたった一曲のボカロ曲で、人気こそあれどたった5分の絵と歌だ。
アニメオリジナルに性質は近いが、それともまた異なる生い立ちが強烈で、一体どんなものが出てくるのか興味津々だった。
しかも「メガミマガジン」等のアニメ雑誌に特典でついてくるという太っ腹っぷりで、そんなイカレた企画をスルーすることなど僕にはできなかった。

後にTVアニメ版も放送されるのだが、それに比べてテーマがシンプルで単体の作品としてはOVA版の方が僕の中では評価が高い。
中高生にありがちな交友関係の悩みや距離感は当時の僕の年齢にマッチしていたこともあり、とても共感があった。
原曲は自身の心情変化を歌う内容だったが、劇中でも主人公らの心と連動した表現がされていて、誰しも脆さや葛藤、あるいは他者への攻撃的な気持ちが別の世界のように切り分けて描かれたブラック★ロックシューター達の戦いの日々に現れている。
テーマも原曲もしっかり写したとても良い演出だと思う。

残念なことはここまでコンテンツへのリスペクトがありながら、オトナの事情で原曲は使われなかったことだ。
オマージュしたBGMや、原曲の作曲者・ryoさんと繋がりがありニコニコ動画という同じ背景を持つGomさんによる主題歌と、できる限りのことはしているものの、やはり原曲が流れて欲しかったのはファンの我儘だろうか。
その無念はTVシリーズで晴らされるのだが、TVシリーズはTVシリーズでOVA版の流れは組みながらも背ビレに尾ヒレがついて少しボヤケてしまった印象がある。

Gomさんの大ファンでもあった僕は主題歌「BraveHeart」には特別な思い入れがあり、「負け続ける勇気を持て」という詞の一節には幾度となく救われてきたし、カラオケ板の歌い手が(当時はまだアニメファンから白い目だったものの)アニメロサマーライブという大舞台に立ったストーリーにも勇気をもらったし、重すぎず軽すぎもしない純粋なバンドサウンドは今もリファレンスにしている筆頭音源だ。

この「BRS」は僕のコンテンツ自体へののめり込みを誘い、全く内容は異なるPSPやブラウザのゲーム版を嗜み、これは黒歴史時代とはまた違う意味で黒歴史なのだが歌ってみたを投稿したりもした。
モバゲーやGreeといったポチポチゲーが全盛期だったが、全てのハンドルネームを主人公・黒衣マトに因んだ名前にした。
生まれて始めてオタクグッズを買ったし、部屋にhukeさんの描いたBRSのポスターも貼った。
他にグッズを買ったことがあるコンテンツはAB!くらいだと記憶しているので、相当だと思う。

余談だが、主人公・黒衣マトの溌剌さと心の影に大変お熱になった僕は、劇中で一瞬だけ映る彼女の携帯の待受画面をガラケーの待受画面にしていた。
誰も「BRS」のネタと気づかないことにニヤニヤしていた当時の僕よ、今だから言うが――、良いセンスだ。

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