ブレンパワード

いのまたむつみ先生がなくなって少し経った(記事執筆時現在)。
いのまた先生と富野監督の異色のタッグで生まれた「ブレンパワード」は、やはり異色の作品だと思っている。

一応はロボットアニメの分類だが、ロボットには意思があり、それはAIだとかでもなく、「エヴァンゲリオン」のようなものでもない、生命体として存在している。
富野監督といえば誰もが真っ先にガンダムを挙げるが、こういうのも手掛けていたんだ……と初見時は驚いたものである。
尤も全裸のヒロインたちが浮遊していくオープニングはらしくないのだが。
しかし、それもいのまた先生の繊細なタッチが生み出す要素と組み合わさった結果とすると、何故か納得してしまうのだから面白い。

舞台背景は完全に富野監督のソレで、細かい流れが設定された戦争模様があり、その中で人間ドラマが描かれる。
強いて言うならば「家族」がテーマになっており、主人公の両親との確執や姉との対立、その両親と姉も決して正常な関係ではないし、ヒロインは孤児、更には敵陣営の一人であるジョナサンの有名な台詞「クリスマスプレゼントだろ!」もネタとして独り歩きしているがその背景は冷え切っていた家族関係に他ならない。
登場人物は家族ぐるみで細かく相関しており、ロボットモノの中ではより人間ドラマに重きをおいた作品であることは間違いない。
中には結構センシティブな関係性を持つ間柄もあって、なるほどそりゃ全裸のヒロインたちが飛び交うようなものがオープニングでも良いワケだ……と思う(笑)

人間ドラマであることを強調してきたが、戦闘シーンに熱がないワケでもない。
ガンダムほど主人公の別格ぶりは無いものの、やはり主人公は特別な活躍をするし、ライバル的存在もキャラクターとしてのジョナサン、関係としての姉・クインシィ、……と見せ場はしっかりと用意されている。
ヒロインのヒメも搭乗する機体と共に主人公ペアと対比が取れている。

ここまで何だか褒めているようで結構あやふやな話をしているのは、面白いは面白いが人に勧めるほど面白いとまではいかない、という割とありふれた評価が僕の評価で、熱心なファンかどうかといえばそりゃガンダムの方が面白いだろう。

音楽屋らしく音楽に触れるなら、やっぱりオープニング曲の「IN MY DREAM」は高音厨の憧れの一曲であり、甲高いフェイクやラストで更に上がるキーはこちらのテンションも空の彼方まで飛んでいく。
A〜Bメロが落ち着いてることもよりサビをしっかり勢い付けていて、サビ直前で入ってくるブラスは世界で一番緊張と高揚をくれるブラスフレーズだと今も思っている。

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